本格的な果樹栽培をはじめる前のスタートツリーや、手間をかけずに、もう1本果樹を育てたいという人にもおすすめの実のなる庭木、ジューンベリーを紹介します。ジューンベリーの育て方について、書籍『おいしい果樹の育て方』著者で、千葉大学環境健康フィールド科学センター助教の野田勝二さん(農学博士)に解説していただきました。
解説者のプロフィール
野田勝二(のだ・かつじ)
千葉大学環境健康フィールド科学センター・助教。農学博士。
専門は果樹園芸学、健康機能園芸学。柑橘類の研究のほか、園芸療法・園芸福祉に関する研究も行っている。また市民とともに、サスナティブルな街づくりの活動にも参画している
本稿は『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
イラスト/角しんさく、はやしゆうこ
ジューンベリー
バラ科ザイフリボク属 原産地/北アメリカ
ひこばえや徒長枝はまめに切る
丈夫で半日陰でも育ちますが、放任すると5m近くになります。
高くなりすぎると管理がしにくいので、適度な高さを維持するように剪定しましょう。
また、株元からひこばえがよく発生し、主枝からの細い枝の発生も多く見られます。ひこばえや不要枝を整理して、風通しと日当たりをよくしてやります。また、西日が当たり乾燥する場所では根が傷み、生育が悪くなります。
花、果実、紅葉とオールシーズン楽しむ
日本に自生するザイフリボクという落葉樹と同じザイフリボク属ですが、北アメリカの原産で、春には白色の細長い5枚の花びらの花が咲きます。
果実は初夏に熟し、生で食べられるほか、ジャムや果実酒にも利用でき、秋には美しく紅葉して四季折々に楽しめるため、シンボルツリーとしても人気があります。
実は果肉がやわらかくなったら摘みごろ。日持ちがしないので、収穫したら早めに生食するかジャムなどに加工する。冷凍しておいてもよい。
栽培カレンダー
本稿は『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
植えつけ・仕立て方
暑さにも寒さにも、半日陰にも耐えるので、比較的場所を選ばずに植えられます。
夏の乾燥と、西日が当たる場所では生育が悪くなります。
放任すると高木になるので、管理しやすい高さを保つように剪定で樹形を整えます。
1本仕立て
管理できる高さで主幹を切って成長を止める。幹の根元からでるひこばえや勢いの強い枝は切り取って間引き、風通しをよくする。
株仕立て
主枝が混み合わないように、育てる枝を数本に決めて、ほかのひこばえを取り除き、株全体に風が通り、日が当たるようにする。
実のつき方を知ろう!
前の年に伸びた枝(前年枝)の先端付近に混合花芽がつく。
翌年に混合花芽から枝が伸びて、枝の基部に花が咲き、実になる。
鳥の被害はネットで守る
花や果実は房状に集まってつき、一房の果実が順々に熟していきます。果実は鳥に食べられることがあるので、防鳥ネットなどで全体をおおって保護しておくとよいでしょう。赤紫色に色づいたら食べごろです。熟したものから収穫しましょう。
おすすめの品種
品種名 | 受粉樹の必要 | 花粉 | 特徴 |
オータム・ブリリアンス | 不要 | 花粉あり | 果実は小さめ。樹形は直立性で1本仕立てに向く。 |
スノーフレーク | 不要 | 花粉あり | 樹形はほうき状で、よくひこばえがでるので、株仕立てに向く。 |
ネルソン | 不要 | 花粉あり | 遅咲きで、果実が大きくて甘い。小型の品種であまり背が高くならないので、せまい庭に向く。 |
オベリスク | 不要 | 花粉あり | 蕾が紅色で、花は咲き進むにつれて淡いピンクから白色になる。 |
ロビンヒル | 不要 | 花粉あり | 蕾が紅色で、花は咲き進むにつれて淡いピンクから白色になる。 |
ラマルキー | 不要 | 花粉あり | 早咲きで花つきがよく、紅葉も美しいので庭木としても楽しめる。 |
ノースライン | 不要 | 花粉あり | 果実が大きく甘いのが特徴。果肉がしっかりしていて歯ごたえがある。 |
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なお、本稿は書籍『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。果樹を育てたいけれど、どんなものがいいのか…。基本的には自分の好きなもの、食べたいものを選ぶのがいちばんです。だた果樹栽培に慣れていない人は、庭の広さや環境、手間をかけられる時間などを考慮して育てやすそうなものを選ぶのも一案です。本書では、苗木の選び方、幼木から成木までのお世話のコツ、肥料や病害虫対策など、果樹栽培の基本的な知識や、収穫した果実の保存方法とレシピなど、豊富な写真とともに紹介しています。詳しくは下記のリンクからご覧ください。
※(9)「【実のなる庭木】オリーブの育て方 おすすめの品種も紹介|栽培カレンダー」の記事もご覧ください。