空調機器は、なぜこんなにも数が多いのでしょうか。エアコン、扇風機、空気清浄機、加湿器などなど。真面目に空気質を追いかけると、部屋は空調家電で埋まってしまうかと思えるほどです。パナソニックが業務用向けに「天井埋込型ジアイーノ」を発表しました。これが、空調業界に新たなカテゴリを生みそうな予感がするのです。
ビルトイン型ジアイーノが登場
パナソニックのジアイーノは「空間洗浄機」と位置付けられています。つまりジアイーノは空気清浄機ではありません。
空気清浄機は、フィルターで空気中の浮遊物を濾しとります。しかし、浮遊物が小さいとその目をすり抜けます。また、臭気などの化学物質は分子ですから、こちらも濾しとることはできません。最近は、電気で浮遊物を引き寄せトラップしたり、臭いには活性炭フィルターで対応と、手を尽くしていますが、最近お騒がせな「ウイルス」レベルサイズになると、確実にとは行きません。
ならば、ウイルスサイズの活性物質で、ウイルスを変異させ、不活化しよう!と考えられたのが、活性イオン。典型例はシャープのプラズマクラスターイオンに、パナソニックのナノイー。これらは空気中の水分などから作られたイオンです。そしてこれらに、業務用で除菌に使われているオゾンや次亜塩素酸がそれに加わります。
そして、先日パナソニックからビルトイン型のジアイーノが発表されましたのでレポートします。
空調機器が多すぎ問題
アニメのなかで主人公(学生)の部屋では、家電として、照明、ノートPC、エアコン、オーディオシステムなどが描写されます。しかし、本当はどうかというと、これに扇風機、空気清浄機、加湿器などが加わります。全部空調家電。真面目に空気質を追いかけると、部屋は空調家電で埋まってしまうかと思えるほどです。
ある意味、地球をダメにした人類へのツケとも言えますが、実生活でそれを言っても始まりません。なんとかしなければなりません。
幸い人間の居住空間には必ずデッドスペースが生まれます。天井裏、壁中、床下など。これらを上手く使うのです。そして人間と接点のある部分、オーブンで言うと「コントロール部分」と「料理の出し入れ部分」に室内からアクセスできるようにします。いわゆるビルトインモデルと言われる家電です。
それにしても空調機器は、こんなにも数が多いのでしょうか? それは地球と水と植物がおこなっていることを、人間が家電化できる部分から家電化したからです。
また、大陸と島国、沿岸国と内陸国で、空気の問題は全く異なります。ラスベガスに行った時ですが、あそこは砂漠ですから湿度10〜30%しかありません。フロントで、日本人?と確認され、日本人ならジャグジーにお湯を切らさないようにと言われました。一杯にして、8時間して戻ると、見事に半分蒸発。しかしアメリカ人はこんなことをしなくても平然としています。このように空調のニーズはエリア、住む人により全然違うのです。
あと、ちょっと余談になりますが、加湿機能付き空気清浄機。これも日本特有のモデルです。双方とも置くスペースがないので、合体させたのが由来です。海外は、そこまで加湿にこだわりません。
技術で対応できることがバラバラ、ニーズもバラバラ。空調家電の種類が多いわけです。
ビルトインモデルの考え方
ビルトインモデルの考え方は、出しっぱなしだと、人のいることができなくなる家電をうまくしまい込むです。電子レンジより大きなモノはビルトイン化される可能性があります。
ですが、日本の場合、定年するまで引っ越すのが当たり前という風潮もあり、大きな家電はそれぞれの指定位置を決めて、その大きさを感じさせないようにしてきました。テレビは部屋のコーナーに、エアコンは壁に、冷蔵庫と洗濯機は、置く場所が決まっています。
今は借家なので、ビルトインを取り付けることはできませんが、私は、空調はビルトインの方がいいと思っています。
部屋が広く使えるのも魅力の一つですが、ビルトインはシステムとして設計しやすいからです。サイズ制限が少ないので、いろいろな要素を持ち込み易いのです。
魅力はまだあります。それはメンテナンスする頻度が少なくて済むという事です。取り付ける場所が、日常空間ではありませんので、超音波型の加湿器のように使うたび毎回掃除なんて条件は出されません。
天井埋込型ジアイーノのメリット
体積比にすると床置き型の2倍位の大きさの天井型ジアイーノですが、どんなことができるのでしょうか?
次亜塩素酸で「除菌」「脱臭」。これはジアイーノの本質です。
そして「加湿」も可能になっています。コロナ、インフルエンザというウイルス感染症は、40%以下の低湿度環境下では感染率が高くなることが知られています。ジアイーノに「加湿」機能があるのは実に理にかなっているのです。
またHEPAフィルターも搭載しています。花粉、PM2.5などを物理的にトラップ、空気清浄機機能「集塵除去」することができます。
さらに念が入ったことにCO2センサーも搭載。必要に応じダクト隅にある換気扇に「換気」を促します。窓を開ける必要もありませんし、キレイな状態の空気として室内導入できます。
これで、日常メンテナンスは不要なのですから、良いことづくめ。これにエアコンがあれば、「温度」「除湿」「送風」もできますので、パーフェクト、発表会での説明を聞いているうちに、自分の家に欲しくなりました。
IQA検証センター立ち上げに見られるパナソニックの本気度
IQAというのは、Internal Quality Audit。内部品質監査のことです。パナソニックは、14億円を投資して、今年(2022年)4月に、IQA検証センターを立ち上げます。目的は、実使用環境下での次亜塩素酸の効果を検証するためです。
検証というと、新宿駅のトイレで行われた公開実験が忘れられません。ジアイーノの脱臭力を駅のトイレで試そうというわけです。それなりにきれいな公衆トイレですが、それでもトイレ独特の臭気はします。そこにジアイーノを一台置いて確認しようというわけです。
自分でも、時々用足しに使うトイレですから、本当かと思いましたね。地下にあるためでしょうか、臭気もキツめなトイレです。行ってみると臭気が全くしない。これはすごいものだと感じ入りましたね。カタログに書かれている臭気テストを確認すると、そんなに広くない立方体中で、テストが行われる旨が書かれています。それと違い、現場ですからね。大いに感心したわけです。
この新IQA検証センターは、2つの業界初の設備が設けられます。一つはBiosafty Level 2 試験室。BSL2に属するウイルス、細菌、真菌、寄生虫を相手に実験できる施設です。ちなみにコロナウイルスは、BSL3に属します。
もう一つは実空間除菌試験室。10〜132m2の面積での実試験ができます。より効果的に、より安全に使うためのセンターです。また今後、日本メーカーは、今までよりもより、技術と品質で勝負する必要があります。必要投資と言えます。
最後に
空調業界に新たなカテゴリが生まれそう!
ビルトインというと、「関係ないもんね」という人がいます。しかし、それは全てを個々に制御しますということです。しかし、空調でのベスト解を一人で出せるような人はいませんね。このため私はIoTによる空調家電統合を望んでいるのですが、まだまだ、本格化していません。
それに対し、メーカーサイドでシステムとして組んで仕舞えば、実にスムーズに事が運びます。今後、特に空調は、家電、業務用家電の間に、もう一つカテゴリーが生まれそうです。天井埋込型ジアイーノは、業務用として紹介されましたが、近い未来、一戸建てにも進出すると思います。今後が楽しみです。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング、ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散策とラーメンの食べ歩き。