1万円クラスのエントリーモデルはそれぞれに工夫があって、高級プレーヤーとは異なる個性と魅力が楽しい。ここでは、ION AUDIO「Luxe LP」とオーディオテクニカ「AT-LP60X」をチョイスした。個性的なデザインで、内蔵スピーカーやUSBなどの機能が重宝するうえ、使い方が簡単で音もいい。
本稿は『極上 大人のオーディオ大百科 2023』(マキノ出版)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
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[別記事:【レコード盤の扱い方】プレーヤーにセットするだけではない!再生前の作法・正しい保管方法→]
ION AUDIO「Luxe LP」
実売価格例:1万3300円
▶︎スピーカー内蔵
▶︎カートリッジ:セラミック
▶︎回転数:33⅓・45・78
▶︎USB/Bluetooth
●幅410mm×高さ145mm×奥行き330mm
●3.8kg
内蔵スピーカーのほか、ライン出力やブルートゥース再生もOK
木目調のモダンなボディとグレーの布地が特徴の3スピード対応プレーヤーだ。セラミックカーリッジと2ワット×2の内蔵スピーカーでそのまま再生でき、外部アンプへのライン出力も可能。さらにブルートゥース対応、ヘッドホン端子搭載のオールインワンタイプだ。
単体でも、自宅のコンポにつないでも楽しめるION
1万円クラスのエントリーモデルはそれぞれに工夫があって、高級プレーヤーとは異なる個性と魅力が楽しい。ここでは、ION AUDIOとオーディオテクニカをチョイスした。
ION AUDIOのLuxe LPは、くつろぎながらレコードが聴けるステレオスピーカー内蔵モデルだ。ライン出力も装備しているので、自宅のコンポにつないで聴くこともできる。
また、ブルートゥース搭載だから、レコードの音をワイヤレススピーカーに飛ばしたり、同梱のUSBケーブルを使ってパソコンにレコードの音を転送したりすることも可能だ(パソコンで再生するにはソフトが必要)。
本体はシックな外観で、木目調のボディとグレーの布地が好印象。オートストップ機能を搭載していて、レコードの再生が終わると自動的にプラッターの回転がストップする。
カートリッジは、昔懐かしいセラミックだ。イコライザーに近い周波数特性を持ち、アンプを安くできるのが特徴。MMやMCカートリッジのような発電機構はなく、圧電作用で針の振動が電気信号に変換される仕組みだ。針のみの交換はできず、カートリッジごとの交換になる。
内蔵のステレオスピーカーで聴いて楽しいし、自宅のコンポにつないだ音も、予想以上だ。
オーディオテクニカ「AT-LP60X」
実売価格例:1万1780円
▶︎ベルトドライブ
▶︎カートリッジ:VM型付属
▶︎回転数:33⅓・45
▶︎フォノイコ内蔵
●幅359.5mm×高さ97.5mm×奥行き373.3mm
●2.6kg
ベルトドライブ方式を採用したフルオートの自動再生モデル
初心者でも使いやすいフルオートの自動再生モデル。ベルトドライブ式で、33 1/3、45回転の2スピードに対応。プラッターは、アルミニウム合金ダイキャスト製だ。自社製のVM型(MM型の仲間)カートリッジ付き。フォノイコライザー内蔵で、フォノ出力/ライン出力の選択ができる。
自動再生とマニュアル操作を切り替えられるLP60X
一方、オーディオテクニカのAT-LP60Xは、アナログ初心者向けの自動再生モデル。STARTボタンを押すだけで、レコードの再生/停止を行える手軽さが売りだ。
レコードを乗せ、サイズセレクターでレコードのサイズを選び、回転数を選択。あとは、STARTボタンを押せば、オートマチックにカートリッジがレコードの外周に移動してトレースが始まる。あるいは、アームボタンを押すとトーンアームが浮き上がるので、そのままマニュアル操作で再生することもOKだ。
カートリッジは、同社製のVMタイプが付属し、フォノイコライザーを内蔵している。カートリッジの付け替えはできないが、このクラスなら、カートリッジ交換はしないので問題ないだろう。もちろん、針先は交換可能だ。
その音はかなり本格的で、ズバリ価格帯以上。明るくてクリアなサウンドが楽しめる。
各モデルのインプレッション
▶︎今回聴いた3枚はこれ!
写真左から
●『ヒロミ セレクション』/太田裕美
●『時代』/中島みゆき(EP盤)
●『Hotel California*』/イーグルス
’70年代ロックを代表するイーグルスの名曲「ホテル・カリフォルニア」がどう楽しめるかが興味深い。懐かしい歌謡曲やニューミュージックでは、筆者が好きだった太田裕美のLPから「木綿のハンカチーフ」をかけよう。中島みゆきはヤマハ・ポプコンでグランプリを受賞した「時代」のEP盤だ。
ION AUDIO
Luxe LP
トップパネルの操作部だ。電源オン/オフ、音量調節が可能なほか、ブルートゥースのペアリングボタン、ヘッドホン端子なども装備。
背面にはステレオのライン出力とUSB端子を搭載。同梱のUSBケーブルを使って、手軽にパソコンとつなぐことができる。
『ヒロミ セレクション』
本体スピーカーの音は小さめだが、軽快でポップな再生がゴキゲンだ。ライン出力にすると、ボーカルやバックバンドにリズミカルで力強い表情が出て、ヒロミの甘い声が聴けた。
『時代』
EPドーナツ盤はサウンドが小ぶりだが、音がいい。本体スピーカーとは思えないバランスだ。ライン出力では、若々しく発散するように伸びやか。ギターとバックバンドがよかった。
『Hotel California』
本体スピーカーは量感が控えめながら、気持ちよく広がった。ライン出力ではスケールがアップし、低音とギターのダイナミックさが心地いい。郷愁を誘うロックサウンドだ。
オーディオテクニカ
AT-LP60X
剛性と軽量さを備えたプラッターで、回転もスムーズだ。VMカートリッジのトレース力とサウンド表現を高めてくれる。
操作を前面ボタンで行えるのもスマートだ。STARTボタンとアームボタンで、オート/マニュアル再生がワンタッチで楽しめる。
『ヒロミ セレクション』
VMカートリッジらしい、明るくクリアなサウンドだ。ストリングスやリズムのキレがさわやかで、太田裕美の暖かな声質がナチュラルに聴けた。昭和の懐かしさがよみがえる。
『時代』
45回転盤のドーナツ盤は、高音まで伸びて、音場感豊かだ。「ヤマハ ポプコン」の懐かしさと、中島みゆきの作詞・作曲による個性的サウンドが楽しめる。繊細なギターが印象的だ。
『Hotel California』
1万円台とは思えない、本格感のあるサウンド。レンジや空間情報も十分で、12弦のイントロやツインギターのハモリが聴かせどころだ。ドン・ヘンリーの張りのある声が素晴らしい。
試聴のまとめ
どちらも手軽に扱えて入門者におすすめできる
エントリークラスは、アイデアがおもしろい。Luxe LPはルックスがよく、ターンテーブルらしい個性的なデザインが私好みだ。ステレオスピーカー内蔵やUSB搭載なども、けっこう重宝する。
AT-LP60Xは、自動再生機能の完成度が高く、使い方が簡単で、音もいい。どちらのモデルも手軽に楽しめるので、まずは気軽に始めたいという入門者におすすめだ。
■解説/林正儀(AV評論家)
※情報は記事作成時のものです。
※この記事は『極上 大人のオーディオ大百科 2023』(マキノ出版)に掲載されています。