スマホやパソコンを使いすぎると手首が痛んだ経験はないでしょうか?病院で「腱鞘炎」と診断され、湿布をもらったり、痛み止めの注射をしてもらってもなかなか治らずに苦労した人も少なくないでしょう。しかし正しいセルフケアを行えば、自分で改善することができるのです。腱鞘炎の専門家であるアスリートゴリラ鍼灸接骨院院長の高林孝光先生にお話を伺いました。(文/編集部・石島葵)
腱鞘炎がスマホのヘビーユーザーに急増中
かつては、手を酷使する仕事につく料理人や理・美容師などの「職業病」といわれた腱鞘炎。
近年では、若者をはじめ、ビジネスマンや主婦にも症状を訴える人が増え、「国民病」といっても過言ではありません。
なぜ、多くの人が「腱鞘炎」に悩まされるようになったのでしょうか。
そこで、腱鞘炎に詳しい、アスリートゴリラ鍼灸接骨院院長の高林孝光先生に聞いてみました。

高林孝光(たかばやし・たかみつ)
アスリートゴリラ鍼灸接骨院院長。
1978年、東京都生まれ。東京柔道整復専門学校、中央医療学園専門学校卒業。2016年、車イスソフトボール日本代表チーフトレーナー。上肢のケガが最も多い球技スポーツであるバレーボールの同一大会で、異なるチームに帯同して全国2連覇した、日本初のスポーツトレーナー。
腱鞘炎を訴える人が急増した背景には、スマホやパソコンの普及があります。すなわち、スマホやパソコンのやりすぎにより、腱鞘炎になる人が急増しています。
ビジネスマンは仕事でパソコンをよく使い、主婦はパソコンでネットサーフィンやネットショッピング、そして中高生はスマホが生活必需品となっています。
中高生もビジネスマンも主婦も、腱鞘炎の人はみなパソコンやスマホのヘビーユーザーばかりです。
腱鞘炎はどのようなメカニズムで起こる?
そもそも、腱鞘炎とは、どのような病気なのでしょうか。
高林先生に腱鞘炎が起こるメカニズムを解説してもらいました。
腱鞘炎とは、腱をおおう腱鞘に起こる炎症のことで、強い痛みや腫れ、熱感を伴います。
腱は筋肉と骨をつなぐ結合組織で、筋肉の動きを関節に伝えています。
一方の腱鞘はトンネルのような形をしていて、何本もある腱がバラバラにならないように、あるいは腱がスムーズに動くよう固定しています。
つまり、トンネル状の腱鞘の中を腱が通っていて、体を動かすと腱鞘の中を腱が行ったり来たりするのです。
私たちが手の指を動かすときは、指の腱鞘の中を腱が動いています。
通常、腱は腱鞘の中をスムーズに動いています。このときはもちろん、痛みを感じることはありません。
しかし、指を速く動かせばそれだけ腱が腱鞘の中を激しく動き、動かす回数が多ければ腱と腱鞘がこすれ合う回数も多くなります。
こすれ合いすぎると、腱や腱鞘が炎症を起こし、腱は太くなり、腱鞘は内腔が狭くなって動きがスムーズでなくなります。
こうなると余計に腱と腱鞘が強くこすれ合うようになり、炎症が悪化して、ついには指を動かすたびに「痛い!」となります。
これが腱鞘炎です。

腱鞘炎は手首・ひじ・指の大きく3つに分けられる
最近、元AKBメンバーの川崎希さんが、親指が痛む「ドケルバン病」になったというニュースが話題となっていて、私は、初めてその病名を聞き、腱鞘炎には、色々なタイプがあることを知りました。
「腱鞘炎は手に起こることが多く、痛みの元になっている炎症がある部位によって、手首の腱鞘炎、ひじの腱鞘炎、指の腱鞘炎の三つに大きく分けられます。
指の腱鞘炎はバネ指とも呼ばれています。
指の腱鞘炎・バネ指の改善方法の記事は下記を参照↓↓
「指の腱鞘炎・バネ指をマッサージとテーピングで改善する方法」
しかし、腱鞘炎という病気は、病院に行ってもなかなか治りません。
たいていは湿布を出されるか、痛み止めの注射をされるだけ。それでもよくならないと手術をすすめられます。
しかし、手術をしても再発率が高いのが実情です。しかし、腱鞘炎のタイプを見極め、正しいセルフケアを行えば、たった1分で治すことができます。」と、高林先生。
手首の腱鞘炎のセルフケア
ここでは、先生に教えていただいた手首の腱鞘炎のセルフケアをご紹介しましょう。
手首が痛む場合は、手首の腱鞘炎が単体で起こっている場合と、ひじの腱鞘炎が隠れているケースが考えられるそうです。
まずは、ひじの腱鞘炎の有無を調べ、手首単体のものなのか、それとも合併型なのかを判断する必要があります。
ひじの腱鞘炎の有無を見極めにまずは「アイヒホッフテスト」を行いましょう。
「アイヒホッフテスト」のやり方

(1)手の親指を手のひら側に曲げる

(2)親指を隠すように手を握る

(3)ひじを伸ばした状態で手首を小指側に曲げる
高林先生によると、このテストを行って、手首の親指側に痛みが出る場合は、手首の腱鞘炎が単体で起こっている可能性が大とのこと。
さらに、親指を真っすぐ上に向かって伸ばしてみてください。
それで痛む場合は、短母指伸筋(たんぼししんきん)の腱鞘炎と考えられるそうです。
この、短母指伸筋の腱鞘炎に有効なテーピングを特別に教えてもらいました。
なんとたった1分で痛みが和らぐのだそう。
さっそくやり方をご紹介しましょう!
親指を伸展すると痛む腱鞘炎を改善するテーピングのやり方
まず、手首の親指側にあるグリグリ(茎状突起)から親指の第一関節までを、反対の手の親指の腹で10~30秒もみほぐします。

次に、図のような大きさの伸縮性のあるテープを用意します。

A:幅5cm×親指の第一関節から手首までの長さ(一方の端を親指の太さに合わせてカットする)
B:幅5cm×手首1周分の長さ
C:幅2.5cm×親指1周分の長さ

(1)親指を小指側に軽く曲げ、Aのテープを爪の下から手首に向かって少し引っぱりながら貼る

(2)Bのテープの裏の紙を真ん中で破ってはがし、テープの両端を引っぱって伸ばす。
テープの伸びた部分を手首のグリグリにやや強く当て、固定できるよう手首の半周を圧迫するように貼り、半周ははがれない程度に軽く貼る

(3)Aのテープがはがれないように、CのテープをAのテープの先端に巻く
私もやってみた!

伸縮性のあるテープとハサミを用意!

A、B、Cに切り分ける

Aを貼る!

Bの裏紙の真ん中あたりを破って固定しながら貼る!

Bを貼る!

親指にCを巻いて完成!
不器用な私でも一人で巻くことができました!

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まとめ
スマホやパソコンが身近にある私たちには、前回紹介した「ストレートネック」「スマホ老眼」に並び、この手首の腱鞘炎も避けて通れません。
しかし、手首が痛いからといって、仕事や家事があり、使用を控えることが難しい人もいるのではないでしょうか。
今回ご紹介したように、早期に腱鞘炎の種類を見極めて適切なセルフケアを行うことで、症状の進行を遅らせたり、痛みを軽減することができます。
ぜひ、今回の手首の腱鞘炎のセルフケアを参考にしてみてください。
