絵を構成する要素はいろいろありますが、基本は「線」です。線をのびのびと自由に描くことを楽しみましょう。ラフな線を思い切って描くことも、絵の上達の近道です。かんたんそうに見えて、案外むずかしいのが直線です。まっすぐな線の描き方、直線を利用した技術「ハッチング」などについて、著者の松原美那子さんに解説していただきました。
解説者のプロフィール
松原美那子(まつばら・みなこ)
デッサンのオンラインスクール「ピリカアートスクール」代表。武蔵野美術大学にて、中学高等学校の美術教員免許を取得。大学卒業後、東京都府中市にてアートスペースをオープンし、若手アーティストの個展や街中アートウォーク、版画国際交流展などの企画運営に携わる。2008年より、オンラインにてデッサンスクールを開校し、日本全国、海外を含め、述べ10,000人以上の受講生にデッサンを指導。受講生は、美大受験生、漫画家、アニメーター、デザイナー、インテリアコーディネーターなど多岐にわたる。現在、沖縄を拠点に、高校や大学などでも、デッサンの講義を行っている。「林先生の初耳学(TBS)」「中居正広のミになる図書館(TBS)」などテレビ出演多数。
本稿は『はじめてのデッサン教室 60秒右脳ドローイングで絵が感動的にうまくなる!』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
イラスト/こつじゆい、佐悠
準備 用意するものは3つだけ。さぁ、描きはじめよう!
紙、ペン、消しゴムさえあれば描きはじめられる
「デッサン」と聞くと、大きなキャンバスをイーゼルに立てかけて、たくさんの絵の具や専用のペン等を用意して…なんて光景を思い浮かべて尻込みしてしまうかもしれません。
でも、そんな必要はありません。紙と鉛筆(またはペン)、そして消しゴムさえあればOK。
全部、家にあるもので十分です。さぁ、いますぐ絵を描いてみましょう!
▼紙
コピー用紙、ノート、お絵かき帳、クロッキー帳などなんでもOK。ただ、デッサンにじっくり取り組む場合は、厚めの画用紙がおすすめです。
▼消しゴム
一般的な消しゴム(プラスチック消しゴム)で十分です。細かいところを消すときは、カッターで小さく切り、切り口のとがったところを使うと便利です。
▼鉛筆またはペン
鉛筆でもボールペンでもミリペンでも、好みのものでOKです。おもに2Bの鉛筆と、5mmのペンを使っています。
本稿は『はじめてのデッサン教室 60秒右脳ドローイングで絵が感動的にうまくなる!』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
準備 原点にして最重要!まずは「観察」が大切
「観察」して目に映ったものを整理しないと、絵は描けない
私たちはものを見たとき、それが何であるかを瞬時に判別しています。
でも、いざそれを絵にしようとすると、なかなか描けないもの。
それは、イメージを絵にするには、観察によってより詳細な情報を取得し、その情報を整理する必要があるからです。
たとえば、リンゴが丸いということはリンゴを構成する重要な要素ではありますが、リンゴが丸いことだけわかっていても上手な絵は描けません。
よく見ると、リンゴの形がただの丸じゃないこと、色もただの赤だけじゃないことが見えてくるはずです。
観察によって得たこれらの情報を、頭の中ではっきりイメージできてはじめて絵にできます。
「観察」と「情報の整理」が、絵の上達の第一歩にして、もっとも重要なポイントなのです。
下のような流れで観察をおこないます。
STEP1 モチーフを判別する
モチーフを見た瞬間に、脳の中ではまず、「これはリンゴだ」といった判別が行われます。
この段階では、絵を描こうとしても描けません。
STEP2 情報を細分化して観察する
モチーフの情報を形・色・質感・陰影などに分けて、それぞれをじっくり観察しましょう。
観察するときは「全体を見る」→「細部を見る」を交互にくり返すのがコツです。
STEP3 情報を整理する
STEP2で得た情報を整理して「どう描いたら伝わるか」を考えます。
その情報を伝える手段は、形なのか、色の濃さなのか。情報が表現と結びつくと、上手な絵が描けるようになります。
本稿は『はじめてのデッサン教室 60秒右脳ドローイングで絵が感動的にうまくなる!』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
線の描き方(1) 縦横無尽に線を走らせ、手首と腕のストレッチ!
リラックスして思いっ切り線を楽しむ
絵を描くことに緊張して、力が入りすぎるときれいな線が描けません。
まずは、いろいろな種類の曲線を描いてリラックスした状態をつくりましょう。
短い曲線は手首を左右に動かしながら、長い曲線はひじ、あるいは肩から動かすイメージで描くのがポイント。
あわせて、鉛筆やペンを立てて描いたり、寝かせて描いたり、筆圧を変えて描いたりしながら、鉛筆やペンの描き心地の違いを楽しみましょう。
ラフな線を思い切って描くことも、絵の上達の近道です。
本稿は『はじめてのデッサン教室 60秒右脳ドローイングで絵が感動的にうまくなる!』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
線の描き方(2) 長い直線を描くときは「ひじ」で線を引く!
手首で描こうとすると線の長さに限界がある
かんたんそうに見えて、案外むずかしいのが直線です。
まっすぐな線を描くときは、(1)肩の力を抜く、(2)ゴール(終点)を見据える、(3)線の長さの分だけひじを動かす、(4)少しスピードをつけて描く、の4点を意識しましょう。
とくに長い線を描く場合、手首だけで描こうとすると可動域が狭まってうまく描けないので注意。
最初はなかなかうまくできないかもしれませんが、くり返し描いているうちに脳のイメージと手、鉛筆の動きがつながり、うまく描けるようになります。
▼STEP 直線を描いてみましょう。
▼STUDY 直線を利用した技術「ハッチング」を学びましょう。
濃さや質感は直線で表現できる
短い線を重ねる技法を「ハッチング」といい、陰影や質感を出すことができます。
線を同じ方向に描く「パラレルハッチング」や、線を交差させて網の目のようにする「クロスハッチング」などがあります。
ハッチングは鉛筆でもペンでもできますが、ペンで濃淡を出したいときにとくに便利です。
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なお、本稿は書籍『はじめてのデッサン教室 60秒右脳ドローイングで絵が感動的にうまくなる!』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。絵を描くことに、芸術的な才能が必要だと考えていませんか? それは思い込みです。デッサンのように「見たままに描く」という技術は、文字を書けるようになるのと同じで、だれにでも身につけられる技術です。絵をうまく描けるようになる、とっておきの練習法。それが「右脳ドローイング」です。左脳の論理的な思考が入ると、処理が追いつかず混乱してしまい、結果として絵が描けなくなってしまいます。そこで、右脳ドローイングでは60秒という短い制限時間で絵を描くことによって、左脳のはたらきをおさえます。右脳は短い時間でもはたらくので、形をとらえる練習を効率よくおこなえます。本書は、60秒で絵心を引き出す新しいデッサンの教科書です。やさしく丁寧にそのメソッドを解説しています。