【パーキンソン病の音楽療法】聴くだけでも歩行障害が良くなる特殊音源を大公開!症状改善の「伸びしろ」は音リズムにあり

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パーキンソン病の治療の中心は薬物療法ですが、補助的に大きな役割を果たすのがリハビリテーションです。薬物療法の効果に加えてリハビリテーションを行うことで、パーキンソン病には症状がまだよくなる、さらによくなる「伸びしろ」があります。音楽療法は、歩行障害に対するリハビリテーションで有効な方法のひとつとしても注目されています。今回はパーキンソン病の歩行障害に効果のある音楽療法について、順天堂大学名誉教授、順天堂大学大学院医学研究科脳神経内科特任教授の林明人先生に解説していただきました。

解説者のプロフィール

林 明人(はやし・あきと)

順天堂大学名誉教授、順天堂大学大学院医学研究科脳神経内科特任教授。医学博士。1956年、鹿児島県国分市(現・霧島市)生まれ。1981年、順天堂大学医学部を卒業後、同大学医学部脳神経内科入局。米国ウィスコンシン州立大学神経内科准教授、米国ワイズマンリサーチセンター客員研究員、筑波大学医学部臨床医学系神経内科講師などを経て、2008 年、順天堂大学医学部附属病院浦安病院リハビリテーション科教授・科長、同大学大学院リハビリテーション医学教授、同大学大学院医学部脳神経内科教授に就任。
2022年3月退官。2022年4月より現職。日本神経学会専門医・指導医。日本リハビリテーション医学会リハビリテーション認定医・専門医・指導医。日本内科学会認定医、日本臨床神経生理学会脳波・筋電図専門医・指導医。
専門分野は、神経内科学、リハビリテーション医学、臨床神経生理学、パーキンソン病、不随意運動、ジストニア、ボツリヌス治療。
所属学会は、日本リハビリテーション医学会代議員、日本神経治療学会功労会員、日本運動障害研究会会長。 日本音楽医療研究会世話人、日本神経疾患音楽療法世話人・幹事、日本パーキンソン病・運動障害疾患学会(MDSJ)評議員、日本神経学会パーキンソン病治療ガイドライン 2011/パーキンソン病診療ガイドライン2018作成委員。

本稿は『パーキンソン病の歩行障害がよくなる音楽療法 特殊音源CD2枚付き 』(マキノ出版)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。

パーキンソン病とは

早期診断、適切な治療で症状をコントロールできる

パーキンソン病は、進行性の神経変性疾患(脳や脊髄の特定の神経細胞群が変性していく病気)のひとつです。手のふるえや歩行障害などの運動症状のほか、便秘や抑うつなどの非運動症状が現れます。

原因は完全には解明されていませんが、脳内の神経伝達物質であるドパミンの減少により発症することがわかっています。
多くの場合、高齢者に発症し、70~80歳代では100人に3人と罹患率が高くなります。現在、国内の患者数は15~20万人と推計されます。

パーキンソン病は、「特定疾患」として国が認定する神経難病のひとつであり、かつては「体が動かなくなる怖い病気」とされていました。

しかし、近年の薬の開発や治療技術の向上は目覚ましく、早期から診断し、適切な治療をはじめて症状をコントロールすることにより、患者さんは健康に近い状態で日常生活を送ることができるようになっています。

新薬の開発は現在も活発に進められ、将来的にはよりよい症状のコントロールも可能になってくるでしょう。難病だからと落胆せずにあきらめないで、明るく前向きな気持ちで病気とつきあっていくことが大切です。

症状がよくなる「伸びしろ」がある!

パーキンソン病に対しては、「トータルマネージメント」という考え方がとても重要です。
パーキンソン病の治療には薬物療法、手術療法があります。これらにリハビリテーションを含めたトータルマネージメントを初期から後期まで、重症度に応じて適切に行うことにより、症状のさらなる改善やADL(日常生活の動作)、QOL(生活の質)の向上が期待できます。

治療の中心は薬物療法ですが、補助的に大きな役割を果たすのがリハビリテーションです。薬物療法の効果に加えてリハビリテーションを行うことで、パーキンソン病には症状がまだよくなる、さらによくなる「伸びしろ」があります。

歩行障害のリハビリの一つ「音楽療法」

音楽やメトロノームのリズムに合わせて歩行訓練を行う

パーキンソン病で現れる症状のなかでも、とりわけ日常生活の支障となるのが運動症状のひとつである歩行障害です。

うまく歩けなくなると、外出できなくなって社会生活を制限せざるを得ません。また、屋内外で転びやすくなり、骨折のリスクが高まるなどQOLの低下を招きます。

薬物療法とともに適切にリハビリテーションを行えば、歩行障害はさらによくなる可能性が医学的にも認められています。音楽療法は、歩行障害に対するリハビリテーションで有効な方法のひとつとしても注目されています。

パーキンソン病の歩行障害には、視覚や聴覚など外部からの刺激があると、今まで歩けなかった人が歩けるようになるという特徴があります。

パーキンソン病では、脳内の歩行リズムの障害があることが知られています。そこで、音楽やメトロノームのリズムに合わせ歩行訓練を行うと改善に有効であることが、これまでにアメリカをはじめとする諸外国から報告されていました。

