コロナ禍で普段着で過ごすことが多くなりました。そうすると、アイロンでなく、衣類スチーマーの方が使いやすい。そういったなか、日本メーカーは一つのカテゴリーを生み出しました。それが、小型アイロンを、衣類スチーマーとしても使えるようにした兼用タイプでした。今回は東芝の「La・Coo・S(ラクーエス) TAS-X6」をレポートします。
東芝「La・Coo-S TAS-X6」をレポート
小型アイロンと衣類スチーマー、両方使える家電
家電の歴史を紐解くと、アイロンはかなり早い時期に出てきます。人の営みに欠かせない、「衣」「食」「住」のうち、衣類ケアにかかすことはできませんからね。
しかし、衣類スチーマーが出てきて以降、ちょっとしたことで重いアイロンをわざわざ引っ張り出すことには少なくなったのではないでしょうか? 乗り物に例えるならアイロンは戦車。衣類スチーマーはジープ。同じ悪路突破能力を持ちながら、そのくらいの差があります。特に、今の日本の住環境は、昔ほど衣類に優しくありません。まぁ、ユニクロなどが、普段着の価格を徹底して下げてしまいましたからね。衣類ケアが必要なモノはクリーニング頼み。そうでないものは、ある程度傷みが来たらポイという感じの人も多いと思います。
またコロナ禍でどんどん普段着が活躍の場を拡げています。そうすると、アイロンでなく、衣類スチーマーの方が使いやすいのも事実。若い男性は、よほど洋服に思い入れがないと、アイロンは持ちませんね。
そういった中、日本メーカーは、一つのカテゴリーを生み出しました。それが、小型アイロンを、衣類スチーマーとしても使えるようにした兼用タイプでした。
今回は、その最新モデル 東芝「La・Coo-S(ラクーエス) TAS-X6」をレポートします。
正直、出来がよくなかった初代機
東芝は、このシリーズ を2018年から展開しており、今回の「La・Coo・S TAS-X6」は3代目です。
2018年に発売された初代機は、正直申し上げて、不出来でした。アイロンとしては、申し分ないのですが、衣類スチーマーとしては、ダメでした。
アイロンをスチーマーとして使う場合、最も違うのは方向です。水は重力に従い下へ下へ移動します。だからアイロンが一番下の「かけ面」からスチームを出すのは理にかなっているのです。水は制御しなくても、重力に引かれどんどん流れてくるわけですから、水が通る管をかけ面が熱し、スチームにしてやればいいのです。あまり複雑なメカニズムは必要としません。
ところがこのアイロンをスチーマーとして使う場合には、立てて使います。アイロンが90℃縦になるわけです。しかも飛行機やクルマのようにシートベルトは使えません。人の代わりに水を入れたら、どんなイメージか想像できると思います。
そして、スチーマーにはアイロンと違うポイントがあります。それは、「スチームは途切れてはダメ」ということです。例えば、上から下へ、シワを伸ばしている時に、スチームが切れたらどうでしょうか? アイロンならプレス技でシワのばし、場合によっては霧吹きにご登場願い、タッグで対応することも可能ですが、衣類スチーマーは、ダメですね。このため、常に一定量の水をスチームにし続けることが必要です。
初代は、まだバッテリー容量が不十分だったのでしょうか。(当時、このタイプでは唯一のコードレスでした。)東芝は水の供給を手の動きで行うように設計したのです。私もテストしてみたが、悪くはありませんが、他メーカーのようにしっくりこない。また取説には、室温が10℃になると湯滴が出るかもしれないとあり、ちょっと唸った覚えがありません。
コンセプトは良かったのですが、それを実現する技術が未成熟だったと言えます。コードレスという魅力に溺れたとも言えます。
コードありですが、パナソニック他の日本メーカーは、それをしっかりモーターでケアしていました。当時、世界的な衣類スチーマームーブを作ったティファールが、ガンガンスチーム量を上げていた時です。差をつけられないためには、必要だったのかもしれませんね。
こだわりを捨てた三代目 TAS-X6
コロナ禍により、本当に外出着を着る機会は少なくなりました。こうなるとアイロンはますます出番がなくなります。
要するに、衣類スチーマーの出来が、商品力を左右する時代ともいえます。そうなると、手動だからという言い訳は、全く通用しません。とにかく衣類スチーマーとして、きちんと使えると言うことが最低条件なのです。
今回東芝は、手動ではなく、電動モーターを用いて水を供給しています。かなり葛藤があったことだと思いますが、バッテリー自体が急速な進歩を遂げているので、手動にわざわざこだわらなくても、電動できちんとした対応ができるわけです。
3種類の温度がセレクトできる本格アイロン
使ってみると、極端な特徴は無いものの、いろいろな布地に対応できるなど、いい塩梅に設計されています。
アイロンは、3種類の温度をセレクトできる本格仕様。これがあると生地に合った温度がセレクトできます。しかし、本モデルは重量型ではないので、やや押し気味にかける必要がでていきます。力を入れると方向がぶれやすいものですが、楽がけラインが羅針盤のように方向を示すので、ぶれない。ちょっとした工夫ですが、使い勝手が格段に上がります。
スチームに「ショット」は無し
スチームは、ハンドル人差し指でコントロール。ただし「ショット」(一瞬蒸気をかけること)はできす、ずっと噴出し続けます。
スチーム量が多くなる「シャワー」モードについて思ったのですが、この「シャワー」は、「スチーム強」でよくないですか? シャワーって何?という感じでちょっとわかりにくいと思ったのは私だけでしょうか。
コードレス化の仕組み
電源ケーブルの巨大なコネクト部をアイロンにさしてロックすると有線アイロンとして、このコネクト部をスタンドに付けるとコードレスアイロンとして使えます。
スタンドに付ける場合はひっかける感じで、ロック機構はありません。(カチッという音はします)しかし、これで上手く行くのだからなかなかよくできていると思います。
まとめ
衣類スチーマーとしては並だが総合的に高評価
小型ではありますが、コロナ禍でスーツも含めフォーマルウェアが少なくなった今、小型のアイロンスチーマーで十分という人も多いでしょう。
衣類スチーマーとして評価すると、途切れることなくスチームが出るので使いやすい。また、コードレスなので、動かし易い。このモデル最大の長所といえます。
ちょっと気になるのは、高温スチームをセレクトすると使えるまでに、1分10秒。長すぎませんか? 衣類スチーマーは、出掛けに「気付きがけ」する時が多いので、一分一秒を争う朝の支度時間を考慮すると、もう少し短い方がベター。
しかし全体的に使い勝手の良いアイロン兼スチーマーとしてよくできている商品です。
なお、今回は「グレー」(歌舞伎のように、「実はブラック」と付け加えたい)でテストしました。このどことなくプロっぽい色が、使っていると家事の腕が上がった気分になります。