飛行機が通った後にできる雲は、どうしてできるのでしょうか? 飛行機のエンジンからは、水蒸気を含んだ排気ガスが出ます。エンジンから出た水蒸気は、冷やされて氷の粒になります。これが飛行機雲の正体です。逆に、エンジンの通過したところだけ雲が消える「逆飛行機雲」もあります。飛行機雲と逆飛行機雲のしくみについて、著者で気象予報士の中島俊夫さんに解説していただきました。
解説者のプロフィール
中島俊夫(なかじま・としお)
気象予報士。1978年生まれ。2002年、気象予報士資格を取得。その後、大手気象会社や気象予報会社で予報業務に携わるかたわら、資格学校で気象予報士受験講座の講師も務める。現在は個人で気象予報士講座「夢☆カフェ」を運営。気象予報士の劇団「お天気しるべ」を主宰。著書に『イラスト図解 よくわかる気象学』シリーズ(ナツメ社)など。2021年NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」で助監督(気象担当)を務める。
本稿は『イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める! 天気のしくみ』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
イラスト/桔川シン、堀口順一朗、北嶋京輔、栗生ゑゐこ
「飛行機雲」はなぜできるのか?
飛行機のエンジンから出る水蒸気が、冷やされて雲の粒になるから!
飛行機が通った後にできる雲は、どうしてできるのでしょうか?
飛行機のエンジンからは、水蒸気を含んだ排気ガスが出ます。飽和水蒸気量は温度によって決まっています。
上空の大気は-40℃以下と冷たく、空気が含むことのできる水蒸気の量は少ないため、エンジンから出た水蒸気は、排気ガスの中のチリなどを核として、氷の粒になります。
これが飛行機雲の正体です。排気ガスの出る場所に雲ができるので、エンジンの数だけ飛行機雲はできます。飛行機のエンジンが2本なら、飛行機雲は2本できます。
▼飛行機雲のしくみ
(1)高温の排ガス中の水蒸気が大気にまかれると、大気が含みきれなくなった水蒸気が凍り、氷の粒が生じる。
(2)できた氷の粒が飛行機雲をつくる。飛行機雲は湿度が高いと長く残り、湿度が低いと消えやすい。
湿度によって飛行機雲の寿命が変わる
上空の大気が安定していて、湿度がそれほど高くなければ、しばらくすると飛行機雲は消滅します。
しかし、大気が不安定で湿度が高いと、飛行機雲はなかなか消えません。
このことから、「長い飛行機雲ができた後は、天気が崩れやすい」という観天望気があります。
飛行機雲とは逆に、エンジンの通過したところだけ雲が消えて、青空がすじのように見える「逆飛行機雲」もあります。
エンジンからの高温な排気ガスで、エンジンが通ったところの雲の粒が蒸発して見えなくなるという、珍しい現象です。
▼逆飛行機雲のしくみ
(1)飛行機のエンジンが通過した部分の雲が、高温の排気ガスで蒸発する。
(2)飛行機が進むと、どんどん雲が蒸発・消滅して、空に青いすじができる。
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なお、本稿は書籍『イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める! 天気のしくみ』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。最近は、天気予報で「ゲリラ雷雨」「線状降水帯」「猛暑」など、気象災害に対して警戒を呼びかける言葉をよく聞くようになりました。でも、天気のしくみを知るのに必要な気象学って、数式とかたくさん出てくるんでしょ? …などのように思ってはいませんか? そんなことはありません。「晴れる」「雨が降る」という、とても身近なことなのに、そのしくみについて知らない方はきっと少なくないはず。そんな天気を知るための最初のきっかけに、本書は非常に適しています。興味をもったページから読めるように工夫しているので、順番に読んでいく必要はありません。大人はもちろん、小さなお子さんも楽しめます。簡潔な文章と豊富なイラストや写真を使ってわかりやすく説明しています。