骨の強さの目安には、骨密度以外にもう一つの指標があります。それが「骨質」です。骨では、古い骨が壊され、新しい骨が作られるという骨の代謝が行われています。糖尿病は、この入れ替え作業に悪影響をもたらします。糖尿病によって高血糖の状態が続くと、その酸化ストレスで骨質が低下します。金沢一平(島根大学医学部内分泌代謝内科講師・糖尿病専門医)

解説者のプロフィール

画像: ビタミンD不足は糖尿病リスクが5倍!どんな食べ物に多く含まれる?

金沢一平(かなざわ・いっぺい)
島根大学医学部内分泌代謝内科講師。同大学医学部附属病院内分泌代謝内科医師。糖尿病専門医、内分泌代謝専門医、動脈硬化専門医、骨粗鬆症認定医、医学博士。2009年、島根大学大学院医学系研究科博士課程修了。2016年より現職。日々の診療のかたわら、内臓脂肪と骨におけるホルモンによる相互作用の研究など、脂肪・骨・糖・血管連関に焦点を当てた新たな学術領域を開拓している。

〝骨の質〟が低下すると糖尿病が悪化する!

糖尿病になると、骨が折れやすくなることをご存じでしょうか。
実は、糖尿病と骨の間には、密接な関連があります。私は、長年、この両者の関係について治療と研究を続けています。

私が診ている糖尿病の患者さんのうち、およそ3割の人は骨折もしています。これは、かなり高い比率です。大学病院のため重症の患者さんが多く、地域的に高齢者も多いという事情があるにせよ、糖尿病になると、骨折もしやすい傾向にあるといえるでしょう。しかも、その骨折の大半は、背骨の椎体部分が潰れる骨折です。

多くの場合、椎体骨折は痛みを伴いません。背骨が潰れているのに、痛くないのです。よく「いつの間にか骨折」という言葉が使われますが、糖尿病になると、これが生じやすくなるのです。

では、なぜ、糖尿病になると骨折が増えるのでしょうか。
骨粗鬆症は、骨密度を測って調べます。実は、糖尿病の人の場合、骨密度はさほど低くありません。糖尿病の患者さんの多くは、過食によって太った人がたくさんいます。その重たい体を支えるため、骨量が増えて、骨密度がアップしているのです。

にもかかわらず、糖尿病の人は骨折しやすいのです。どういうことなのでしょうか。
実は、骨の強さの目安には、骨密度以外にもう一つの指標があります。それが「骨質」です。

骨では、古い骨が壊され、新しい骨が作られるという骨の代謝が行われています。
糖尿病は、この入れ替え作業に悪影響をもたらします。糖尿病によって高血糖の状態が続くと、その酸化ストレスで骨質が低下します。

こうして、骨代謝が円滑に進まなくなると、新しい骨が作られにくくなり、ますます骨質が低下していくのです。

そして、骨質の低下は、糖尿病のさらなる悪化にもつながります。
骨を作る骨芽細胞は、いわゆる「骨ホルモン」と呼ばれる物質を血中へ分泌します。これは、糖や脂肪の代謝促進や動脈硬化の予防・改善など、全身に好影響をもたらすと期待されている、今、大注目の物質です。

糖尿病になると、この骨ホルモンの分泌も悪くなることがわかりました。骨ホルモンを分泌しないマウスでは糖尿病を発症した、という実験結果もあります。
つまり、骨質が低下して骨ホルモンが減ると、さらに糖尿病が悪化するという悪循環が生じてしまうのです。

骨粗鬆症の治療で血糖値が下がった!

