ぐるぐる整体の大きな利点は、誰でも自分で簡単に行えることです。ただ、ご自分でやっていただくと、どうしても力を入れすぎてしまうのが難点です。そこでひらめいたのが、「綿棒を使う」ことでした。指の代わりに綿棒を使うと、力を入れすぎたときには曲がったり折れたりするので、自然に適切な力になります。【解説】荒木純夫(ぐるぐる整体池袋代表)
解説者のプロフィール
荒木純夫(あらき・すみお)
ぐるぐる整体池袋代表。一指法整体を確立させ、「リピートさせない」を基本方針として、1回のみの施術で健康を取り戻すことを重視。骨格矯正も行っており、姿勢の悩みも改善している。
ぐるぐる刺激は偶然から生まれた
10年前、まさに偶然に、新しい治療法のアイデアがひらめきました。きっかけは、ふとした出来事でした。
自宅で寝ころんで足を組んでくつろいでいて、ふと足を組み替えようとしたそのとき、左足のかかとが、右足のすねの上のほうにポンと当たったのです。その瞬間、右足にビーッと電流のような刺激が走りました。
「今のはなんだ?」と、私は、わけがわからないまま、右手の人さし指をそこに当て、ぐるぐる回してみました。すると、同じように電気が流れたかのような刺激が体中をかけめぐり、右足が軽くなったのです。
ちなみに、このとき、かかとが当たったのは、ひざ痛や足の疲れ、消化器症状などに有効な「足の三里」というツボでした。
私はもともと、プラント建設に携わっており、東欧やアジア地域など世界各地で仕事をしていた当時、少林寺拳法を学ぶ機会があり、その中で「整法」という名前の整体法を習得することになりました。
とはいえ、当時は自分が整体師になることなど考えていませんでしたが、当時から、漠然と世の中の人を助ける仕事をしたいと思っていました。それで、偶然、冒頭の出来事があって整体の道に進んだというわけです。
そこからいろいろ試していくと、人さし指を軽く当ててぐるぐる回すだけで、従来の整体法に劣らないどころか、はるかに優れた効果があるとわかってきました。
そこで、従来の整体法を、次々とこの方法に置き換えていって開発したのが、現在行っている「一指法整体」です。
腰や肩などに人さし指を当ててぐるぐる動かすので「ぐるぐる整体」とも呼んでいます。
ゆがみを正すには強い刺激は逆効果
研究を続けるうちに、この技術があれば、自分自身で人の体を治せるという確信を持ち、現在の整体院を開きました。
「ぐるぐる整体」の特徴は、力を入れずに行うということです。
現代医療でもわかっていることですが、強い力、特に痛みを感じる刺激は、交感神経(心拍数や血圧を上げるなど全身の活動力を高める神経)を優位にします。
すると、血流が悪くなり、筋肉がこわばり、ゆがんだ骨や筋肉のゆがみが正せなくなり、施術には逆効果です。
軽い刺激、特にぐるぐる回す動作で刺激を与えると、筋肉はゆるみます。筋肉がゆるむと、ゆがんだ骨格もあるべき形へと自然に正されて、瞬時に矯正されます。
強い刺激のほうが効果的と思われがちですが、軽い刺激こそが、体を正す秘訣です。
例えば、ぐるぐる整体を首に行うと、足の長さの左右差がそろいます。筋肉がゆるむことで、背骨や骨盤のゆがみが取れるからです。
すると、背すじが伸びてポッコリおなかも正され、若々しい姿勢になります。血行がよくなるので、美肌や小顔効果、発毛効果なども得られます。
これまで、頭痛、ひざ痛、腰痛、座骨神経痛、ギックリ腰、生理痛といった各部の痛みや、めまい、耳鳴り、歯ぎしり、肩こり、便秘、下痢、外反母趾、眼瞼下垂といった不快症状、突発性難聴、うつ病といった病気などに、優れた効果を上げています。
ぐるぐる整体の大きな利点は、誰でも自分で簡単に行えることです。
ただ、ご自分でやっていただくと、どうしても力を入れすぎてしまうのが難点です。
綿棒を使えば誰でもプロの技を再現できる
