〈コロナで株価なぜ上がる?〉今の日本は「マーブル状」の変革時代!? |八ツ井慶子の“家計防衛”入門

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こんにちは、家計コンサルタントの八ツ井慶子です。2020年からのパンデミック以来、なんとも訳の分からない時代に突入したな、と感じている方も少なくないのではないでしょうか。今回は、そんな “訳の分からない” 状況について、みなさんと一緒に考えてみたいと思います。

いまは「マーブル色」の時代

まず、その大前提として抑えておきたいことは、パンデミックの前から「日本社会は大きな変化の潮流の中にあった」ということです。超長寿化、人口減、少子高齢化、デジタル革新、低(ないしゼロ)経済成長が「同時進行」するという未経験の時代。そこに、パンデミックが起こったわけですが、起ころうが、起こらまいが、“この潮流”は、私たちの社会を大きく変えていっています。

「いま」がどのような時期かを例えるとしたら、“マーブル状態”でしょうか。

つまり、青色と赤色の絵の具を混ぜると紫色になるわけですが、一瞬で変わるのではなく、混ぜている間は「マーブル状」になります。その後、しっかり混ざり合うと、紫色の単色に見えてきます。「いま」という時期は、パッと見何色だか分からない、どっちつかずの、でも、一定の方向(紫色)に進んでいる時代のように感じるのです。

とはいえ、「絵の具を混ぜる」というほど、時代の変化は単純ではあません。特に「いま」は、そもそも何色が、いったいいくつ、どのくらい投入されているのか、混ぜるのにどれほど時間がかかるのか、この先何色になるのか、まったく分からない、といったイメージでしょうか。

ただ、分かるのは「大きく(色が)変わること」。そして、「いつかは何らか(の色で)落ち着くこと」でしょう。そんな「いま」、私が感じる“違和感”のひとつをご紹介したいと思います。まず「株価の動き」です。

写真:Getty Images

パンデミック以降「急上昇」株価のナゾ

図(1)~(2)をご覧ください。
図(1)は、2012(平成24)年1月から、ざっくり過去10年分の日経平均株価と各種国債利回りの推移をまとめました。図(2)は、同じ時期から四半期ごとの国内総生産(GDP)の推移です。ちなみに、第二次安倍内閣が発足したのが2012年末、アベノミクスを名目に、日本銀行による異次元緩和が本格的に始動したのが2013年からです。

〈図(1)〉日経平均株価と各種国債利回りの推移

出典:investing.comから作成

今年に入って下落傾向はあるものの、株価はこの10年間(浮き沈みはありつつ)堅調に上がってきています。特にパンデミック以降の急上昇は目を見張るものがあります。株価は景気動向の「先行指数」ともいわれ、景気の動きに先んじて(期待や思惑から)動くともいわれます。が、“あの状況”下で、本当に上昇期待を持てるものでしょうか?

「景気の良しあしの結果」ともいえるGDPは、2020(令和2)年4-6月期の大幅な減少からの急回復はあるものの、右肩下がり傾向。数値としては、パンデミック以前に回復していません。補足すると、2016(平成28)年12月に、GDPの算出方法に改定が行われ、数値を押し上げる結果になっています。そう考えると、なんだか株価だけが妙に上昇しているように思えなくもありません。

〈図(2)〉GDP推移

出典:内閣府 主要統計データより作成

株価上昇が、もし、日銀による金融緩和の影響だというのなら、いますぐ日銀が紙幣を発行するのをやめて、政府が紙幣を発行し、本当に必要な人に資金を届けるべきではないでしょうか。なぜなら、株価上昇のために資金量がアップしたかのような結果だからです。

