夏は野菜不足に注意
夏バテは、「だるい」「疲れやすい」「食欲がない」といった夏の暑さによる、さまざまな体調不良の総称です。その原因として、次のようなことが考えられます。
偏った食事による栄養不足と消化機能の低下
暑くなると、のどごしのよい冷たい麺類などに食事が偏りがちです。そうすると、体調を整えるビタミン類や、体を作る構成要素であるたんぱく質が不足気味になります。冷たい飲み物やアイスの摂りすぎも、胃腸の働きを弱め、夏バテが進む要因になります。
体内の水分やミネラルの不足
たくさんの汗をかくと、体内の水分とミネラル(ナトリウム、カリウムなど)が失われ、脱水を起こしやくなります。特に高齢になると、筋肉量が減って体内に水分を蓄えにくく、喉の渇きを自覚しにくいため、気づかないうちに脱水状態が悪化しやすいと考えられています。
室内と屋外の温度差による自律神経の乱れ
エアコンの効いた部屋と外気温の差が激しいと、体温調整がうまく働かず、自律神経が乱れやすくなります。自律神経が乱れると胃腸の働きが低下し、食欲不振や体調不良を招きやすくなります。
ビールや清涼飲料水の飲み過ぎは疲労感を招く
ビールや甘い清涼飲料水の飲み過ぎは、糖質の分解にビタミンB1を大量に消費するため、疲労感を招きやすくなります。ほどほどを心がけてくださいね。
1日350g以上の野菜摂取を目標に
夏バテ対策のためには、ビタミンやミネラルを豊富に含む野菜を、しっかり摂りたいもの。また、香辛料や香味野菜を利用するのもおすすめです。
では、具体的に野菜をどれくらい食べれば良いのでしょう。健康維持のためには、「1日350g以上の野菜」を食べることが推奨されています。この数字は、厚生労働省が提唱する健康づくりの指標『健康日本21』による、成人1日あたりの野菜摂取の目標量です(*1)。夏に限った目標値ではありませんが、食事が偏りやすい夏には、特に意識してもらえたら嬉しいです。
*1)健康日本21目標値一覧より
とはいえ、「1日350g以上の野菜」といわれてもピンときませんよね。主な野菜と重さの目安は次の通りです。野菜の大きさや水分量が季節で異なるため、参考程度にしてください。
主な野菜の目安重量
・にんじん1本=150g
・玉ねぎ1個=200g
・ピーマン(緑)1個=30g
・パプリカ(赤・黄)1個=150g
・きゅうり1本=100g
・トマト1個=200g
・なす1本=80g
・ほうれん草1株=20g
・キャベツ1枚=95g
・白菜1枚(外葉)=150g
・かぼちゃ1/4個=300g
※出典:香川明夫監修『八訂 食品成分表2021 本表編』女子栄養大学出版部,2021年 記載データより(ヘタや皮など廃棄部分を含む重量の目安)
上記の野菜のうち、にんじん、ピーマン(緑)、パプリカ(赤)、トマト、ほうれん草、かぼちゃは「緑黄色野菜」です。緑黄色野菜とは原則的に「100gあたりβ-カロテン600μg(マイクログラム)以上含む野菜」のこと(*2)。緑黄色野菜は、β-カロテンのほかにも、α-カロテン、リコペン、ルテイン、カプサンチンなど抗酸化力が強い成分(フィトケミカル)を多く含み、免疫を高める働きがあります。1日350gの野菜のうち、1/3(約120g)は緑黄色野菜を食べることが理想的とされています(*1)。
*2)トマトやピーマンなど一部の野菜は、β-カロテン量は規定量に届かないが、食べる頻度が高いことから緑黄色野菜に分類されている。

緑黄色野菜の代表格、にんじん。
緑黄色野菜にはあてはまらない野菜は、「淡色野菜」「その他の野菜」と呼ばれます。切ったときに中が白っぽいものが多く、キャベツ、玉ねぎ、キュウリ、なす、ごぼう、レンコン、大根などがあてはまります。ビタミンCや食物繊維を豊富に含んでいるものが多いのが特徴です。1日350gの野菜のうち、緑黄色野菜分を除いた残りの2/3(約240g)は、淡色野菜やきのこ類などで補うようにしましょう。