そこで、またひらめいたのが、「綿棒を使う」ことでした。指の代わりに綿棒を使うと、力を入れすぎたときには曲がったり折れたりするので、自然に適切な力になります。
私は、この方法を「綿棒ぐるぐる刺激」と名づけて皆さんに勧めています。
綿棒だと頼りない感じがするかもしれませんが、そんなことはありません。綿棒を使った刺激こそが、体のゆがみを正すために最も適した力加減なのです。
それに、柄があるので、背中やお尻なども刺激しやすい利点もあります。実際にやってみるとわかりますが、むしろ綿棒のほうが、体の深部まで響く感覚や、多少痛いけれども非常に気持ちいい(痛気持ちいい)感覚を得られます。
実は、私自身も今年の4月から耳のそばで黒板を引っかかれるような高音の耳鳴りに悩まされました。改善するために、首から鎖骨までを中心に綿棒ぐるぐる刺激を行って、今では音はほとんど消えています(やり方は下項)。
この後の項で、基本のやり方と、症状別のやり方も紹介します。
綿棒さえあれば、誰でも簡単に、プロにも負けない効果が得られる「綿棒ぐるぐる刺激」を、ぜひお役立てください。
基本の綿棒ぐるぐる刺激のやり方
ここに挙げる基本の綿棒ぐるぐる刺激だけでも、骨格のずれやゆがみが整い、さまざまな不調が取れます。具体的な症状を改善させたい人は、まず基本の綿棒ぐるぐる刺激を行い、下で紹介する症状別のやり方を行いましょう。
【準備するもの】
綿棒
軸がしっかりとしたものが望ましい。色や形状は問わない。
【綿棒の持ち方】
綿球のきわをつまんで鉛筆のようにして、軸を人さし指に沿わせて持つこと。こうすると綿棒が安定して効果的に刺激できる。
(1) 頭頂部の手のひらぐるぐる
片方の手のひらを頭の上に置く。手のひらの重みがジワッと頭皮に伝わる程度の力加減で、手のひらで軽く小さくぐるぐると円を描くように頭皮を動かす。力を入れすぎないように注意しながら、1秒間に2〜3回ぐるぐると手のひらを回すペースで10秒間行う。
(2) 首の後ろ(頸椎)
写真に示した頸椎(首の骨)のゾーンに、綿棒を当て、深部に響く、痛気持ちいいところを探す。頭をやや上向きにして、1秒に2〜3回ぐるぐるするペースで10秒ほど刺激する。何ヵ所も痛気持ちいいところがあれば、すべてのところで行う。1日に1~3回が目安。
【コツと注意点】
■綿棒を皮膚に軽く当て、位置がずれないようにしながら、直径1cmの小さな円を描くようにぐるぐる回す。
■力を入れすぎないこと。綿棒の先がつぶれたり、変形したりしたら力の入れすぎと考える。
症状別「耳鳴り」を改善する綿棒ぐるぐる刺激
耳鳴りを改善するには、顎関節を刺激してあごのずれを正し、首のこりを取って血流を促すのが基本です。
あごの骨がずれると内耳(耳の奥にある三半規管などの器官の総称)が圧迫されて耳鳴りが起こりやすくなります。首の筋肉のこりで血流が悪くなるのも耳鳴りの大きな原因です。
さらに、鎖骨周辺も刺激すると、耳を含めた頭部の血流がさらによくなるので、よりいっそう耳鳴りの改善・解消に効果的。
これらの方法により、がんこな耳鳴りでも1ヵ月程度で改善されるケースが多くみられます。耳鳴りが片方だけでも、左右同じように行いましょう。
(1) 耳の前(顎関節)
耳の穴のすぐ前にコリコリした軟骨があり、そのすぐ前に、口を開けるとくぼむ場所がある。ここに、口を閉じた状態で軽く綿棒を当ててぐるぐるする。1秒に2〜3回ぐるぐるするペースで、長めに30秒ほど行う。左右で行う。
(2) 首から鎖骨まで
首の側面から鎖骨までを手のひらで上下させてマッサージ。その後に、この範囲〈首の横(広頸筋)から鎖骨周辺にかけて〉で、イタ気持ちよさを感じる部分に綿棒ぐるぐる刺激を行う。逆側の手で持った綿棒を当て、1秒に2〜3回ぐるぐるするペースで10秒ほど行う。左右で行う。
