「もし、インフラのトラブルや災害が起こったら」と想定したとき、北海道在住の筆者が最も心配することは「暖房」です。電気やガスが止まって暖房が使えなくなったら、命に関わります。そのため筆者は、自宅で使う灯油ストーブのほかに、カセットガスのストーブを、キャンピングカーに常備しています。しかし実は、一度も使ったことはないのです。そこで今回、2月の北海道で、「カセットガスストーブは、キャンピングカーの室内をどのくらい暖めることができるのか?」を検証してみました。
執筆者のプロフィール
齋藤千歳(さいとう・ちとせ)
元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータを元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラアクセサリー、車中泊・キャンピングカーグッズなどの記事も執筆。現在は昨年8月に生まれた息子と妻の3人、キャンピングカー生活にハマっており、約1カ月かけて北海道を一周するなどしている。
カセットガスストーブの実力検証の準備
購入したまま全く使っていなかった
北海道出身、北海道在住ということもあるのでしょう。筆者は、なにかあった時の予備の暖房がないと不安になってしまいます。そのため自宅には、メインのセントラルヒーティングのほかに、電気のいらない灯油ストーブを数台用意しているのです。
またアウトドアを楽しむためのキャンピングカーにも、非常時に備えて、カセットガスを燃料とするストーブも用意しています。あくまで「非常時用」なので、リーズナブルな物を数年前に3,000円程度で購入しました。
購入した時点ですっかり安心し、一度だけ着火チェックをして以来、一度も触っていませんでした。カセットボンベ1本でどのくらい時間もつのか?どのくらい暖かくなるのか?など、全く検証しないまま、キャンピングカーに積みっぱなしになっていたのです。
ところが最近、キャンピングカーのメイン暖房であるFFヒーターの不調というトラブルが発生。幸い、キャンピングカーでの生活中ではなかったので、問題はありませんでした。しかし、キャンピングカーで旅行中にFFヒーターが故障したら、カセットガスストーブで暖を取ることになります。「こんな小っちゃいストーブで、本当に大丈夫なのか?」と、急に気になりだしました。そこで、カセットガスストーブがどの程度役に立つのか、実際に検証してみようと思ったわけです。
一酸化炭素警報器も併せて持っておきたい
筆者の住む北海道千歳市は、2月だと、日中から平気で零下の気温になります。そのため、カセットガスストーブをテストするには、あまり広いスペースだと無理があります。そこで筆者が所有するキャンピングカーの中で検証を行おうと考えました。
キャンピングカーの中は、ベッドスペースなども含めて、だいたい4畳半程度でしょうか。こんな狭い場所でストーブを使うのですから、換気に十分気を使う必要性があります。
そこで筆者は、一酸化炭素警報器を用意しました。いざという時のために暖房は確保したものの、その暖房で一酸化炭素中毒になっては意味がありません。
筆者はキャンピングカーでストーブを使うためではなく、車中で調理する際に使うガスコンロの影響が気になり、だいぶ前に一酸化炭素警報器を購入していました。ネットショップなどで購入すると1,000円台から入手可能なので、キャンピングカーで火を使う方は1台持っておくと安心でしょう。
カセットガスストーブで暖房してみた
外気温はマイナス2度、キャンピングカーの中は9度
検証は、2月中旬、我が家の隣に停めたキャンピングカーで行いました。11時頃にカセットガスストーブを着火し、キャンピングカーの暖房を始めたのですが、このときの外気温は約マイナス2度、キャンピングカーの室内は約9度でした。
LPG( 液化ブタン)が250g入った 新品のカセットガスを装着し、火をつけます。ストーブの周りが熱くなる可能性も考慮して、キャンピングカーのキッチン部分にストーブを設置。ストーブの火力調整は最大値です。
「最大火力では、あっという間にガスがなくなってしまうのでは」と思いましたが、実験なので、気にせず最大火力をキープします。
時間はかかるが予想以上に暖かい
この検証のために、キャンピングカーは数日間まったく暖房を入れていません。すっかり冷え切ったキャンピングカーを、コンパクトなカセットガスストーブで暖房したわけです。
実を言うと、「キャンピングカーの中を暖めることは難しいかも」と思っていたのですが、ゆっくりながら、着実に室温は上がっていきます。9度だったキャンピングカーの室温が、1時間後には15度程度まで上昇しました。
ストーブをつけ始めてから約2時間後には、キャンピングカーの中は約18度まで上昇。長袖Tシャツ1枚で、快適に過ごせる程度の温度です。
最高で室温は19度程度、約6時間燃え続けた
カセットガスストーブをつけて3時間後には、19度くらいまで室温が上がりました。同時刻の外気温は0度(この日の最高気温)。その後も、キャンピングカーの室内温度は19度を上回ることはなく、18度前後で推移。外気温が下がり始めた15時過ぎには、17度台になっていきました。
しかし、カセットガスストーブをつけたのは11時。この時点で、最大火力のまま約4時間燃えていることになります。予想以上に長く燃え続けることに、筆者は驚きました。
15時以降は外気温が下がり、カセットガスのガスの量も減っていたのでしょう。徐々に室温は下がっていき、17時過ぎにガスが尽きました。火が消えたときには、キャンピングカーの室温は13度になっていました。
結局、約6時間燃え続け、室温も最高で19度程度にまで上昇しました。期待以上の結果といえます。これなら、いざという時にも役立ってくれるでしょう。
まとめ
コスト面も優秀なので普段使いもアリ
恥ずかしながら筆者は、「カセットガスストーブはパワーがなく、短時間しか使えず、部屋を暖めるには力不足」と勝手に思っていました。非常用として買っておきながら、あまり信用していなかったのです。
ところが実際に使ってみると、カセットガス1本で約6時間燃え続け、氷点下の外気温の中、キャンピングカーの中を十分快適に過ごせる温度にまで暖めてくれました。しかも、カセットガス1本の値段は約100円。燃費がよいといわれているキャンピングカー用のFFヒーターでも、だいたい1時間に200ml程度の燃料を消費するといわれています。現在ガソリンが1L約170円。6時間FFヒーターをつけると約200円の燃料代が必要です。もちろん、FFヒーターはカセットガスストーブより圧倒的にパワフルですが、コストを考えると、カセットガスストーブの普段使いもアリでしょう。
ただし、火に気をつけることはもちろん、一酸化炭素警報器などを装備し、こまめに換気を行うことを忘れないでください。