毎年秋に発表されるグッドデザイン賞。厳正な審査を経て選ばれた「Gマーク」製品は、スタイリッシュな外見だけでなく、機能性にも優れ、どれも魅力的で優秀です。2021年のグッドデザイン賞に輝いた「キッチン用品」は、まさに「かゆいところに手か届く」工夫が満載。キッチンに立つ時間の長い人は、必見です。
「グッドデザイン賞」とは
暮らしや社会をよりよくするための活動
グッドデザイン賞は、デザインの優劣を競うものではありません。形の有る無しにかかわらず、人がなんらかの「理想や目的を果たすために築いたものごと」をデザインととらえ、その質を評価するものです。つまりグッドデザイン賞とは、デザインによって、私たちの暮らしや社会をよりよくしていくための活動といえます。1957年に創設された長い歴史を持つ賞で、日本で唯一の総合的なデザイン評価・推奨の仕組みとなっています。
グッドデザイン賞を受賞したことを示すシンボルマーク「Gマーク」は、日本国内で広く認知されています。皆さんも目にしたことがあるのではないでしょうか。
2021年は、国内外のデザイナーや建築家、専門家など、各分野の一線で活躍している88名の審査委員による厳正な一次・二次審査を経て、1,608件の「グッドデザイン賞」受賞が決定しました。その中から、注目のキッチンツールを紹介します。デザインはもちろん、快適な機能や新しい工夫、環境にも配慮した、魅力的な製品がいっぱいです。
グリル調理容器
パロマ/ラ・クックシリーズ
ラ・クックは、魚焼きグリルが有効活用できるグリルパン。魚焼きグリルで魚を焼くと、「油跳ねやニオイがついて掃除が面倒」ということで、敬遠されがちなようです。でも、ラ・クックなら、フタ付きなので油跳ねやニオイがグリル内につきにくく、使用後のお手入れの手間が大幅に軽減。容器の内側は遠赤効果のあるセラミック塗装が施されているので、蓋をしていても焼き目がついて、炭火焼きのようにジューシーに仕上がります。焼き魚のほか、ローストチキンやギョウザ、ケーキ、ノンフライ調理と、多彩な料理が作れるのも特徴です。
深皿仕様のラ・クックグランポットは、煮る、蒸す、パン作りなどに対応します(焼き料理は不可)。魚焼きグリルのほかにコンロでも使えて、ごはんを炊いたり、燻製が作れたりと大活躍。審査では「料理を楽しむ道具として、ガス調理器のメーカー自身がグリル調理容器をデザインしている」と評価が集まりました。
外側は食卓に馴染むおしゃれなカラーリングで、そのまま食器として使用が可能。余分なお皿を使わないので洗い物が減らせるなど、いいことづくめです。
ピーラー
スズキ/ベジタブルユニークピーラー
スイスの工業デザイナーが、デザインと機能性を追求して作ったベジタブルユニークピーラー。ハンドル部分のない斬新なデザインで、自在な皮むきができるのが特徴です。
ブレードは緩やかなカーブを描いており、食材との抵抗が小さくて皮剥きがスムーズ。軽く当てるだけでしっかり皮を捉え、スーッときれいに剥くことができます。「使う人を『おっ!』と言わせてしまうような、驚くほどの滑らかな切れ味。そっと刃をあてて滑らせることで、スルスルときれいに皮が剥けるのはとても気持ちがいい」とは、審査員のコメント。
刃は180度に弧を描く回り込み構造で、剥いた後の皮が手元に集まる設計になっています。同じ場所にまとまって落ちるため、皮が散らばらず後片付けもラク。これはすごく助かります。使用中と使用後両方のストレスを軽減する、下ごしらえの強い味方です。
おろし金
紀州新家/究極のおろし金シリーズ
ピカピカとした鏡面仕上げが美しい「究極のおろし金」は、設計や改良をくりかえし、細部まで追求したこだわりの逸品です。2018年にも前モデルが受賞していますが、新製品はさらにブラッシュアップ。以前採用していた持ち手部分の木材を省き、1枚の銅板で完結することで、より軽量になりデザインとしても研ぎ澄まされた印象に。「過去や現状に甘んじず、製品の見直しを怠らず、改善を続ける。そんな職人としての、ものづくりに向き合う姿勢を高く評価したい」と、そのストイックさが審査員の心をつかみました。
