天気のいい青空には真っ白な雲。一方、雨の日の空には、暗い灰色のどんより雲。同じ雲なのに、なぜ色が違うのでしょうか? 私たちの目に見える光は「可視光」と呼ばれ、光のもつ波長の違いにより、色が変わります。雲の色について、著者で気象予報士の中島俊夫さんに解説していただきました。
解説者のプロフィール
中島俊夫(なかじま・としお)
気象予報士。1978年生まれ。2002年、気象予報士資格を取得。その後、大手気象会社や気象予報会社で予報業務に携わるかたわら、資格学校で気象予報士受験講座の講師も務める。現在は個人で気象予報士講座「夢☆カフェ」を運営。気象予報士の劇団「お天気しるべ」を主宰。著書に『イラスト図解 よくわかる気象学』シリーズ(ナツメ社)など。2021年NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」で助監督(気象担当)を務める。
本稿は『イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める! 天気のしくみ』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
イラスト/桔川シン、堀口順一朗、北嶋京輔、栗生ゑゐこ
なぜ晴れた日の雲は白く、雨の日の雲は黒い?
太陽の光の「散乱」により、雲の粒に当たる光の散らばり方が違い、色が変わる!
天気のいい青空には真っ白な雲。一方、雨の日の空には、暗い灰色のどんより雲。
同じ雲なのに、なぜ色が違うのでしょうか?
そもそも、モノが見えるのは、モノに当たった光が反射して目に届くからです。
私たちの目に見える光は「可視光」と呼ばれ、光のもつ波長の違いにより、色が変わります。
太陽の光には、赤や青などさまざまな色が含まれています。
雲は、透明な水の粒(雲粒)の集まりです。
太陽の光は雲粒にぶつかると、ばらばらな方向に反射します。
この現象を「散乱」といいます。
雲粒はさまざまな波長の光を散乱するため、それら光の色が雲の中で混じり合って、白い光に見えます。
これが、晴れた日の雲が白く見える理由です。ちなみに、雲で起きている散乱は「ミー散乱」といいます。
雲粒の大きさとつまり具合で変わる
今にも雨が降りそうな雲や、すでに雨が降っている雲では、雲粒1つごとの大きさがより大きく、光を吸収しやすくなります。
また、厚い雲は雲粒の密度が濃く、つまっているので、光が雲粒に当たっては散乱し、また当たっては散乱…をくり返します。
このように光が四方八方へ散りすぎるため、地上に届く光が減ります。
そのため、地上から見上げる雲の底は、暗い灰色に見えるのです。
▼白い雲の場合
太陽の光が雲粒にぶつかると、さまざまな波長の光が散乱して混じり合うため、雲は白く見える。
雲粒は、長い波長も短い波長も、さまざまな波長の光を散乱する(ミー散乱)。
▼暗い雨雲の場合
雨雲は雲粒が大きく、雲粒の密度も大きい。光が散乱したり吸収されたりして、光を通しにくいため、暗い灰色に見える。
雲粒がつまっているため、光が吸収されたり、何度も散乱され、光が弱くなる。
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なお、本稿は書籍『イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める! 天気のしくみ』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。最近は、天気予報で「ゲリラ雷雨」「線状降水帯」「猛暑」など、気象災害に対して警戒を呼びかける言葉をよく聞くようになりました。でも、天気のしくみを知るのに必要な気象学って、数式とかたくさん出てくるんでしょ? …などのように思ってはいませんか? そんなことはありません。「晴れる」「雨が降る」という、とても身近なことなのに、そのしくみについて知らない方はきっと少なくないはず。そんな天気を知るための最初のきっかけに、本書は非常に適しています。興味をもったページから読めるように工夫しているので、順番に読んでいく必要はありません。大人はもちろん、小さなお子さんも楽しめます。簡潔な文章と豊富なイラストや写真を使ってわかりやすく説明しています。