〈キヤノン EOS 10〉実写レビュー 初心者・中級者向け 高いAF&連写性能の軽快ミラーレスカメラ

レビュー

キヤノン製レンズ交換式カメラの主力シリーズになってきた「EOS Rシステム」。2018年10月発売の「EOS R」を皮切りに、これまでは35ミリ判フルサイズの機種が発売されてきました。しかし、今年の6月に初のAPS-Cサイズ機「EOS R7」が発売され、翌7月には下位モデル「EOS R10」が発売されました。どちらも注目に値する製品ですが、今回はエントリーユーザーにも訴求できる価格や機能を備えたEOS R10の実力を、確かめてみたいと思います。
(※参考価格は、原稿執筆時のものです)

執筆者のプロフィール

吉森信哉(よしもり・しんや)

広島県庄原市生まれ。地元の県立高校卒業後、上京して東京写真専門学校(現・東京ビジュアルアーツ)に入学。卒業後は専門学校時代の仲間と渋谷に自主ギャラリーを開設し、作品の創作と発表活動を行う。カメラメーカー系ギャラリーでも個展を開催。1990年より、カメラ誌などで、撮影・執筆活動を開始。ライフワークは、暮らしの中の花景色、奈良大和路、など。公益社団法人 日本写真家協会会員。カメラグランプリ2022選考委員。

「キヤノン EOS R10」の概要と仕様

「EOS R10」は、本格的な静止画・動画撮影を手軽に楽しめる、ミドルクラスのミラーレスカメラです。「RFレンズ」や新開発のAPS-Cサイズ専用「RF-Sレンズ」に対応し、マウントアダプターの装着で一眼レフ用「EFレンズ」も使用できます。

主な特長には、ミドルクラスのモデルに相応しい、高いAF機能や連写性能や、新開発CMOSセンサーと映像エンジン「DIGIC X」による高画質の実現(約3250万画素のEOS 90DやEOS M6 Mark IIと同等の解像性能)、などが挙げられます。

また、エントリークラスに入れても違和感がない小型軽量な軽快ボディや、EOS Rシリーズで初めて内蔵ストロボを搭載、なども特長に挙げられるでしょう。

●形式:デジタル一眼ノンレフレックスAF・AEカメラ
●レンズマウント:キヤノンRFマウント
●撮像素子:APS-Cサイズ CMOSセンサー、有効画素数:最大2420万画素
●ISO感度(静止画撮影):100~51200(※拡張含む)
●手ブレ補正:レンズ搭載機能に依存(ボディー非搭載)
●記録媒体:SD/SDHC/SDXCメモリーカード(UHS-I、UHS-II対応)
●ファインダー:OLEDカラー電子ビューファインダー、約236万ドット
●シャッタースピード:メカシャッター/電子先幕設定時:1/4000~30秒、バルブ 電子シャッター設定時:1/16000秒~30秒、バルブ
●連続撮影速度:高速連続撮影+:最高約15コマ/秒(メカシャッター、電子先幕)、最高約23コマ/秒(電子シャッター) 高速連続撮影:最高約6.3コマ/秒(メカシャッター)、最高約7.7コマ/秒(電子先幕)、最高約15コマ/秒(電子シャッター) 低速連続撮影:最高約3.0コマ/秒(メカシャッター、電子先幕、電子シャッター)
●AF:デュアルピクセルCMOS AF
●モニター:3.0型(画面比率3:2) バリアングル式 TFT式カラー液晶モニター、約104万ドット
●動画記録サイズ/フレームレート:4K UHD:3840×2160(29.97fpsなど)、フルHD(ハイフレームレート動画):1920×1080(119.88fpsなど)、フルHD:1920×1080(59.94fpsなど)
●使用電池:LP-E17(使用個数:1個)
●寸法:約122.5mm(幅)x87.8mm(高)x83.4mm(奥行)
●質量:約429g(バッテリー、カードを含む) 約382g(本体のみ)
●発売日:2022年7月28日
●ボディ参考価格(大手家電量販店):13万2000円

商品構成

高倍率ズームレンズキットがおすすめ!