夏に出番の多いなすは、淡色野菜です。
ドライカレーは効率的に野菜を摂れる
野菜をたくさん食べたいけれど、こまごまと料理を作るのは面倒。できるだけ多くの種類の野菜を、1食にぎゅっと詰め込んで、手っ取り早く食べられたら……。
そんなズボラな私がよく作る、ドライカレーのレシピをご紹介します。わが家の夏の定番メニューで母直伝のレシピを、栄養士である私が、より多くの種類の野菜をバランスよく摂れるよう改良しました。1食で1日必要量の半分以上の野菜を摂れること、野菜の1/3は緑黄色野菜を使用していることがポイントです。
また、疲労回復の働きがあるビタミンB1が豊富な豚のひき肉を使い、ビタミンB1の体内への吸収を高める硫化アリルを含む玉ねぎ、弱った胃を優しくサポートするビタミンU(キャベジン)が豊富なキャベツも多めに使います。さらに、カレーに入る香辛料や香味野菜は体を内側から温め、食欲増進にもつながります。
カレードリアや焼きそばなどへのアレンジ例も、後ほどお伝えしますので、ご活用ください。

これだけの種類の野菜を食べられます!緑黄色野菜は、にんじん、トマト、赤パプリカ、緑ピーマンです。
なお、本レシピでは、冷凍保存して活用する前提で、野菜をキリよく使いやすい6食分のレシピをお伝えします。材料のうち▲印をつけた野菜は、冷蔵庫に常備がなければナシでも美味しく作れます(ナシの場合も1日必要量1/3以上の野菜が食べられます)。
【ドライカレーの材料】(6食分)
・玉ねぎ…大1個(300g)
・キャベツ…1/4個(180g)
・にんじん…小1本(90g)
・ピーマン(緑)…小3〜4個(90g)
・赤パプリカ…1/3個(90g)
・黄パプリカ…1/3個(90g)
▲なす…1本(90g)
▲トマト…1個(180g)
▲しめじ…1パック(90g)
▲枝豆(ゆでた豆のみ)…1/2袋分(60g)
・にんにく…1かけ(6g)
・しょうが…1/3かけ(6g)
・豚ひき肉…300g
・オリーブ油…12g(大さじ1)
《調味料》
・赤ワイン…18g(大さじ1強)
・ウスターソース…18g(大さじ1)
・濃口しょうゆ…12g(小さじ2)
・こしょう…1g(小さじ1/2)
・カレールウ…3片(60g)
※カレールウの量は好みで加減を(本レシピは塩分と脂質を抑えるため控えめに使用しています)。

ドライカレー6食分で使う野菜の目安です。1人1食あたり約200gの野菜が食べられます。

調味料も手に入りやすいものばかり(写真左上から時計回り:ルウ、こしょう、濃口しょうゆ、赤ワイン、ウスターソース)
【ドライカレーの作り方】(調理時間:20分)
①玉ねぎ、キャベツ、にんじん、しめじ、にんにく、しょうがはみじん切りにする。ピーマン、赤・黄パプリカ、トマト、なすは8mm〜1cm角程度に切る。枝豆は塩少々でゆで、さやから豆を取り出す(薄皮が口に残るのが嫌な場合はむいておく)。
特に、玉ねぎとニンニクは細かく刻んで調理すると辛味成分(硫化アリルの一種アリイン)がアリシンに変化し、豚肉などに含まれるビタミンB1と結びつき、疲労回復を助けます。

野菜さえ切ってしまえば、あとは簡単!
②深さのある鍋またはフライパンにオリーブ油を入れ、しょうが、にんにくを加えて弱火で熱し、香りが立ったら玉ねぎを加えてじっくりと炒め、甘みを引き出す。玉ねぎが透けてきたら豚ひき肉を加え、肉の色が変わるまで炒める。
③にんじん、キャベツ、なす、トマト、しめじを加え、さっと炒めたらフタをして、中火で5分程度煮込む。水を加えなくても野菜から水分が出てくるので大丈夫!
④野菜全体がしんなりしたら、赤・黄パプリカ、ピーマンを加えて、ルウ以外の調味料(赤ワイン、ウスターソース、濃口しょうゆ、こしょう)を加え、さらに中火で5分程度、今度はフタをせずに水分を飛ばすように煮込む。

ピーマンとパプリカは後で加えると彩りが美しく仕上がる。
⑤いったん火を止め、カレールウを割り入れて溶かし、再び弱火で、もう5分程度煮込めばできあがり!(ゆでた枝豆は、ごはんに混ぜたり、カレーのトッピングに使ったりする)

半端もののルウを1片ずつ冷凍しておき、包丁で切って加えると溶けやすい。
完成です!たっぷり使った野菜の甘みで、マイルドな辛さのドライカレーに仕上がります。さらに、ゆで卵のスライスや温泉卵を添えると、「たんぱく質強化ドライカレー」になります。

野菜たっぷりで食べ応えあり。付け合わせに自家製ピクルスを添えました(作り方は関連記事をご参考あれ)。