【プロカメラマンが解説】室内運動会の撮影法:マイクロフォーサーズ+RAWがおすすめ!【息子の運動会はまさかの室内】

レビュー

家族撮影用のカメラは、軽くて小さくリーズナブルな「マイクロフォーサーズ」(ミラーレスの共通規格)がおすすめ。筆者はそう考えており、子どもの撮影には「OM SYSTEM」(旧・オリンパス)を多用しています。そして、今回のテーマは運動会。なぜか室内だったので、かなり苦戦したのですが、その撮影方法について、皆さんに解説したいと思います。

 

室内、特に体育館はカメラにとって鬼門

暗くて照明の色が安定しない「室内運動場での撮影」は高難易度

運動会やスポーツ撮影ではシャッター速度優先が定番の撮影モードです。

 

「一般的な子どもの運動会撮影(屋外)」では、筆者は下記のカメラの設定をおすすめしています。

撮影モード:シャッター速度優先(OM SYSTEMではS、メーカーによってはTv)
ISO感度:オート
AFモード:AF-C、あれば被写体検出
ドライブ:高速連写
ホワイトバランス:オート
画質 :JPEG/Fine

 

シャッター速度を1/500秒程度に設定し、簡単なものでもいいので一脚を利用して、できるだけたくさんシャッターを切ることをおすすめしています。最近のカメラは高性能なので、光量が十分な屋外であれば、これだけでかなりいい感じで撮影が可能です。

今回メインで使用した「M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II」。

 

また、レンズについては、運動会では席が指定されていることも多く、撮影用のスペースは観覧席よりも後ということも多いので、35mm判400mm相当以上の超望遠をおすすめします。OM SYSTEMのようなマイクロフォーサーズだと200mmで35mm判の400mm相当となるので、望遠撮影に強く、レンズも軽くてコンパクト、しかもリーズナブルなので、子どもの撮影にはとてもおすすめです。

 

ただし、屋内運動場や体育館での運動会となると、圧倒的に明るさが足りず、照明の色が特殊なことも多いので、定番どおりの撮影では、苦戦することが多いのです。今回は、そんな室内での運動会撮影について解説します。

 

参考過去記事:「マイクロフォーサーズ」について

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残念ながら「暗いとすべての性能が落ちる」

ISOオートの上限を変更し、シャッター速度を細かく変更する

屋内運動場ではシャッター速度を1/200秒まで落としてもISO感度は25600でした。※掲載写真はRAW現像処理時にデジタルテレコン相当などにトリミングしています。

 

ざっくりした言い方ですが、カメラは暗い場所で撮影すると、基本的にすべての性能がダウンします。AF速度や画質、ぶれの発生など、人間の目ではさほど暗いと感じない室内運動場や体育館でも、一般的な撮影モードでは、劇的にシャッター速度が低下するのがわかるでしょう。これによって写真がぶれます。

 

のぶれを防ぐために、シャッター速度優先(S)を選択します。しかし、カメラや設定によっては、室内での望遠撮影では1/500秒といったシャッター速度を選択すると、「ISO感度の上限を超えている」という合図が出ることがあります。

こういったときは、OM SYSTEMの場合「ISO感度オート上限/基準値」を変更して、ISOオートで選択可能なISO感度の上限値を変更しましょう。

 

ISO感度オートで自動設定する感度の幅を決める設定項目です。

 

ただし、高ISO感度を使用すると、ノイズが発生して画質が低下するという弱点があります。これはすべてのカメラで発生する問題なのですが、一般的に撮像素子(撮影用のセンサー)のサイズが小さいほど荒れやすい傾向があります。スマートフォンやコンパクトデジカメに比べると撮像素子の大きなマイクロフォーサーズですが、レンズ交換式のカメラの中では高ISO感度ノイズに弱いとされているので、注意したいポイントです。

 

子どもが動いているときと止まっているときでシャッタースピードを変更

一脚や三脚を使ってカメラのぶれを防いでも、走っている子どものぶれは防げないので、激しく動いているときと、お遊戯などである程度の子どもが止まっているときによって、シャッター速度を変化させるといった画質低下への対策が必要になります。

 

また、体育館の照明の下でホワイトバランス(WB)をいつもどおりオートとしたままで撮影すると、発色が非常に悪いことがあります。これは場所にもよりますが、水銀灯といった特殊な照明が使われていることの影響です。これには、とりあえず撮影してみて、選択可能なWBのなかで見た目でベターなものを選択して対処しましょう。

