人気漫画ドラえもんに出てくる「どこでもドア」は1、2を争う人気アイテムですが、技術に長けた日本メーカーでもいまだ作ることができません。子孫はともかく、私はお目にかかれそうもないですね。それはさておき、パナソニックサイクルテックが作った新型ビビの新しい機能はかなり便利。私なら「どこでもアシスト」と言いたい機能です。
電動アシスト自転車の弱点は?
とても便利で、販売も右肩上がりの電動アシスト自転車ですが、弱点もあります。それはスイッチを入れないと、ただの重いモノになってしまうということです。
特にハンドルに買い込みすぎた食材を下げるなどすると悲惨。後輪は動かないわ、ハンドルは左右に触れるわと大変です。また、似たことは坂道でも起こり得ます。坂道の場合は、漕ぎ始めがとにかく重い。ちょっとでもアシストが始まるとスイスイなのですが、そこまで達しないこともあります。そうすると押さなければならないわけですが、座っているとはいえ、筋肉の塊、体の中で最大の力を出す足で進められないのですから、相当重い。体全身の力をかける必要があります。
そんな坂は、至る所にあります。例えば、立体交差。多くの場合、細い坂が設けられていますが、乗るには細すぎる。つまり押して行かなければなりません。荷物が多い時、病気の時などは、別ルートを通ったりしていることもあります。
では、押すときも電動にすればいいじゃないか?当然、そう思いますよね。しかし、それは法律で禁止されていたのです。理由は、歩道上の動きをどう考えるのかです。
道路交通法が改正
押し歩きにアシスト機能を使える条件は?
いまだに、歩道を自転車でぶっ飛ばす人がいますが、これは基本違反です。自転車は「軽車両」。れっきとしたクルマです。このため、「車道と歩道が分かれている時は、歩道を走るのは違反」になります。また、自転車はクルマですから「左側通行」をしなければなりません。
このため、今、多くの道に描かれた「自転車道を左側通行で走るの」が法律上正しいです。お子さんがいるなどの理由があるとは思いますが、法律は法律、守る必要があります。
また、「歩道を通行する場合は、車道寄りの部分を徐行」とあります。徐行=すぐさま止まれる速度です。また「歩行者の通行を妨げるような場合は一時停止」が必要です。ちなみに子どもは、どこでも歩道走行OKになっていますが、この「徐行ルールとヘルメット着用ルールは適用」されます。
今、歩道激走のウーバー君が槍玉にあげられていますが、交通ルール違反ですから当然ですね。法律はきちんと守ってほしいです。
一方、自転車を押して歩く時は、「歩行者」としてみなされます。これはバイクも同じ。スィッチをOFFにして押している場合は、歩行者です。ところがバイクを押すのはひどく重いのです。このためバイクを押している人は、ほとんどいません。
しかし電動自転車は、モーターがついているので、バイクと同じ扱い。要するに「アシストなしで押せ」ということです。自慢じゃありませんが、箸より重いものを持ったことがない女性には、かなり厳しい話です。
そんななか、2019年12月1日に改正道路交通法が施行され、 「原動機の駆動により押し歩きを補助する自転車についても、 歩行補助車等(電動車椅子など)」となり、 歩行者としてみなされることとなりました。これだけだと、めでたしめでたしなのですが、その後に、3つの条件が提示されています。(1)押し歩き時の駆動速度が6km/h以下であること、(2)乗車装置(サドル)が使えず乗れないこと、(3)自転車から離れると駆動が止まること、です。
あくまでも例外的な場合を除き、自転車は車道という意志が見て取れます。
3つの条件を初めてクリアした電動自転車
パナソニック サイクルテック
「ビビ・L・押し歩き」
この面倒な条件を初めてクリアして出されたのが、パナソニック サイクルテックの「ビビ・L・押し歩き」。
電動自転車は、「パナソニック」「ブリジストン」「ヤマハ」が御三家。家電のパナソニックが自転車事業を手掛けているのは、創業者の松下幸之助が丁稚奉公している時、相棒ととも言える存在で、思い入れがあったから。「ビビ」はママチャリ型の主力ラインナップです。
まず、「押し歩き」のスイッチはアシストとは別に設けられています。ボタンも大きいので押し間違えはないと思います。そしてMAX 6km/hr ということですが、「モーター内蔵センサー」が感知する負荷と押して歩く速度を感知する「スピードセンサー」で、どの位のアシストをかけ続ければ良いかを決めます。
次に、サドルが使えないようにとのことですが、これは、前に倒すことで対応しました。そしてサドルの位置は、「サドル傾斜センサー」で感知され、押すときのアシストをかけて良いかどうかを判断します。
ちょっと前よりに傾いているだけじゃないかと思われる人もいるかもしれませんが、自転車は数ミリ位置を変えると全く別の乗り物になってしまうことがあります。これだけ傾けると、お尻をサドルに乗せても滑り落ちます。サドルは位置はサドル下の黒色のレバーを引き上げます。力はほとんど入りません。なかなかよく考えられています。
最後の「離れたら止まる」は大丈夫ですね。電動自転車のアシストモーターは勝手には動きませんから。
まとめ
これを皮切りに、各社いろいろなモデルを出してくることと思います。真の意味での電動自転車になりました。しかし、忘れないで欲しいのは、法律があれこれ変わっているせいでもあるのですが、今の自転車のマナーは決して褒められたものではありません。
特に、車道の右側を走る、クルマで言うと逆走を平気でしている人を見るとゾッとします。素晴らしい電動自転車にふさわしい乗り手になるよう心がけてくださいね。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。