優秀なデザインに送られるグッドデザイン賞が、今年も決定しました。厳正な審査を経て選ばれた「Gマーク」製品は、どれも魅力的で優秀なものばかり。2022年のグッドデザイン賞に輝いた文房具の中から、気になるアイテムをピックアップして紹介します。
デザインのプロが選定する「グッドデザイン賞」とは
グッドデザイン賞とは、デザインの優劣を競うものではなく、デザインによって、私たちの暮らしや社会をよりよくしていくための活動を意味します。1957年の創立以来、日本で唯一の総合的なデザイン評価・推奨の仕組みとなっています。
グッドデザイン賞を受賞したことを示すシンボルマーク「Gマーク」は、日本国内で広く認知されています。皆さんも目にしたことがあるのではないでしょうか。今年度のテーマ「交意と交響」の下、社会の課題や人々の切実な想いに寄り添う意思を持ち、人々に「あってよかった」との共感を呼び起こすデザインを数多く見出すことができたと感じています。
2022年は、国内外のデザイナーや建築家、専門家など、各分野の一線で活躍している約90名の審査委員による厳正な一次・二次審査を経て、1,560件の「グッドデザイン賞」受賞が決定しました。デザインだけでなく、快適な機能や目新しい工夫、環境への配慮なども審査の対象となり、見た目も中身も魅力的な製品がいっぱいです。その中から、注目のグッドデザイン文具を紹介しましょう。
クリップボード
コクヨ
書類がすっきり分けられるクリップホルダー
書類を挟むクリップボードにさまざまな機能をプラスしたこちらのアイテムは、医療や介護など立ち仕事が多い職場での使用を想定し、現場の声を元に作られました。書類の出し入れがしやすい3段ポケットは、立ち仕事をしながら片手で資料の整理が可能。ハーフポケットでは、衣類のポケットに詰め込まれがちな文具や小物類が一時保管ができるようになっています。立って書類を書くという基本機能に加え、書類や小物の整理まで行える点が大きな魅力で、「ワークスペースを持ち運ぶ」というコンセプトを見事に体現しています。
ボード中央の窪みに指を引っ掛けると開いた状態でもしっかり持て、指をかけてない時はペンホルダーにできるという無駄のなさ。そのほか、出し入れがしやすい斜めスリットのポケットや、目の疲労を考慮して透明度を調整した透明シートの採用など、使う人への配慮が徹底された丁寧なものづくりも受賞の決め手となりました。
クレヨン
スカパーJSAT
海のクレヨン
世界中の海の衛星写真の中から12枚を選び、その色をクレヨン職人が1本1本忠実に再現。「青」や「紺」などの色名ではなく、海の場所を示す経度緯度で表したのが「海のクレヨン」です。
パッケージの蓋は二重になっていて、1枚目を開けると、クレヨンの色が海の色に由来していることがわかる仕掛けに。パッケージの中蓋の裏にあるQRコードを読み込むと、音声解説付きの専用サイトにつながり、海の色の理由や場所の解説、地球の神秘や環境問題などを学ぶことができます。クレヨンがきっかけで世界の海を知るなんて、なんだかロマンがありますね。
これらのコンセプトやデザイン、コミュニケーション手法が各方面で注目され、世界三大デザイン賞「レッドドット・デザイン賞」を始めさまざまな賞を受賞しました。グッドデザイン賞では「色の多様さを知るという一連の体験がよく考えられている。海=青という先入観をなくし、色に対する感受性を高めるプロダクト」として高く評価されています。
原材料は天然由来成分のみ。売上の一部は、海面上昇の危機に直面しているキリバス共和国に寄付されます。
カッター
大創産業
段ボールサイズ調整カッター
フリマアプリの普及で、発送や梱包作業が身近になりました。「段ボールサイズ調整カッター」は、そんな梱包時の困りごとをサポートしてくれる便利なアイテム。段ボールに真っ直ぐ切れ込みを入れられる仕組みで、箱の容積を手軽に小さくでき、しかもきれいに仕上げられます。