糖尿病の人は、治療を進めるとともに、低下した骨質を高めることも非常に重要です。
特に、骨粗鬆症を発症し、骨密度が下がっている人の場合、糖尿病により骨質も低下しやすくなるため、さらに骨折リスクが高まります。

そのうえ、前述した椎体骨折は、そのまま放置すると、連鎖的に骨折が起こることが知られています。痛みを感じないまま、次々と背骨が潰れていくのです。

皆さんも、背中が極端に丸く曲がった高齢者を見かけたことがあるでしょう。そこまで背中が丸くなってしまうのは、椎体骨折が連続して起こったためです。一度潰れた椎体は、元に戻せません。ですから、若いうちから椎体の骨折が起こらないように、積極的に骨を強くしていく努力が必要なのです。

反対に、骨質を高めることは、糖尿病の改善にも役立ちます。骨が強くなれば、骨芽細胞から分泌される骨ホルモンの分泌量も増え、血糖値の降下を促すと考えられます。
つまり、「糖尿病の治療は、骨の治療と両輪で進める必要がある」のです。

画像: 骨粗鬆症の治療で血糖値が下がった!

私の患者さんの例をご紹介しましょう。
60代の女性は、典型的な骨粗鬆症で、椎体も骨折していました。そこで、このかたに活性型ビタミンD製剤などを処方して骨粗鬆症の治療を行ったところ、高くて困っていたという血糖値も下がりました。

また、60代の男性は、糖尿病のために来院しました。このかたの背骨を調べてみると、やはり椎体を骨折していました。しかし、糖尿病の治療を行った結果、血糖値は安定。それ以来、椎体骨折も起こっていません。

では、骨質を高めるためには、どんなことが重要になるでしょうか。
次の項で、具体的な方法をお話ししましょう。

体にとどまりやすいのでとれるときにとっておく

私は、糖尿病の患者さんに、糖尿病の治療を行いながら、日常生活で骨質を高めることをお勧めしています。糖尿病になると、骨折しやすくなります。しかし、反対に、骨を強化すれば、血糖値も安定しやすくなるのです。

では、まず、食事についてお話ししましょう。
骨を強くするために摂取すべき栄養素というと、何を思い浮かべるでしょうか。おそらく、カルシウムを最初に挙げる人が多いのではないでしょうか。

当然、カルシウムも重要ですが、必ず摂取してほしい栄養素があります。それが、「ビタミンD」です。

ビタミンDは脂溶性ビタミンの一つで、免疫力を高めたり、筋肉を強化したりするほか、カルシウムの吸収を助ける働きがあります。

カルシウムだけたくさんとっても、腸からの吸収は十分ではありません。ビタミンDの助けがあってはじめて、カルシウムがスムーズに吸収されるのです。また、ビタミンDには、尿中へのカルシウムの排泄を減らす働きもあります。

さらに、骨を作る骨芽細胞が、前項でご紹介した骨ホルモンをつくり出すためにも、ビタミンDは欠かせません。

ビタミンDは、主に魚介類、キノコ類などの食材に多く含まれています。
例えば、魚介類なら、アンコウの肝シラスイワシサケなどが代表的です。キノコ類なら、キクラゲ干しシイタケなどに多く含まれています。

骨粗鬆症治療におけるビタミンDの1日の摂取量の目安は、1日15〜20μg(国際単位は600〜800IU)です。主な食材のビタミンD含有量は、下図をご覧ください。

■骨を強化するビタミンDの効率的なとり方

ビタミンDが豊富な食材を食べる

画像: ■骨を強化するビタミンDの効率的なとり方

日光浴をする

画像: 日光を浴びると体内にビタミンDが生成される。手のひらや腕の内側だけでも効果的。短時間でもよい。

日光を浴びると体内にビタミンDが生成される。手のひらや腕の内側だけでも効果的。短時間でもよい。

私は患者さんたちに、1日1品、魚料理を食べるようにお勧めしています。シラス干しを小鉢として添えるなど、できる範囲でけっこうです。
別記事>「ビタミンD」特効レシピに、ビタミンDが豊富な食材を使ったレシピをご紹介しているので、そちらも参考にしてください。

ビタミンDは、比較的体内にとどまる時間が長いビタミンです。このため、とれるときは多めにとっておくといいでしょう。最近では、骨強化に役立つヨーグルトなども市販されているので、それらを利用してもかまいません。

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