2022年1月、NHKの情報番組『ガッテン!』で、メトロノームのリズム刺激により、パーキンソン病の歩行障害が改善するしくみについて私が解説したところ、大きな反響を呼びました。

本稿は『パーキンソン病の歩行障害がよくなる音楽療法 特殊音源CD2枚付き 』(マキノ出版)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。

パーキンソン病の歩行障害が良くなる「特殊音源」とは

パーキンソン病の歩行障害が良くなる音楽療法

従来の音楽療法と違い「聴くだけ」でも歩行障害を改善

歩行リズムを取り戻すためには、メトロノームなどの音リズムはとても重要な要素ですが、さらに音楽を組み合わせた音楽療法では、脳内ドパミンの分泌を促進することが知られています。パーキンソン病に対する音楽療法を取り入れることは、日本神経学会でも推奨され、ますます注目を集めています。

本書『パーキンソン病の歩行障害がよくなる音楽療法 特殊音源CD2枚付き 』(マキノ出版)の音楽療法は、これをさらに推し進めた方法です。ねらいは、音リズムを聴くことによる脳内の歩行リズムの正常化にあります。

すなわち、歩行訓練を行わずに、音楽を聴くだけで歩行障害の改善効果を引き出すことを可能にしたという点は、従来の音楽療法とは大きく異なります。

具体的には、クラシックや童謡の旋律にのせて、1分間に120回の音リズムを患者さんに聴いてもらいます。こうして一定のリズムで脳を刺激するだけで、パーキンソン病の患者さんは歩きやすくなり、さらに気分が明るくなるということが研究によって実証されています。

これらの結果は、一定の音リズム刺激によって、パーキンソン病で障害を負った脳内の歩行リズムが回復する可能性を示しています。

音楽を楽しみながらリハビリの意欲を引き出す

私がパーキンソン病に対する音楽療法の研究をスタートさせたのは、今から25年前の1997年にさかのぼります。以後、国際シンポジウム「Science for Music」など国内外の学会で発表したのち、2000年に英語の論文で報告を行いました。

さらに、2001年の「パーキンソン病フォーラム」で研究結果をポスター発表し、第1回パーキンソン病フォーラム・ベストポスター賞を受賞したことから、翌年の同フォーラムでは講演の機会を与えられました。

そこで、パーキンソン病の歩行障害に苦しむ患者さんに広く音楽療法の有効性をお伝えし、実行していただくためのツールとして、2005年に初のCDブック『パーキンソン病に効くCDブック』、2012年に『パーキンソン病に効く音楽療法CDブック』を上梓しました。

今回の『パーキンソン病の歩行障害がよくなる音楽療法 特殊音源CD2枚付き 』は3冊目となります。

音楽療法を楽しみながら長く続けていただくために、今回はCDを2枚付けました。CDに収録された曲は、リズムをつなぐ心地よいメロディによって、純粋に音楽として楽しむことができます。音楽を楽しめると、体の動きがよくなるだけでなく、気持ちも明るくなり、リハビリテーションに対する意欲を引き出すことにもつながります。

『パーキンソン病の歩行障害がよくなる音楽療法 特殊音源CD2枚付き 』の付録のCDは次の2枚です。曲目リストをご紹介しましょう。

パーキンソン病の音楽療法「CD1」

第1部 聴くだけパート
1. ナレーション(1)
(聴くだけパート、リズムは1分間に120回)
2. 交響曲第94番「驚愕」(ハイドン)
3. エリーゼのために(ベートーヴェン)
4. くるみ割り人形「小序曲」(チャイコフスキー)
5. くるみ割り人形「行進曲」(チャイコフスキー)
6. くるみ割り人形「中国の踊り」(チャイコフスキー)
7. カノン(パッヘルベル)
8. ペール・ギュント「朝」(グリーグ)
9. オンブラ・マイ・フ(ヘンデル)
10. ディヴェルティメント17番1楽章(モーツァルト)
11. ノクターン第2番(ショパン)
12. くるみ割り人形「花のワルツ」(チャイコフスキー)
13. スラブ舞曲6番(ドヴォルザーク)
14. ピアノ協奏曲第2番1楽章(ベートーヴェン)
15. 星条旗よ永遠なれ(スーザ)

第2部 歩け歩けパート
16.ナレーション(2)
(歩け歩けパート、リズムは1分間に90回)
17. 交響曲第9番「新世界より」第2楽章(家路)(ドヴォルザーク)
18.荒城の月(滝廉太郎)
19.ナレーション(3)(リズムは1分間に100回)
20. ふるさと(岡野貞一)
21.赤い靴(本居長世)
22. ナレーション(4)(リズムは1分間に110回)
23.トロイカ(ロシア民謡)
24.旧友(カール・タイケ)
25. ナレーション(5)(リズムは1分間に120回)
26. 一週間(ロシア民謡)
27.ワシントン・ポスト(スーザ)

