終活は自分の老後を「活」かすためのものでもあります。家の中が片づいて不意のケガが防げるなど、実生活上のメリットのほか、資産や支出を見直すことで、訪れるかもしれないお金の問題に備えることもできます。日本人の健康寿命を踏まえると、70代で始めようとしても、健康上の理由でできない可能性もあるため、40代や50代でも始めるのに早すぎるということはありません。
本稿は『老後とお金の不安が軽くなる 終活の便利帖』(マキノ出版)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
終活は老後を「活」かすこと
「終活」というと「死に支度」のイメージが強く、敬遠する人もいることでしょう。実際、終活は生前整理をしたり、葬儀や相続の下準備をするなど、自分の死と向き合う作業を伴います。ネガティブにとらえるな、という方が無理かもしれません。
しかし、終活は自分の「終」に向けた行動である一方で、自分の老後を「活」かすためのものでもあります。
家の中が片づけば、不意のケガが防げたり、必要なものがすぐに取り出せたり、掃除が楽になったりといった、実生活上のメリットがあります。
また、資産や(年金)収入、支出を見直すことで、老後の生活状況をしっかりと把握しておけば、今後訪れるかもしれないお金の問題に、あらかじめ備えることもできます。
「人生100年時代」といわれる現在、終活を実践したからといって、すぐに死が訪れるわけではありません。終活の先にもまだまだ人生は続きます。終活はむしろ、その後の人生を豊かに生きるための手段であるといえるのかもしれません。
思い立ったそのときに始めよう
では、終活はいつ始めるべきなのでしょうか。
2022年3月に燦ホールディングス株式会社が行った調査(※)によると、自分の「終活」を始める年齢として最適と考えられているのは70代が最も多く(35%)、いつから始めても良い(30%)、60代(26%)、50代(7%)と続いています。
この調査からは、多くの人が年金生活が始まる前後をめどに、終活に取り組もうと考えていることがわかります。
しかし、日本人の健康寿命(日常生活に制限なく過ごせる年齢)が72~75歳であることを踏まえると、70代で終活を始めようとしても、健康上の理由で始められないという事態を想定しておくべきです。
終活は老いを迎えるまで先延ばししなければならないというものではありません。終活という言葉を意識した「今」が、たとえ40代や50代だったとしても、始めるのに早すぎるということはないのです。
終活は何度も繰り返していい
終活はいつ始めてもいいものであると同時に、何度も繰り返してもいいものです。
というのも、資産や収入の状況、家の状態などは、常に変化し続けるからです。毎年でも数年に1回でも、終活を繰り返し行うことで、そのつど、自分を取り巻く環境が改善され、新たな気持ちで生活を仕切り直せるでしょう。
なお、終活の際は毎回エンディングノートをつけるといいでしょう。すると、意識すべき課題が整理でき、終活のたびに効率が高まっていくはずです。
世帯の構成によって終活のメリットや注意点は異なります
【一人暮らしの場合】
▶︎メリット
● 家の中が片づくことでケガのリスクが抑えられる
● 生活費の課題が明確になり、対策を始められる
●介護や葬儀等の希望を残しておける
●新たな気持ちで生活が始められる
●必要事項やお願いの伝達などでコミュニケーションのきっかけが生まれ、孤独死の回避につながる
▶︎注意点
● 自分の死後に必要になる書類等については、相談したり調べたりせずに処分すると、残された人が困ることに
【夫婦二人暮らしの場合】
▶︎メリット
● お互いに配偶者の死に対する心構えができる
● 自分の死後の配偶者の生活に備えられる
● 自分の死後の手続きについて引き継ぎができる
● 家の中が片づくことでケガのリスクが抑えられる
● 介護や葬儀等の希望を残しておける
▶︎注意点
● 何を残して何を捨てるのか、夫婦間で話し合いながら進めないとトラブルの元になることもある
【子どもと同居の場合】
▶︎メリット
● 子どもと一緒に生前整理をすれば、形見分けがスムーズに進む
● 重い物や高いところにある物の移動を手伝ってもらえる
● 自分の死後の手続きについて引き継ぎができる
● 家の中が片づくことでケガのリスクが抑えられる
● 介護や葬儀等の希望を残しておける
● 新たな気持ちで生活が始められる
▶︎注意点
● 何を残して何を捨てるのか、子どもから提案があった場合にはうがった受け取り方をせず、自分のためだと思って話し合いましょう
●本記事で紹介している情報は、2022年7月15日現在のものです。これ以降の法・制度改正等には対応しておりませんので、あらかじめご了承下さい。
●本記事で紹介している情報をもとに行動したうえで発生したトラブル・損害につきましては、一切の補償をいたしかねます。自己責任の範囲内で検討・実践してください。
■監修/小泉 寿洋(終活カウンセラー1級・ファイナンシャルプランナー(AFP))
■イラスト・マンガ/宮坂希
※この記事は『老後とお金の不安が軽くなる 終活の便利帖』(マキノ出版)に掲載されています。