職人の手作業で打ち込まれた目立て(擦り下ろし面のトゲ)は、大きさや角度など計算され尽くしたもの。切れ味が抜群で、食材の細胞を破壊することなく、大根おろしなどもフワッとみずみずしい食感に仕上げます。さらに、軽い力で下ろせて簡単に洗えるなど、使い勝手も優秀。道具としての完成度が高く、一般家庭からミシュラン獲得店まで、幅広く愛用されています。
子供用食器
フィセル/mamamanma(マママンマ) &go おさかなプレート
プレートの内側にカーブや凹凸を付けることで、大人が赤ちゃんに対面から食べさせやすいほか、子供が一人で食べられるようになったときも、ごはんを集めてすくいやすい構造になっています。
製品は1枚皿と仕切り皿の2枚セット。蓋にはスプーンとフォークが取り付けられ、一緒に収納できます。また、カラビナを取り付ければ持ち運びもOK。「食べきれる量だけ持っていく」「食べきれなかった料理を持ち帰る」などの行動が自然にできて、フードロス対策にも役立ちます。付属のカラビナが、プレートとお揃いのおさかな型なのもキュートですね。
本体のバイオマスプラスチックは、原料の約52%が竹でできたエコロジー素材になっています。落ち着いた暖色のカラーリングは、「食べ物だけでなくファッションにも合わせやすい」と審査でも話題に。かわいらしくなりすぎず、大人も抵抗なく持てるのがGOODです。
南部鉄器
及富/スワローポット
「シャープすぎない可愛らしいモダンさ」「どこか懐かしさも感じるデザインが使う人の心をゆるやかにする」と、その佇まいが審査員に賞賛された小型南部鉄器「スワローポット」。直径25cm、重量1.3kgと、習慣的に使いやすいサイズと重さを実現。一体となった取っ手も持ちやすく、「注いだ時の水のキレも良く、注ぎ口の作りもしっかりしていおり、道具としての機能も好印象」と、実用性も高く評価されました。
鉄瓶で沸かしたお湯は鉄分を多く含み、貧血対策として注目されています。和洋を問わないシンプルなデザインのスワローポットは、どんなインテリアにもすんなりマッチするほか、茶こしが付属するので、急須としても使用が可能。日常使いしやすい点が、大きな魅力になっています。
ちなみにこの製品、1980年代に製造されたものをSNSで紹介したところ大反響を呼び、復刻に至ったのだとか。その経緯も「伝統工芸の新たな姿のように感じられた」と評され、審査ポイントになりました。
卓上ピッチャー
スノーピーク/サーモピッチャー1900
サーモピッチャー1900は、炭酸飲料を入れられる真空断熱ピッチャー。炭酸ガスに耐える気密性とワンタッチ開栓を両立させた特殊フタの採用で、炭酸飲料を泡立てずスムーズに注ぐことができます。容量は1900mlとたっぷり入り、ビールや炭酸ジュースなどを冷たいままキープ。テーブルに出しっぱなしにできるので重宝です。
口の直径が約100mmと大きいため、内側が洗いやすいほか、氷だけ入れてアイスペールとして使えるのも便利。折畳み式のハンドルや誤開栓防止ガード、過剰圧を逃がす減圧弁などがついているので、安全に炭酸飲料を持ち運べて、アウトドアにも便利です。「機能的でありながらも凛とした佇まいが美しい。様々な側面でバランスの取れた一品」。審査員のそんな評価がうなずける、機能美に満ちたアイテムです。
まとめ
キッチン回りの家事には、「小さなストレス」が付き物です。油跳ねやニオイ、野菜の皮、おろし金の刃に残った野菜くず、離乳食の食べこぼし……。一つひとつは小さくても、毎日繰り返されるとけっこうキツイ。これらが優秀な道具で解消されたら、気持ちがグンと楽になります。さらに、それが見栄えのいいアイテムだと、テンションが上がって楽しさもアップ。Gマークのキッチンツールは、心と体の健康を保つために、きっと役立ってくれるでしょう。