足が床から浮く程度の「ゆるジャンプ」でも、下半身の大きな筋肉群がそろって使われますから、筋力強化に役立ちます。ふくらはぎのポンプ機能が高まれば、全身の毛細血管に血液を送りこむことができ、生活習慣病の予防・改善に役立ちます。また、骨への刺激となるため、骨粗鬆症の予防にも役立つでしょう。【解説】伊賀瀬道也(愛媛大学医学部附属病院抗加齢予防医療センター長)

解説者のプロフィール

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伊賀瀬道也(いがせ・みちや)

愛媛大学医学部附属病院抗加齢予防医療センター長。愛媛大学大学院抗加齢医学(新田ゼラチン)講座教授。1991年、愛媛大学医学部、99年、同大学院卒業。同大学にて、抗加齢(アンチエイジング)医学研究を行う抗加齢センターの立ち上げに尽力。脳卒中、認知症、フレイル・サルコペニアなどの予防について、臨床研究を行う。著書に『1分ゆるジャンプ・ダイエット』(冬樹舎)がある。

月に1kgのペースで体重が減っていった

私が「ゆるジャンプ」を推奨するようになったのは、自身の個人的な体験がきっかけとなっています。

4~5年前、たまたま縄跳びをする機会がありました。縄跳びを行うのは、20年以上ぶりだったと思いますが、ある程度は跳べるだろうと考えていました。というのも、昔は二重跳びが得意で、100回や200回は続けて跳ぶことができたのです。

ところが、実際に跳んでみると、数回で足がもつれてしまいました。当時、私は50代前半。自分が思っている以上に、体力・筋力の衰えが始まっていることを実感せざるをえませんでした。

「なんとかしないといけないな」という思いから、縄跳びを習慣化しようと考えました。しかし、縄跳びの場合、縄がないとできません。スペースも必要だし、気軽に続けられそうにない……そこで思いついたのが、ジャンプでした。

それから、朝・昼・夕と、1分ずつ100回程度ジャンプすることを日課にしました。ジャンプといっても、足が床から浮く程度の「ゆるジャンプ」です。もちろん、最初は100回も跳べません。しかし数日もすると、なんなく跳べるようになりました。

2ヵ月ほど続けると、久しぶりに会った知人から、「やせたね」といわれるようになりました。以前は、誰かに会うたびに、「また太った?」といわれてばかりでしたから、それは大きな励みになりました。そのおかげでジャンプの効果を実感し、続けることができたといえるでしょう。

このとき、ジャンプと併行して、食事に気をつけていたこともあって、順調に月1kg程度体重が減っていきました。1年経ったころには、10kgも減量していたのです。82~83kgあった体重が、72~73kgまで落ち(身長174cm)、腹囲が5cm細くなりました。服のサイズも当然変わり、ジーンズのサイズは34から32に。

以前は、明らかに太り過ぎでしたが、現在は、適正体重だと思います。2018年ごろに減量して以来、今も体重をキープしています。

画像: 体重が10kg減って、顔周りがシャープになり、服のサイズもダウンした。

体重が10kg減って、顔周りがシャープになり、服のサイズもダウンした。

高血圧や糖尿病を撃退!筋肉も骨も強くなる!

ゆるジャンプの効能としては、次のような複数の健康効果が期待できると考えられます。

下半身の筋肉群の強化

ジャンプをする際には、下半身の多くの筋肉が使われます。まず、太ももの前面の大腿四頭筋。これは、ひざを伸ばすときに使う筋肉です。ジャンプするとき、瞬間的にひざを伸ばすことで使われています。

ジャンプし、足をまっすぐ伸ばす際には、太もも裏のハムストリングスや、お尻の筋肉である大殿筋も使われます。さらに、ふくらはぎの筋肉も使われることになるでしょう。

こうして下半身の大きな筋肉群がそろって使われますから、ジャンプをくり返すことで、その筋肉群の衰えを防ぎ、筋力強化にも役立ちます。

血流改善効果

ふくらはぎの筋肉には、心臓から送られてきた血液を心臓に送り返すポンプ機能があります。筋肉がポンプのように緊張と弛緩をくり返すことで、下半身にたまった血液を重力に逆らって心臓へと送り返しているのです。スムーズに下半身の血液が戻れば、それは、全身の血液循環がよくなることにもつながります。

ふくらはぎの筋肉が衰えると、ポンプ機能の働きが弱まり、血流が悪くなります。ゆるジャンプで、このポンプ機能を高めることができれば、全身の毛細血管までたっぷりと血液を送りこむことができるようになるでしょう。

