写真といえば、スマホにデジカメ。画面でデータを見るのが当たり前で、プリントなんてしないというかたが大部分ではないでしょうか?筆者もそんなひとりです。しかし時折、実際に物質として存在する紙の写真をうらやましく思うこともあります。とはいえ、わざわざ手間と時間をかけてプリントするのは面倒。撮ったその場で、紙の写真にしてほしいわけです。となると、インスタントカメラやポラロイドなのですが、コストが高すぎ!そんなわがままな筆者の心をとらえたのが、「モノクロインスタントカメラ KC-TY01」。プリント1枚約7円というローコストなインスタントカメラを紹介します。
執筆者のプロフィール
齋藤千歳(さいとう・ちとせ)
元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータを元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラアクセサリー、車中泊・キャンピングカーグッズなどの記事も執筆。現在はキャンピングカーを「方丈号」と名付け、約9平方メートルの仕事部屋として、車内で撮影や執筆・レビューなどを行っている。
撮ったらその場で即プリント
一発勝負のデジタルカメラ
「モノクロインスタントカメラ KC-TY01」を、どう紹介したらよいのでしょう。ざっくり言うと、約31万画素のデジタルカメラで撮影した画像を、コンビニのレシートのような感熱紙にモノクロでプリントしてくれるカメラ。また、デジタルカメラなのですが、撮影した画像データは保存されません。一発勝負のモノクロプリントインスタントカメラといえるでしょう。
感熱紙プリンター機能を内蔵しているので、カメラ本体は意外と大きく、約137×90×51mm、重量は約226g(付属品除く)です。カメラ本体の色は、ブラックのほかにブラウン、スカイブルー、コーラルピンクがラインアップされています。リチウムイオン充電池を内蔵しており、USB micro Bコネクタで充電が可能。カメラ本体にUSBケーブル、ネックストラップ、ペーパーロール(約80枚分)、取扱説明書が同梱されていました。
また、レンズは35mm判換算で44mm相当、F2.8。シャッター速度は1/100秒、ISO感度は100。スマホや本格的なデジタルカメラに比べると、かなりアバウトな性能になってます。2022年4月現在で実勢価格が5,000円を切っており、気軽に買えるカメラと考えれば、まあ妥当ともいえるのではないでしょうか。
【シャッターを切るだけ】フレームを選んでシャッターボタンを押すだけ。撮影した写真が簡単に感熱紙にプリントされます。
電源:内蔵リチウム電池
原産国:中国
1本約80枚撮影できて1枚あたりのコストは約7円
「モノクロインスタントカメラ KC-TY01」本体には、感熱紙のホワイトペーパーロールが1本付属しています。約8mの長さで、だいたい80回分のプリントが可能だといいます。
これがなくなったら、当然別売のペーパーロールを購入することになるのですが、ペーパーロールのほかにシールロールもラインアップされています。「ホワイトペーパー3個セット」「ホワイトシール3個セット」のほか、下の写真のように3色がセットになった「カラーペーパー3個セット」「カラーシール3色セット」があります。
実勢価格は、ペーパータイプの3個セットが1,650円ほど、シールタイプの3個セットが1,980円ほど。ペーパータイプはロール1個で約80回プリントできるので、1枚あたりのプリント単価は約7円。シールタイプのロールは1個で約33回プリントできるので1枚あたりのプリント単価は約20円となっています。
モノクロプリントとはいえ、撮影してすぐにプリントされた写真が楽しめるインスタントカメラとしては、かなりリーズナブルな価格設定といえるでしょう。
それでは実際に撮影していきましょう。
「モノクロインスタントカメラ KC-TY01」で撮る
両手でしっかり構えるとレンズを覆ってしまう
ある程度のカメラで撮影に慣れている方が「モノクロインスタントカメラ KC-TY01」を普通に構えて撮影すると、大失敗するでしょう。というか、筆者は大失敗をしたわけです。