現在のところ(※執筆時)、EOS R10の商品構成は3種類です。

「EOS R10」は、EOS R10本体、バッテリーチャージャー LC-E17、バッテリーパック LP-E17、ストラップ ER-EOSR10、シューカバー ER-SC2。以上の品々を同梱。

これに標準ズームレンズRF-S 18-45mm F4.5-6.3 IS STMを同梱するのが「EOS R10・RF-S18-45 IS STM レンズキット」。

高倍率ズームレンズRF-S 18-150mm F3.5-6.3 IS STMを同梱するのが「EOS R10・RF-S18-150 IS STM レンズキット」です。

すでにRFレンズを所有している人なら「EOS R10」だけを購入する方法もありますし、「EOS R10」と単体のRFレンズを一緒に購入する方法もあります。

ですが、APS-Cサイズ専用レンズを同梱する「EOS R10・RF-S18-45 IS STM レンズキット」か「EOS R10・RF-S18-150 IS STM レンズキット」を購入するのが、実用的かつ経済的な選択と言えるでしょう。

大手家電量販店のサイトで「EOS R10・RF-S18-45 IS STM レンズキット」と「EOS R10・RF-S18-150 IS STM レンズキット」の販売価格を調べてみました。その結果、後者の方が3万3000円ほど高価でした。しかし、1本のレンズで29mm相当の広角域から240mm相当の本格望遠域までカバーできるのは、かなり魅力的です。なにしろ、現在のRFレンズラインナップには、APS-Cサイズ機に相応しい手頃な望遠ズームレンズが見当たらないのですから。

標準ズームレンズ同梱の「EOS R10・RF-S18-45 IS STM レンズキット」の組み合わせ。大手家電量販店の参考価格は14万8500円。

高倍率ズームレンズ同梱の「EOS R10・RF-S18-150 IS STM レンズキット」の組み合わせ。大手家電量販店の参考価格は18万1500円。

高倍率ズームなら撮りたい部分がアップで狙える!!

寅さんシリーズで有名な葛飾区柴又で見かけた店。建物の2階窓枠に設置されていたレトロなディスプレイが目に止まった。こういった近づけない被写体も、240mm相当の望遠域までカバーする高倍率ズームレンズなら、思い通りの大きさに写せる。
キヤノン EOS R10 RF-S 18-150mm F3.5-6.3 IS STM(150mmで撮影) 絞り優先オート F8 1/320秒 WB:オート ISO800

操作性と使用感

小型軽量でもホールド性や操作性は上々

「EOS R10」は、ミラーレスカメラのミドルクラスモデルにカテゴライズされていますが、そのサイズや重さはエントリークラス並です。同じミドルクラスの上位モデル「EOS R7」と比べると、幅は10mm近く小さく、重さは150g近く軽量です。また、一眼レフのエントリーモデル「EOS Kiss X10i」と比べても、奥行以外のサイズはEOS R10の方が小さく、重さに関してもEOS R10の方が約86g軽くなっています。

こういった小型軽量モデルの場合、ホールド性に関しては、あまり考慮されていない事が多いもの。ですが、この「EOS R10」は大きめのグリップを備えているので、手にした(右手で握った)際の安定感が良好です。これなら、高倍率ズームのRF-S 18-150mm F3.5-6.3 IS STMよりも大柄で重いレンズを装着しても、安定した撮影が行えるでしょう。

小型軽量モデルの場合、サイズやフォルムの関係上、操作ダイヤルやボタンが簡略化される事が多々あります。そうなると、直感的かつ迅速な操作が難しくなります。しかし、この「EOS R10」は、グリップ上部にメイン電子ダイヤル、トップカバーの背面寄りにはサブ電子ダイヤルを装備。また、AFフレームを迅速に移動できるマルチコントローラー(ジョイスティックと呼ぶ人もいます)も装備しています。ですから、多くの小型軽量なエントリーモデルで実感するような、操作上の不満は感じにくいはずです。

歴代のEOSシリーズでは、背面に配置されるサブ電子ダイヤルが特徴的な操作パーツ。しかし、本製品のサブ電子ダイヤルは上面のモードダイヤルの近く(背面寄り)に配置。好みや慣れで評価は変わるだろうが、個人的にはこちらの方が操作しやすい。

液晶モニター上の撮影情報表示。このあたりのスタイルは、EOS Rシリーズの上位モデルと変わらない。

注目機能(1)被写体検出AFに対応

近年、新型カメラのトレンド機能になっているのが、AI技術を活用した「被写体検出AF」です。人物の顔や瞳だけでなく、自動的に動物や乗り物などを検出して、その部分にピントを合わせてくれるのです。