症状別「めまい」を改善する綿棒ぐるぐる刺激
耳の奥には、平衡感覚を司る三半規管という器官があり、めまいを起こしやすい人はここが弱っています。
その原因として多いのが、あごのズレによる内耳(耳の奥の三半規管などの器官の総称)の圧迫です。
そこで、「耳鳴り」の項でも紹介した耳の前の筋肉を綿棒ぐるぐる刺激でほぐして、内耳の圧迫を改善しましょう。
これらに加えて、顔の側面にある咬筋という筋肉のこりからも、内耳の血行が阻害され、めまいが助長されます。そこで、咬筋をほぐすマッサージも行うと、めまい対策としてさらに効果的です。
(1) 耳の前(顎関節)
耳の穴のすぐ前にコリコリした軟骨があり、そのすぐ前に、口を開けるとくぼむ場所がある。ここに、口を閉じた状態で軽く綿棒を当ててぐるぐるする。1秒に2〜3回ぐるぐるするペースで、長めに30秒ほど行う。左右で行う。
(2) 顔の側面(咬筋)
顔の側面に手のひらを当て、軽く上下させてほぐす。1秒に1回上下させるペースで10秒ほど行う。左右で行う。
症状別「腰痛」を改善する綿棒ぐるぐる刺激
腰痛にはいろんな部位の不調が関与します。そのすべてを綿棒ぐるぐる刺激で治すのは困難ですが、もっとも起こりやすい腰痛の原因、「脊柱起立筋(背骨の両側にある筋肉群)のこわばり」を取ることは可能です。
脊柱起立筋は背骨の左右に沿うようにして延びていますが、自分の手が届く骨盤寄りの背骨のつけ根部分を刺激するだけでも十分腰痛を緩和できます。
ここは背骨の土台部分で、そのこりをほぐしてゆがみを取ることで、背骨全体のこわばりが改善します。
この場合のみ、綿棒は基本の持ち方ではなく、下の写真のように垂直に持って行います。
もし時間があれば、お尻の筋肉(大殿筋)もまんべんなく綿棒でほぐすと、腰痛の軽減・解消により効果的です。ギックリ腰も、無理なくできる範囲で行うと回復が促されます。
脊柱起立筋(背骨のつけ根)
【綿棒の持ち方】(脊柱起立筋刺激のみ)
親指と人さし指・中指、薬指で、写真のように綿球のきわをつまんで垂直にしっかり持つ。
腰の左右に手を当てたときに触れるのもっとも高いところ(腸骨稜)から、骨盤の上へりを背中方向にたどっていき、背骨に突き当たる手前付近の、押すと気持ちいいところに綿棒を当て、ぐるぐる刺激を行う。1秒に2〜3回ぐるぐるするペースで、左右各10〜20秒ほど行う。左右で行う。
症状別「ひざ痛」を改善する綿棒ぐるぐる刺激
関節の多くは、体表面からほぐしてこりを取ることができます。しかし、ひざだけは、ひざのお皿(膝蓋骨)があるので、その下のひざ関節に刺激を届かせることができません。
そこで、ひざのお皿をずらすようにして優しく手のひらで回すと、ひざ関節をほぐして刺激の入りやすい状態が作れます。そのうえで、ひざのお皿の周りに綿棒ぐるぐる刺激をすると、ひざ痛の軽減や解消に効果があります。
ひざのお皿の周りへの綿棒ぐるぐる刺激は、慣れてきたら両ひざ同時に行ってもかまいませんが、慣れるまでは利き手で左右のひざをそれぞれ刺激するほうがやりやすいでしょう。
(1) ひざのもみほぐし
安定したイスに座り、右手を右ひざに当て、お皿を手のひらで包む。そのまま軽く回してひざをもみほぐす(内回しでも外回しでもよい)。1秒に1回1周するペースで10〜20秒ほど行う。左右で行う。
(2) ひざの周囲
ひざのお皿の縁に綿棒を当て、お皿の周囲に1ミリ単位くらいでずらしながら綿棒ぐるぐる刺激を入れていく。右足の場合は自分から見て反時計回り、左足は時計回りに、どちらも外側の横から始めて一周する。1秒に2〜3回ぐるぐるするペースで、数秒ずつ刺激しながら移動し、痛みを感じたところは念入りに行う。左右で行う。
症状別「眼瞼下垂、視力低下」を改善する綿棒ぐるぐる刺激