日本のGDPは、約6割を個人消費が占めるといわれます。GDPが持ち直していないのをみると、いまの金融緩和政策は、個人消費を支えるに至っていないといえるでしょう。

思えば、日銀は一民間企業です。ジャスダックに証券コード「8301」で上場されています。政府が55%出資していますが、議決権はなく(そもそも総会がない)、政府との独立性は、日本銀行法により担保されています。とはいえ、なんだかんだアベノミクスは、財政政策と金融政策とでがっつりタッグを組んで進めてきていますし、これを果たして「独立性」といえるのでしょうか。

もう一つ。株価上昇について、家計コンサルタントとして追記したいのは、最近の日本の家計の状況と照らし合わせてみても、非常に違和感があるということです。家計の状況につきましては、以前の私のコラムをあわせてお読みいただけると非常にありがたいです。

13の「なんかおかしい」

ではここからは、詳しい説明は抜きにして、いま起こっている「なんかおかしい」を列挙してみたいと思います。すでに特選街webでの私のコラムで触れてきたものもありますが、あらためて書いてみました。

(1)公的年金に国民の多くの方が不安を抱えているのに、一向に改革が行われない

(2)上記理由に、よく選挙対策が挙げられるが、それだけとはとても思えない

(3)国民医療費が人口比以上に異様に増えているにも関わらず、「予防」が医療現場になかなか取り入れられない

(4)健康には自然な食品がいいにもかかわらず、添加物や農薬の規制が進まない

(5)新聞離れが進んでいるにも関わらず、新聞代は消費税8%に据え置かれ、ライフラインともいえる水道光熱費は10%に引き上げられた

(6)マイナンバーを進めたいのであれば、その前に税金の使われ方や全議員のお金の使い道を、ブロックチェーン技術などを用いて、国民に公開してからすべきではないか(元衆議院議員の故・石井紘基さんが浮かばれない)。

(7)本当に貧困や格差を解消させたいのであれば、経営者層と従業員層の賃金格差の倍率に上限を定める法律を作ればかなり進むと思うが、それはしない。

(8)ホームレスの存在は、憲法25条「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」に照らして明らかに違憲状態であるにもかかわらず、法改正をして守ろうとない。

(9)東日本大震災による復興特別税が課税される期間は、個人所得税25年、個人住民税10年、法人税3年。法人は個人に比べて短く、かつ、前倒して徴収されなくなった。

(10)超長寿化で、本当に各自がより多くの老後資金を貯めないといけないとしたら(それを言う前に公的年金の改革が優先されるべきだが、100歩譲って)、そのレポートは厚生労働省から出るものではないのか。なぜ金融庁からのレポートだったのか。

(11)病気やケガで働けなくなった場合、公的医療保険に「傷病手当」という制度がある。この制度を知るだけで多くの勤め人の方は安心できるであろうに、政府は社会保障制度の情報を広めようとしない。ワクチンの情報は黙ってでも入ってくる。

(12)高齢者の働く意志をそぐという理由で在職老齢年金制度は緩和されたのに(働いてもカットされる額が従来より小さくなった)、生活保護世帯者が働くと給付はカットされる。よほどこの方々のカット率を下げて、社会に出られるようにした方がいいのではないか。

(13)ベーシックインカムの実証実験は世界中で数多く行われ、その効果が認められるようになってきても、なぜ議論は進まないのか。

これらの違和感は、政府が公言している「経済最優先」を軸に考えると、かなり点と点が線で結ばれるのではないかと私は考えているのですが、皆さんはいかが思われるでしょうか。

「グレートリセット」もある意味必要

いろいろな意見があると思いますが、ただ、「経済成長」と「経済的な成長」は異なります。
経済活動には資源を必要としますから、地球が有限である限り、GDPを増やそうとする「経済成長」には、おのずと限界があると思うのです。ましてや、日本はこれから本格的に人口減に入っていきます。「経済的な成長」を目指すことはし続けても、「経済成長」は手放す時期に来ているのではないでしょうか。「脱・経済成長」を唱える政治家が、なぜ一人もいないのでしょうか。