ただし、この機能が搭載されているのは、フラッグシップモデルやミドルクラスのスタンダードモデル以上にとどまっています(今後は下位モデルにも搭載されるでしょうが)。

そんな状況下にあって、ミドルクラスながらエントリーモデルに近い使用感の「EOS R10」に、いち早く被写体検出AF機能が搭載されたのは高く評価できます。なお、人物以外に検出できる被写体も、動物(犬、猫、鳥)、乗り物(モータースポーツの四輪車/二輪車)と、上位モデルのEOS R3やEOS R7と同じ仕様になっています。

今回の撮影では、動物園でいろんな動物で「被写体検出AF」を試してみました。その結果、多くの被写体や状況で、問題なく被写体検出されて、的確なピント合わせが行えました。私はこれまでに、EOS R6やEOS R3を実写した経験があります。その際に「EOS Rシリーズの被写体検出AFは優秀だなぁ」と感じました。今回のEOS R10にも、それと同様の印象を持ちました。

通常のメニューからも設定できるが、クイック設定/設定ボタンを押すと、画面上に各種の機能項目が一覧表示される。その中の「検出する被写体」の項目で、被写体検出の有無や種類を設定する。

金網にかなり接近しているので、AFフレーム選択がカメラ任せでも、その部分にピントが合う事はなさそう。とはいえ、手前に張り出した翼部分にピントが合う可能性はある。そうすると、頭部(特に目)が微妙にピンボケになる恐れがある。だが、検出する被写体を「動物優先」に設定したので、思い通りのピント位置で撮影できた。
キヤノン EOS R10 RF-S 18-150mm F3.5-6.3 IS STM(150mmで撮影) シャッター優先オート F6.3 1/500秒 WB:オート ISO2000

撮影後に再生チェックをすると、AFフレームがワシの瞳部分をしっかりと捉えているのが確認できる(再生情報表示設定でAFフレーム表示をするの設定で)。

注目機能(2)上位モデル並の高速連写性能

一般的に、カメラの上位モデルと下位モデルとでは、連写性能に差が出てきます。上位モデルほど高速で連写できて、動く被写体の変化をきめ細かく記録(撮影)できるのです。たとえば、EOS Rシリーズのフルサイズ機。下位モデルのEOS RPは「最高約5.0コマ/秒」でが、上位モデルのEOS R5やEOS R6は「最高約20コマ/秒・最高約12コマ/秒」なのです(前者は電子シャッター時、後者はメカおよび電子先幕シャッター時。以下同様)。

ところが、APS-Cサイズ機の下位モデル(EOS R7に対して)のEOS R10は「最高約23コマ/秒・最高約15コマ/秒」。EOS Rシリーズの最下位モデルながら、フルサイズの上位モデルを凌ぐ高速連写が可能なのです。だから、ワンランク上のカメラの感覚で連写が楽しめるのです。

ただし、上位モデルと比べると連続撮影可能枚数(その速度を維持しながら止まらず撮影できる枚数)はそう多くありません。ですから、高速連写を行う際には、ここぞというタイミングを見計らって、ピンポイント的に撮影すると良いでしょう。ちなみに、モニターやファインダー上に表示される撮影可能枚数(目安)は、画質設定「RAW+L」で13枚、画質設定「L」では36枚、となっていました。

「最高約23コマ/秒」の高速連写

吊り橋を走り抜けるワオキツネザルを、電子シャッターによる最高約23コマ/秒の「高速連続撮影+」で連続的に捉える(上段左→上段右→下段左→下段右)。素早い足さばきの変化が、きめ細かく記録できた。

上の連写(RAW+Lで合計13枚)の中からの抜粋。躍動感を重視するため、後ろ足が大きく跳ね上がった瞬間のカットをセレクトした。電子シャッターの場合、被写体や撮影状況によっては、動体歪みが発生する事もある。だが、多くの動物撮影では気になる事は少ないだろう。
キヤノン EOS R10 RF-S 18-150mm F3.5-6.3 IS STM(150mmで撮影) シャッター優先オート F7.1 1/1000秒 WB:オート ISO4000

