「バックライン」とは、体の後ろ側にあって、背後から姿勢を支える役割を果たしています。バックラインのファシアのライン伸ばしを行い、緊張を解くことで、腰痛、首こり、肩こりなどによい影響を及ぼすことができます。【解説】高平尚伸(北里大学医療衛生学部教授)
著者のプロフィール
高平尚伸(たかひら・なおのぶ)
北里大学医療衛生学部教授。専門は股関節外科、最小侵襲手術(MIS)、スポーツ医学、運動器リハビリテーションなど。医学博士、日本整形外科学会専門医。
整形外科の領域では、はっきりした治療法が見いだせない不調に対して、早くからセルフケアの重要性に着目。誰でも簡単にできるスクワット等を治療に取り入れ、テレビ番組でも紹介している。「ファシア」を意識したストレッチと筋トレを提唱する本書は、これまで著者が得てきたセルフケアに関する知見の集大成。
▼北里大学医学部整形外科学(公式サイト)
本稿は『つらい痛みや不調が消える 家でできる 超快適ストレッチ』(KADOKAWA)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
イラスト/赤池佳江子、トレース/中央制作社
バックラインストレッチ(1)全身のバックラインストレッチ
ストレッチを行っている20秒間は、ゆっくりとした静かで自然な呼吸をする。ほかのストレッチを行う場合も同様に。
やり方
(1)イスを用意し、両手を伸ばして、イスの背に両手をかける。
(2)両手をかけたまま、体を前屈させていく。
(3)両腕よりも下に頭をもっていくつもりで前屈させる。
(4)できるところまで頭を下げたら、そこで20秒キープ。
(5)(1)〜(4)を3回くりかえす。これで、1セットとする。
20秒×3回 1日3セット
POINT
▼前屈の間ずっと、ひざ裏を伸ばしておくことを必ず心がける。
▼キープ中に、体を左右にゆらすと、肩甲骨周りの筋肉の緊張を解くのに役立つ。
このストレッチのねらい
ひざ裏を伸ばすことで、バックライン全体を使ったストレッチになります。
ひざ裏のかたまったファシア伸ばしを行い、バックラインの余分な緊張を取り、ファシアの状態を整えます。
心身をリラックスさせる効果も期待できます。全身の血行改善作用もあり。
続けることで、姿勢や柔軟性の改善や、腰の重だるさなどの解消にも役立つでしょう。
肩甲骨周りの筋肉(前鋸筋・菱形筋など)のファシアのこわばりをゆるめ、肩こりを軽減する効果があります。
バックラインストレッチ(2)上半身のバックラインストレッチ
やり方
(1)イスに座って、あごを引いたら、両の手のひらを合わせた状態で前方に突き出し、上半身を倒していく。
(2)腕の間に頭が入るあたりまで倒したら、静止。20秒キープ。
(3)いったん(2)の状態を解除。今度は両の手の指を組んで、(2)と同様に、上半身を倒していく。
(4)腕の間に頭が入るあたりまで倒したら、静止。20秒キープ。
(5)(1)〜(4)を1セットとする。
各20秒×3回 1日3セット
POINT
▼手のひらを合わせたときと指を組んだときで、効く筋肉が違ってくる。伸びる部分の違いを感じながら行うとよい。
▼慣れてきたら対になっているフロントライン(上半身の前面)に力を入れる。
このストレッチのねらい
バックラインストレッチ(1)は、バックライン全体によく効きますが、こちらは、首から背中上部のストレッチになります。首こり、肩こり、猫背の改善効果が期待できます。
手のひらを合わせたときは、腕がよく伸びます(アームラインのストレッチも兼ねる)。一方、指を組んで突き出すと、さらに背中のストレッチにもなります。
バックラインストレッチ(3)下半身のバックラインストレッチ
やり方
(1)床に足を伸ばして座る。
(2)手をつま先につくように上半身を倒し、手でつま先をつかんだら(つかめない人はできるだけ前屈したら)、静止、20秒キープ。
(3)(1)〜(2)を3回くりかえし、1セットとする。
20秒×3回 1日3セット
POINT
▼上半身を倒すとき、腰を曲げないようにして、股関節から曲げる。
▼ひざ裏をよく伸ばすことを心がける。
▼慣れてきたら対になっているフロントライン(全身の前面)に力を入れる。
このストレッチのねらい
バックラインのうち、とくに太もも裏のハムストリングスのストレッチになります。
血行改善、腰痛予防に効果があります。
なお、本稿は『つらい痛みや不調が消える 家でできる 超快適ストレッチ』(KADOKAWA)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。詳しくは下記のリンクからご覧ください。
※(1)「ファシアとは何か」の記事もご覧ください。