日本ほど豊かになりながら、今後、永続的に毎年少しずつでも私たち一人ひとりが消費量を増やし続けることが、本当にできるでしょうか。果たして、それは現実的でしょうか? 本気でそれを政策として推し進めるべきでしょうか? 株価が上がればハッピーなのでしょうか? 「豊かに生活する=経済成長し続ける」では、決してないのです。

「いま」の“マーブル状態”は、この「経済」の末期症状ではないかと思うのです。私は経済学者ではありませんが、ただ、冷静に考えて、金利が上がらない状態では、いまの銀行を中心とする金融システムを維持し続けるのは、不可能です。それでも、いままで通りのやり方を通そうとして、うまくいっていないのが「いま」ではないでしょうか。

この先、どんな“マーブル色”が登場するのか分かりません。が、少なくともモノゴトは進んでいて、どこかで大きな転換点を迎えるのではないでしょうか。

いわゆる、資本主義の行き詰まり、グレートリセット、金融システムの崩壊…。いろいろな表現ができるかもしれませんが、それはそれは大混乱です。でも、それが“ある色”に落ち着くための過渡期(マーブル状態)であれば、ある意味、必要な期間に思えます。雨降って地固まる、みたいな。

いったんの大混乱こそあれ、貧困や格差を生み出している「いまの経済」が壊れることは、私には悪いこととは思えず、その先がむしろ楽しみでもあるのです。不謹慎でしたら、申し訳ありません。でも、混乱を乗り越えてこそ、新しい社会システムを構築するだけのパワーを私たちは持てる気がします。

この「経済」を続けますか?

私の同級生は、30代の若さで、朝目が覚めず亡くなってしまいました。突然死です。
私の父は47歳で他界しました。
生きていることは、当たり前ではないんだなと思いました。

生きたくても生きられない人たちが大勢いる中で、私たちは生かされています。とはいえ、“長さ”の違いであって、私たちもいつかは「死」を迎えます。どうせ死ぬなら、どう生きるかが大事だし、なんなら、幸せに楽しく生きたいものです。来世とか、あるのかもしれませんが、よくわからないので、やっぱり「今世」楽しく生きたいです。それを、「経済」を理由に壊されたくありません。

大きく日本社会が変革を迎えようとしている中、私たちに問われている気がします。

この「経済」を続けますか? それとも、異なる「経済」を協力し合って作り上げますか?

私は後者を選択したいです。同じ思いの人が増えるといいなと思っています。

執筆者のプロフィール

八ツ井慶子(やつい・けいこ)

生活マネー相談室代表。家計コンサルタント(FP技能士1級)。宅地建物取引士。アロマテラピー検定1級合格者。城西大学経済学部非常勤講師。

埼玉県出身。法政大学経済学部経済学科卒業。個人相談を中心に、講演、執筆、取材などの活動を展開。これまで1,000世帯を超える相談実績をもち、「しあわせ家計」づくりのお手伝いをモットーに活動中。主な著書に、『レシート○×チェックでズボラなあなたのお金が貯まり出す』(プレジデント社)、『お金の不安に答える本 女子用』(日本経済新聞出版社)、『家計改善バイブル』(朝日新聞出版)などがある。テレビ「NHKスペシャル」「日曜討論」「あさイチ」「クローズアップ現代+」「新報道2001」「モーニングバード!」「ビートたけしのTVタックル」など出演多数。
▼生活マネー相談室(公式サイト)
▼しあわせ家計をつくるゾウ(ブログ)

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八ツ井慶子(家計コンサルタント)

生活マネー相談室代表。家計コンサルタント(FP技能士1級)。宅地建物取引士。(社)日本証券アナリスト協会検定会員。アロマテラピー検定1級合格者。城西大学経済学部非常勤講師。個人相談を中心に、講演、執筆、取材などの活動を展開。これまで1,000世帯を超える相談実績をもち、「しあわせ家計」づくりのお手伝いをモットーに活動中。

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