 

屋内での運動会やスポーツの撮影では後処理も考慮して「RAW(ロウ)」をプラス

JPEGだけでは補正できない修正やPhotoshopなどでの後処理が可能

OM SYSTEMカメラユーザーなら無料で入手できる「OM Workspace」。

 

おそらくほとんどの方が、普段の撮影ではJPEGを選択していると思います。屋外の撮影でカメラのオートに多くを任せておけば、最近のカメラでは、筆者もJPEGで十分だと思っています。ただし、屋内の運動会撮影では、これにプラスしてRAWも撮影しておくことがおすすめです。

 

「RAW」を厳密に解説すると非常に難解になるので、ざっくり言えば、後処理がしやすい画像ファイルの形式です。そのため、OM SYSTEMの専用アプリである「OM Workspace」や、Photoshopの「Camera Raw」などを使って、AIを利用したノイズ軽減処理を行うこともできます

1200mm相当の超望遠でISO 32000で撮影後、RAW現像処理を行いました。

劇的な効果が得られることも珍しくないRAW撮影

カメラではほぼリアルタイムで行っているノイズ低減処理をパソコンでAIを利用して、1枚ずつ丁寧に処理できるため、劇的な効果が得られることも珍しくありません。今後のAIやアプリの進歩で、同じRAW画像データを、より美しく処理できる可能性が高いのも大きな魅力といえるでしょう。

 

運動会といった大切な記憶のシーンは、画質モードを「JPEG+RAW」としてRAWの画像データも保存しておくのはおすすめの方法です。ただし、画像データの容量が大きくなるので、大容量のメモリーカードを用意したり、予備を用意したりといった準備もしておくことが大切になります。

 

「OM-3」と「M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II」の組み合わせで約1kgです。

 

今回の撮影はOM SYSTEMの「OM-3」と「M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II」をメインに、「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3」を使って撮影しました。

暗い屋内問題を解決するには、高価で明るい望遠レンズを使うのがもっとも簡単な解決方法です。しかし、今回は実勢価格が4万円台の「M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II」をメインに使っています。

 

理由は、軽くて、コンパクトで、そしてリーズナブルなため、家族や子どもの撮影にぴったりだと筆者が考えているマイクロフォーサーズのOM SYSTEMで、どこまで撮影できるのかを実感してほしかったからです。

真剣な息子の表情をファインダー越しに眺めていると、親としては感無量

筆者は、運動会で自分の子どもを撮影する際には、その時の表情がわかるほどのアップを基本にしています。そのため、デジタルテレコンも併用して「M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II」で35mm判換算で1200mm相当のアップでの撮影も行っています。真剣な息子の表情をファインダー越しに眺めていると、親としては感無量の時間です。楽しい。

真剣な表情の息子の写真をずっと残しておきたいものです。

 

こんな超望遠撮影が「OM-3」+「M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II」で1kgを切る重量で実現できるのも、マイクロフォーサーズであるOM SYSTEMだからこそといえます。

 

まとめ:スマホのカメラも高性能化しているけれど、より良い写真を取るなら一眼レフ

スマートフォンのカメラ機能が高性能化したことも大きな要因でしょう。ですが最近、運動会でもレンズ交換式のカメラの数が減っているように感じるのは、35mm判フルサイズに代表されるカメラとレンズが、ちょっと家庭で子どもを撮影におすすめするには高価になりすぎたことも大きな要因でしょう。

 

その点、軽量コンパクトでリーズナブルなマイクロフォーサーズのOM SYSTEMは、レンズ交換式カメラならではの高性能を十分に実感できる、現実的な選択肢だと思います。“35mm判フルサイズのカメラが高すぎる”とレンズ交換式のカメラを諦める前に、マイクロフォーサーズという選択肢も検討してみてはどうでしょうか。

 

また、すでにレンズ交換式カメラをお持ちの方は、「ISO感度オート上限/基準値」などの設定を変更したり、デジタルテレコン(デジタルズーム)を試したり、いままで使っていないRAW現像などを試してみることをおすすめします。効果を実感できると思いますよ。

 

OM SYSTEM公式サイト

 

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齋藤千歳(フォトグラファーライター)

元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータを元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラアクセサリー、車中泊・キャンピングカーグッズなどの記事も執筆。現在はキャンピングカーを「方丈号」と名付け、約9㎡の仕事部屋として、車内で撮影や執筆・レビューなどを行っている。

齋藤千歳(フォトグラファーライター)をフォローする
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