生活習慣病の予防・改善効果

ジャンプで下半身の大きな筋肉群を使うことで、効率よく体内の脂肪や糖を燃焼させることができます。実際、私自身もスムーズにやせました。肥満を改善することは、高血圧の対策としてとても重要です。

さらに、ふくらはぎのポンプ作用によって、全身の血流がよくなれば、心臓にかかる負担が減って、こちらも高血圧の予防・改善、さらには高血糖の改善にも役立つでしょう。

大きな筋肉が強化されると、筋肉中に多くの糖分を取り込むことができます。有酸素運動でもあるジャンプによって、筋肉中の糖が使われますから、糖の代謝が活発になり、血糖値の低下にもつながります。

ポッコリおなかの改善

ゆるジャンプでは、ふくらはぎや太ももだけではなく、全身の筋肉を使います。跳び上がる際には、おなかにも力が入っているので、腹筋もだんだん締まってくるでしょう。ポッコリおなかを引き締めるのにも役立つはずです。その効果は、私自身も実感しています。

骨の強化

ジャンプすることによって、着地の衝撃が骨への刺激となります。すると、骨を作り出す骨芽細胞が刺激を感知して、骨が丈夫になるため、骨粗鬆症の予防にも役立つでしょう。

バランス強化

ジャンプと着地をくり返すたびに、私たちは倒れないようにバランスを取らなければなりません。それが、バランスを取る力を高めてくれると考えられます。これは高齢者の転倒予防につながります。

リフレッシュ効果

私たちは、常に重力に引っ張られています。それは、つまり下方に引っ張られている状態が続いているということです。

ゆるジャンプは、筋肉を上に持ち上げ、この重力に逆らいます。一瞬でも解放されることが、快感につながっているのではないかと考えています。それは、心身のリフレッシュ効果をもたらします。

自然と姿勢が整って足や肩の痛みが取れた

私自身の話に戻れば、ゆるジャンプを続けていたところ、以前から悩まされてきた右足の痛みがほとんど解消しました。

私は腰椎椎間板ヘルニアがあり、中学時代から右ひざ、右足に痛みやしびれが出ていました。左半身でかばうように生活してきたせいで、左肩や左肩甲骨辺りのコリもひどかったのです。

40代後半からは、右足のアキレス腱に鋭い痛みが出るようになりました。痛みのため10分程度の歩行でもつらく、歩く量も減ってきていました。

しかし、今は、1時間でも普通に歩けるようになっています。さらに、ひどかった肩こりも改善しました。

このように多くの健康効果が期待できますから、ぜひゆるジャンプを生活に取り入れてみてください。

ゆるジャンプは難しい動きがなく、器具も不要で、どこでも気軽にできるのが大きな特長です。足が床から少し離れる程度のジャンプですから、何歳でも行うことが可能です。

もちろん、高齢のかたは、準備体操をしっかり行い、転倒に気をつけて行う必要があるでしょう。もしも心配なら、どこかにつかまった状態で、数回のジャンプから始めてください。最初は1~2回でかまいません。慣れるにしたがって、回数は増やしていけばいいのです。

ゆるジャンプが勧められないのは、心臓病や脳血管に疾患があったり、ひざや股関節などの整形外科関連の病気があったりして、運動を止められているかたなどです。

そういったかた以外であれば、ぜひ試していただきたいと思います。

準備運動のやり方

※手首・足首はぶらぶらするだけでもよい。
※ひざを曲げる際は、90度程度にするか、もも裏とふくらはぎがつくまで曲げる。

手首、足首をゆっくり20回程度回す。

画像1: 準備運動のやり方

ひざを曲げて10回程度、屈伸運動をする。

画像2: 準備運動のやり方

ゆるジャンプのやり方

心臓病や整形外科関連の病気がある人は、主治医に相談してから行う
痛みを感じた場合は、ただちに中止する
※できる回数から始めればOK! 慣れてきたら少しずつ回数を増やしていく。

両手足の力を抜いて、背すじをまっすぐに伸ばして立つ。目線は前を向く。

画像1: ゆるジャンプのやり方

かかとが床から少し離れる程度に跳ぶ。呼吸は止めず、自然に行う。着地するときは、ひざを軽く曲げる。

画像2: ゆるジャンプのやり方

■この記事は『壮快』2022年9月号に掲載されています。



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