パーキンソン病の音楽療法「CD2」

第1部 聴くだけパート
1 ナレーション(1)「リズムは1分間に120回」
(※11と12にはメトロノームのリズムはなし)
2 クラリネット協奏曲 イ長調 第1楽章(モーツァルト)
3 ピアノ五重奏曲「ます」第4楽章(シューベルト)
4 ピアノ協奏曲第5番「皇帝」第1楽章(ベートーヴェン)
5 「トルコ行進曲」(ベートーヴェン)
6 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」第1楽章(モーツァルト)
7 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」第3楽章(モーツァルト)
8 「G線上のアリア」管弦楽組曲第3番(J・C・バッハ)
9 「子供の情景」第7番「トロイメライ(夢)」(シューマン)
10 「トルコ行進曲」ピアノ・ソナタ第11番(モーツァルト)
11 「スラブ舞曲」第10番(ドヴォルザーク)
12 オペラ「カルメン」前奏曲(ビゼー)
13 「アヴェ・マリア」(グノー)
14 「野ばら」(シューベルト)
15 行進曲「威風堂々」第1番(エルガー)

第2部 歩け歩けパート
16 第2部ナレーション(2)
17 ナレーション(3)「リズムは1分間に90回」
18 「大きな古時計」(H・C・ワーク)
19 交響曲第6番「田園」第1楽章(ベートーヴェン)
20 ナレーション(4)「リズムは1分間に100回」
21 「とおりゃんせ」(童謡)
22 「ラデッキー行進曲」(J・シュトラウス1世)
23 ナレーション(5)「リズムは1分間に110回」
24 「われは海の子」(文部省唱歌)
25 交響曲第9番「合唱」第4楽章(ベートーヴェン)

「CD1」は、今回のために新しく制作しました。
「CD2」は、2005年に上梓した『パーキンソン病に効くCDブック』の付録と同じ曲目です。現在、この本は絶版ですが、CDの評判がとてもよく、「また聴いてみたい」という声も寄せられていたので、本書にも付けることにしました。
2枚のCDとも曲目の構成は、音楽を「聴くだけのパート」と、音楽を「聴きながら歩く練習をするパート」に分けて監修しました。

パーキンソン病の歩行障害がよくなる音楽療法

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また今回は、音楽療法の理解を深めていただくための方法として、解説を動画でも見られる工夫も加えました。短時間で見ることができますのでご覧ください。

パーキンソン動画(ショートバージョン)

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CDの効果を高めるためのポイント

効果を高めるためのポイント

『パーキンソン病の歩行障害がよくなる音楽療法 特殊音源CD2枚付き 』は4つの章で構成されています。

第1章では、パーキンソン病の歩行障害に対するリハビリテーションの重要性や音リズムを重視した音楽療法の効果について説明します。パーキンソン病の治療は薬物療法が中心となりますが、リハビリテーションも大切な役割があります。
第2章では、本書のCDの特徴と効果的な聴き方について、第3章ではパーキンソン病の症状が音楽療法で改善するしくみについて解説しています。

リズム刺激は、パーキンソン病の症状を改善するだけでなく、日常生活を快適に送るツールとしても応用できます。第4章では、家事や運動が楽に行えるようになるリズムの活用法をご紹介します。

CDは今からすぐに聴いていただいてもかまいませんが、CDを聴くことはリハビリテーションの一環です。なぜCDを聴いて歩行障害が改善するのかをしっかり理解しておくことは、効果を引き出すうえで大切なポイントです。第1章から読み進めてからCDを聴くことをおすすめします。

ただし、自分に合ったリズムには個人差があります。
CDの音楽を聴きながら体を動かしてみて、どのリズムの曲がいちばん心地よく感じるかチェックしてください。
遅いと感じれば速いリズムの曲を、速いと感じれば遅いリズムの曲を選ぶといいでしょう。自分でやりやすいリズムを見つけてください。本書のCDを使って、生活や運動のいろいろな場面で音楽とリズムの効果を試してみましょう。

さいごに

私は治療としての音楽、リズムの力に大きな可能性を感じています。音楽を聴き、一定の音リズム刺激を外から入れるだけで脳内の歩行リズムが整い、すくみ足や小刻み歩行などの歩行障害が改善し、患者さんはよりよい日常生活が送れるようになるからです。

歩きやすくなることは、患者さんに喜びや自信をもたらします。喜びや自信は、「もっと歩きたい」「努力すれば、もっとできるかもしれない」という意欲を患者さんから引き出し、リハビリテーションに能動的に取り組む支えとなります。

パーキンソン病の患者さんは、ドパミンの減少により意欲が低下したり、落ち込みがちになったりします。心地よい音楽を聴いてドパミンが増え、気持ちが明るくなれば生きる力も湧いてきます。この音楽療法は、自宅で安全に行うことができます。音楽を楽しみながら取り組んでください。

パーキンソン病の歩行障害がよくなる音楽療法 特殊音源CD2枚付き (単行本)

本稿は『パーキンソン病の歩行障害がよくなる音楽療法 特殊音源CD2枚付き 』(マキノ出版)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。

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