高齢になると、まぶたが垂れ下がる眼瞼下垂や、さまざまな原因による視力低下が起こりやすくなります。そんなとき、予防や回復のサポートに役立つのがこの綿棒ぐるぐる刺激です。
これまでにこの綿棒ぐるぐる刺激により、緑内障の進行が止まった人や、加齢黄斑変性や網膜色素変性症による視力低下が改善した人などがいます。
ほかの原因による視力低下も、食い止めたり、改善したりできる可能性がありますので、眼科の治療と合わせてぜひお試しください。
この方法は、ドライアイの改善や、目元のシワの予防・改善にも効果的です。
目の周囲
目の周囲と鼻の左右の写真に示したゾーンに、少しずつ動かしながら綿棒ぐるぐる刺激を入れていく。まぶたの上や目の縁のやわらかいところは行わない。1秒に2〜3回ぐるぐるするペースで、それぞれの場所を数秒ずつ行う。特に響くところがあれば念入りに。左右で行う。
症状別「歯ぎしり」を改善する綿棒ぐるぐる刺激
自分では気づかないものの、家族などに指摘されることが多い歯ぎしり。その歯ぎしりと深く関係しているのが、あごにある咬筋という筋肉と、側頭部にある側頭筋という筋肉のこりです。
この2つは、ものを嚙む(咀嚼する)ときにあごを動かす筋肉なので、合わせて咀嚼筋ともいわれています。
これらの筋肉のこりを綿棒ぐるぐる刺激でほぐすことで、自然と歯ぎしりをしなくなります。咀嚼筋のこりは頭痛の原因にもなるので、歯ぎしりとともに慢性頭痛に悩んでいるのであれば、この方法で頭痛も解消できるかもしれません。
顔の側面の筋肉
耳の前にあるもみあげの上部から、あごの骨に沿って、少しずつ移動しながらいわゆるエラ(あごの骨のでっぱり)のところまで綿棒ぐるぐる刺激を入れていく。1秒に2〜3回ぐるぐるするペースで、それぞれの場所を数秒ずつ行う。右側は右手で、左側は左手で行うが、慣れたら左右同時に行ってもよい。
症状別「いびき」を改善する綿棒ぐるぐる刺激
いびきの大きな原因は、鼻腔(鼻の中の空気の通り道)が狭くなって起こる空気の振動です。副鼻腔炎(顔の中にある空洞に膿がたまる病気)も鼻づまりを引き起こし、空気を振動させるので、いびきにも繋がります。
そこで、鼻腔を拡げ、副鼻腔炎も改善するために、鼻すじの両わきから左右に拡がる目の下のゾーンを刺激すると効果的です。ここに綿棒ぐるぐる刺激を入れていくと、スーッと鼻が通ってきます。
日頃、気がついたときや寝る前にやっていると、いびきが起こらなくなってきます。先日、私が施術した人は、普段、いびきがひどいご主人にやってみたところ、あまりにも静かに寝ているので、「思わず生存確認をした」とおっしゃっていました。
鼻の横・服鼻腔
鼻すじの両脇からほおまで、少しずつ移動しながら、綿棒ぐるぐる刺激を入れていく。1秒に2〜3回ぐるぐるするペースで、それぞれの場所を数秒ずつ行う。右側は右手で、左側は左手で行うが、慣れたら左右同時に行ってもよい。
症状別「花粉症」を改善する綿棒ぐるぐる刺激
花粉症の鼻詰まりや目のかゆみは、実にうっとうしく不快なものです。そんな症状に悩まされたときに、お勧めの綿棒ぐるぐる刺激がこれです。
花粉症の目のかゆみがつらいと訴えていた人の後頭部に触れると、ここが硬くこわばっていたので、何気なくほぐしたところ、「あっ、目のかゆみが止まった」と言われたことから発見したものです。その後、多くの人に試すと、目のかゆみに即効性があることがわかりました。
これまでの例で言うと、かゆみが治まるまで最短5秒です。すべての場合に当てはまるとは言えませんが、即効性にすぐれているのは確かですので、覚えておくと便利です。
後頭部(頭蓋骨の下)
後頭部の頭蓋骨の下へり、髪の生え際に沿って、綿棒ぐるぐる刺激を入れていく。1秒に2〜3回ぐるぐるするペースで、それぞれの場所を数秒ずつ行う。特に響くところがあれば念入りにやるとよい。