注目機能(3)シャッターを切る前が写せる「RAWバーストモード」

シャッターを切った瞬間とそれ以降だけでなく、切る直前の瞬間が記録できる。そんな“決定的な一瞬”が捉えられる機能を持つカメラが、いくつかのメーカーから発売されています。オリンパス/OM SYSTEM「プロキャプチャーモード」、ニコン「プリキャプチャ機能」、パナソニック「プリ連写機能」、富士フイルム「プリ撮影」。これらのメーカーの機能です。

キヤノンでは「RAWバーストモード」がその機能に該当し、シャッターボタンを切る瞬間の約0.5秒前から記録される「プリ撮影」が可能になります(シャッターボタン半押しの待機が必要)。この機能によって、鳥や昆虫などが飛び立つ場面など、予測が難しい瞬間を捉える事ができるのです。

このモードでは、撮影データがRAWで記録されるので、再生の静止画切り出し操作時に、任意の画像形式(JPEG、HEIF、RAW)で切り出し・保存ができます。また、[JPEGで切り出し]か[HEIFで切り出し]を選んだ後に[編集して保存]を選択すれば、RAW現像を行ってから保存することもできます。

「RAWバーストモード」は、静止画撮影メニュー6から設定。シャッターボタンを切る瞬間の約0.5秒前から記録するには「プリ撮影」も「する」に設定しておく必要がある。

シャッターを切った瞬間

花壇のペンタスの花に止まっていたいた蝶(クロボシセセリ)が飛び立つ瞬間を撮りたいと思った。しかし、人間やカメラのタイムラグにより、シャッターが切れた瞬間には、花から離れた位置まで飛んでしまっていた。

「RAWバーストモード+プリ撮影」で遡った瞬間

こちらは、RAWバーストモードのプリ撮影により、シャッターを切った瞬間の前に遡って切り出した画像。RAWバーストモードは電子シャッターでの撮影になり「最高約30コマ/秒」の高速連写ができるので、こういった絶妙な瞬間も捉えやすい。
キヤノン EOS R10 RF-S 18-150mm F3.5-6.3 IS STM(150mmで撮影) シャッター優先オート F6.3 1/1000秒 WB:オート ISO1250 RAWバーストモード使用

まとめ

ビギナーから動体派まで、幅広いユーザーに訴求するお買い得モデル

今回取り上げた「キヤノン EOS R10」は、エントリークラスに近い見た目(デザイン、サイズ、重さ)で、全自動の「シーンインテリジェントオート」モード時に、直感的な操作で希望の仕上がりが得られる「クリエイティブアシスト」機能などを搭載しています。

「シーンインテリジェントオート」モード時にSETボタン押して、クリエイティブアシストの効果を選択する画面を表示。その中から「色あい1」を選択し、画面タッチ操作で好みの色調に調整。

「クリエイティブアシスト」で暖かみのある色調に

柴又駅から柴又帝釈天に続く参道にて。風情のある提灯が並ぶ店の軒先を、高倍率ズームの望遠域で切り取る。全自動のままでも悪くない写りだったが、さらに暖かみのある色調に仕上げたい。そのため、クリエイティブアシストの「色あい1」を選択し、タッチ操作でアンバー側上限に調整した。
キヤノン EOS R10 RF-S 18-150mm F3.5-6.3 IS STM(150mmで撮影) プログラムオート F7.1 1/500秒 WB:オート ISO3200

しかし、被写体検出AFや最高約23コマ/秒の高速連写など、ハイレベルな動体撮影に活用したくなるような機能・仕様も備えています。そのため、レンズ交換式カメラを初めて使う人から、動物や乗り物などの動体撮影に精通している人まで、幅広い層におすすめできるモデルに仕上がっています。

同じAPS-Cサイズの上位モデル「EOS R7」との価格差は約7万(大手家電量販店の実売価格を参照)。その差をどう感じるかは人によって違うでしょうが、できるだけ出費を抑えながら快適な動体撮影を楽しみたい! という人には、この「キヤノン EOS R10」はとても魅力的なモデルと言えるでしょう。

「キヤノン EOS R10+RF-S 18-150mm F3.5-6.3 IS STM」。今回、上野動物園の動物たちや、葛飾柴又のレトロな街並散策など、いろんな撮影場所や撮影スタイルで、軽快かつ快適に使えたセットである。

撮影・文/吉森信哉

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