スティック型掃除機すらコードレス化された今ですが、実用化が遅れているのがコードレスドライヤー。毎日使う家電なのですが、なぜこれまで商品化されていなかったのでしょうか。今回はコードレス化を実現した「Zuvi Halo」をレポートします。
ドライヤーに「コードレス」がなかった理由
ドライヤーは熱と風を使って髪を乾かす家電です。
女性の必需家電でもあり、よほどのことがない限り、お泊まり、お風呂を使う可能性があるときは持ち歩きます。このため、小型化、コンパクトに折り畳める、など色々な工夫がなされてきました。しかしながら、まだ見かけないのがコードレスドライヤーです。
あの爆音をあげるスティック型掃除機すらコードレス化された今ですが、ちょっと訳が違います。まず、女性の細腕でも自在に扱えるほど、軽くなければ使えません。1kgを越す掃除機とは違います。その上、掃除機はモーターだけですが、こちらは、モーター(風)+ヒーター(熱)。ヒーターが異常なほど、電力を消費するのは、すでに皆さんお分かりだと思います。
ところが、今回、コードレスドライヤーが実用化されました。「Zuvi Halo」です。これはそのファーストインプレッションレポートです。
Zuvi Haloがコードレス化できた理由
今ドキのドライヤーは「風」メイン
ちょっと古い話から。小学校の時、我が家はN社のドライヤーを買いました。まだ、ドライヤーがあることが一般的でない時代です。個装箱から出しては使っていました。妹の髪を乾かしてやって仕舞おうとした時です。なんとなく個装箱の緩衝材である発泡スチロールに風を当てるとモノの見事に溶けてしまいました。両親に大目玉を喰らいました。
今考えると、発泡スチロールは90℃で溶解します。それ以上の温度の熱風で乾かしていたわけです。当時は、「熱」重視だったわけです。
その後、考えが変わります。高温は髪を傷めるという考えです。まぁ人は自然の中で生活していますしこんな熱風はないですからね。当たり前と言えば、当たり前。それを経て、今ドキのドライヤーのメインは「風」です。
コードレス化するために「光」を採用
しかし、そうは言っても「熱」がないドライヤーはあり得ません。従の要素であっても「熱」は必要です。
ちなみにドライヤーの消費電力は、モデルによっても異なりますが、1200Wレベルのモノが多いです。ちなみに、あるメーカーの例ですが、スティック型掃除機は、約800W(吸引中)、250℃まで温度をあげることができるホットプレートは1350W。これをどうにかしなければなりません。
まず考えるべきは、どうやって熱を効率よく伝えるかです。
熱は分子振動です。振動エネルギーが熱エネルギーなわけです。例えば、ドライヤーの場合は、熱風、空気の中の窒素分子、酸素分子を振動させ、それを対象物(髪の毛)に当て流ことにより、熱エネルギーを使用します。ホットプレートなどの場合は、プレートの金属原子が振動、その振動(熱エネルギー)が食材に伝わり調理されるわけです。
Zuviが考えたのは、分子で伝えるのではなく、光で伝えるのはどうかということです。光はエネルギーの一形態ですから、熱エネルギー→分子振動→分子移動→熱エネルギーではなく、熱エネルギー=光エネルギー→照射→熱エネルギーというわけです。
ちょっと難しくなりましたが、単純にいうと「赤外線で熱を伝えよう」ということです。光自体がエネルギーなので、効率はメチャメチャいいです。
この結果、得られたのが、Zuvi Haloの290Wという最大定格電力です。モーターをぶん回す電力も入れてです。現在のコードありが1200Wですから、1/4のエネルギーです。
これでコードレス化が可能になったのです。
実際使ってみると
形状は、ダイソンに似た形状。ノーズレスです。スイッチは1秒長押し。そして「FAST」「SOFT」「COOL」の3モード。
風は直径:8cmの吸気口から吸われ、リングの直径:3cmの噴出口から出てきます。
まず動作させて驚いたのは、リングが透ける感じになり、中で緑色の光、赤色の光が見えることです。すごく綺麗。そして熱線と強風が出てきます。まずは手のひらで確認します。FASTの場合、60cm近く離しても手のひらに、熱さを感じます。しかし面白いのは、実際に使用する場合は、10〜15cmがベストとのこと。手のひらは火傷しそうな感じなのでNG。では髪の毛はというと、結構いけます。乾かすという感じではなく、整えるという感じです。というのは、余分な熱量がないので、狙ったところが乾くという感じです。消費電力が1/4ですからね。パワーはギリギリという感じです。
しかし筆者は、男性で、秋口ですから、SOFTでもかなりのスピードで乾かせます。女性ならどうかと思ってしまいます。
ちょっと驚いたのは、あまりコードレスのメリットを感じなかったことです。Zuvi Haloの重さは、630g。これ普通のドライヤーとあまり変わりません。その上、ドライヤーは近くのコンセントにケーブルに余裕を持たせてつなぎます。このため、掃除機のようにコードレスが決定的なメリットをもたらさないようです。
かなり優れたバッテリー
コードレスのポイント、充電、使用時間にも触れておきます。
まず、充電は34 分(電池残量 0 から 90%まで 19 分で急速充電)。専用充電台で行います。なかなかにかっこいいのですが、その分スペースも取ります。
FAST モード:13 分、SOFT モード:15 分、COOL モード:27 分です。髪の毛の長さ、量にもよりますが、男性なら3回、女性なら1回分という感じで消化?
実用に足るという感じです。
まとめ
Zuvi Haloは、かなり頭のいい人が丁寧に設計、数々の最新技術が詰め込まれたモデルという感じがします。初代コードレスドライヤーとしては立派な出来、それなりの完成度だと思います。
しかしもう一度ドライヤーというものを見直した時、コードレスは決定的に違わないのではという可能性があります。また冷風の方が、髪を傷めずに済むと言いますが、それもユーザーがどこまで受け入れるのかでかなり変わってきます。美容家電でよく意見が分かれるところです。
あと、風はかなり出るのですが、それを色々な形で使うアタッチメントは同梱されていません。
最新の、すごいドライヤーであることは確かなのですが、まだ今の段階ではできた、生まれ落ちたという感じです。ここから商品を育てることが必要。熟成させることが必要。化ける可能性は十分あると思います。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。