使う際は、折り目をつけたい高さに合わせ、段ボールのフチにガイドを沿わせながらスライドさせて、刃で切り込みを入れるだけ。あとはカッターナイフで4隅にスリットを入れ、切り込みの高さで内側に折り曲げれば、段ボールをコンパクトにできます。
段ボールをサイズダウンさせることで宅配料金が節約できるほか、ぴったりサイズの段ボールを買い足す必要もなく、家にある空箱を有効活用できます。審査でもその点が注目され「コンパクトな梱包による発送コストの削減・段ボールのリユースによる活用など、経済面と環境面の視点においても優れた製品である」と評価。100円ショップで手軽に買える点も受賞のポイントになりました。
下敷き
レイメイ藤井
先生おすすめ 魔法のザラザラ下じき
文字をきれいに整えて書くには、鉛筆を思った通りに動かす“運筆力”が必要になります。手指の筋力・骨格の発達が十分でない子供の運筆力を育て、文字の乱れや筆圧の改善に役立つのが「魔法のザラザラ下じき」。表面に施した特殊印刷によるドット加工がザラザラという振動となって手指に伝わる事で、頭でイメージした文字と手の動きが一致し、文字が上手に書けるようになるというのがその仕組みです。
従来はなかった新発想のこの下敷きは、専門作業療法士の発案と高い印刷加工技術により完成しました。丸みを帯びたドット形状の採用で安全面に配慮したほか、ドットの大きさやドット間のピッチを細かく調整することで、鉛筆が引っかからずスムーズに動かすことができます。画期的な工夫から、その年の最も優れた文具を表彰する『第31回 日本文具大賞2022』にも選出。グッドデザイン賞ではそれらの取り組みに加え、書くことに対するコンプレックスの低減と学習意欲の向上効果にも期待が寄せられました。
メジャー
デザインフィル
ミドリ スローコンベックスメジャー
テープの部分が金属になっている巻尺は、長い直線や曲線を手際よく測るのに便利ですが、巻き戻る際のスピードが速いものが多く、取り扱いに注意が必要です。この「スローコンベックスメジャー」は、テープがゆっくり戻る新機構を搭載しているため、金属テープのエッジでの怪我を防止するのが大きな特徴です。巻き戻しのスピードは、ゆっくりすぎても煩わしいため、危なくない・煩わしくない絶妙なスピードバランスにこだわったのだとか。
本体背面には保管に便利なマグネットを内蔵しているほか、10cmずつ色が変わって読みやすい目盛り、ロックや巻き戻しが片手でできるワンプッシュ機構など、使い勝手も配慮されました。「こうしたデザインは想定ユーザーのみならず、弱視や片麻痺症者など多様なユーザーにとっても使いやすく、活躍の幅が広いことも魅力である」とは審査委員の評。本体は小さい手でも握りやすいコンパクトサイズで、大人から子どもまで安心して使用できます
ノート
ダイゴー
isshoni. ノート デスク
ありそうでなかったサイズ感の横長ノート「isshoni. 」は、パソコンの手前に置いて使える便利な一冊。在宅勤務が広がり、リモートワークやオンライン会議など、パソコンを前に仕事をする機会が増える中、「会議をしながらノートをとりたい」というニーズ応えて作られました。審査でも「多様な状況において活用できる優れたデザイン」と評価されています。
手帳やノート作りを長年手がけているメーカーの製品だけあって、筆記の快適さや耐久性は抜群。ページ数が豊富なため、たくさんの情報もしっかり書き込めます。ページが大きく開ける“糸かがり製本”で作られているのも特徴で、手で押さえなくてもノートを開いた状態がキープできます。
まとめ
利便性テレワークやフリマアプリなど、世相を反映したものも多く見られた2022年の受賞商品。時代に合った利便性を提供してくれるグッドデザイン文具は、自分で使うのはもちろん、プレゼントにもぴったり。おしゃれで便利で目新しい、粋な贈り物になること間違いなしです。