シャッターボタンに右手の人差し指を置き、両手でしっかりとカメラを構えると、左手の指はカメラのレンズを覆い、右手の指はプリントアウトされてくるロール用紙を堰き止めてしまうのです。
まずは正しいカメラの構え方を捨て、グリップ部分に配置されたレンズを左手の指で覆わないように、右手の指でプリントアウトされてくるロール紙を堰き止めないように、配慮する必要があります。
また、「ほとんど穴が開いているだけ」に近いファインダーは、だいたいの目安にすぎません。正確なフレーミングはほぼ不可能です。感覚に頼りましょう。
カメラ背面には、電源ボタン、フラッシュスイッチ、フレーム選択ダイヤルがあります。フラッシュについては、さほど強力なものではないので、逆光条件などの際に条件を緩和してくれるのでオンにしておくのもよいでしょう。ハート形など8種類のフレームが選択できるフレーム選択ダイヤルですが、筆者の硬い頭ではなかなか使いこなすのが難しく感じました。どちらかというと、考えるよりも楽しむカメラという印象です。
ときおり起こる紙詰まりは「笑ってロールペーパーを入れ直す」
「モノクロインスタントカメラ KC-TY01」の大きな特徴のひとつが、記録メディアなどがないことです。基本的にユーザーがアクセスできる内蔵メモリーはなく、記録メディアのスロットもありません。撮影した写真はロールペーパーにプリントされて、それで終わりです。画像データとして残すこともできません。ある意味完全な一期一会。
また、ロールペーパーは、自分でカメラ本体にセットするのですが、詰まったり、うまくペーパーが送られなかったりと印刷ミスも多いです。そういうときはロールペーパーをいったん取り出して、「うまくいくまで入れ直す」ことになります。とても令和の写真機とは思えないほどレトロな作り。こうした状況を笑えないかたは、スマホなどを使ったほうがよいでしょう。
とはいえロールペーパーは、一度上手に装填できると、そのまま問題なく印刷が続くことが多いです。ロールの巻き具合など、最初にきっちり気を付ければ大丈夫だと思います。
そうこうして得られる写真は、以下のような感じです。ロール紙の幅が約5.5cm、送り出される量が約8cmなので約5.5×8cmのモノクロ写真がプリントされます。画質は、被写体や写すサイズをちゃんと選ばないと、写っているものが分からなくなるレベル。
しかし、これが楽しい。ちょっとびっくりするくらい。被写体にカメラを向けて撮影すると、シャッター音からしばらく遅れて「ヴーン」という動作音を立てながら、モノクロプリントが吐き出されます。
撮影しても、プリントされるまで、ちゃんと写っているか全くわからない。スマホやデジカメでの撮影時にはない、新鮮なドキドキ感です。また、1歳半になる息子は、スマホやデジカメでの撮影にはほとんど反応しませんが、「モノクロインスタントカメラ KC-TY01」を向けると、プリントやシールがもらえると認識しているので、手を出して待っています。写真を手渡しするというのも、ものすごく久しぶりです。あらためて、「いいもんだな」と思います。
決して高性能・高画質ではありませんが、紙の写真として物質が存在することの力を感じます。これがとてもおもしろいので、ぜひ一度体験してみてください。
まとめ
ローコストで手軽に「紙の写真」になる楽しさはやはり格別
「モノクロインスタントカメラ KC-TY01」は画質や性能を語るべきカメラではないと、筆者は思っています。しかし、とても楽しいし、おもしろい。
筆者には、1枚あたりのプリントコストが数百円もする本格的なインスタントカメラで、子どもたちに自由に撮影させる甲斐性はありません。しかし、1枚約7円の「モノクロインスタントカメラ KC-TY01」なら、好きに撮ってもらってかまいません。
実際、幼稚園生と小学生の姪たちに撮影させてみました。スマホやデジカメで写真を撮ることや撮られることに慣れている彼女たちも、紙のプリントが出てくる「モノクロインスタントカメラ KC-TY01」には、いつもと違う反応を見せ、かなり盛り上がっていました。
そして筆者は、息子の保育園の連絡帳や彼の持ち物に、シールやプリントを貼るなどして楽しんでいます。「紙の写真」を手軽に楽しめるカメラとして、一度使ってみてはいかがでしょうか。かなり楽しいですよ。