前回の記事で、「ハウスダスト」と「スギ花粉」を除去するための掃除機のお話をしましたが、今回は空気清浄機のお話をします。
空気中のアレルゲンの大きさについて
掃除機の記事で書きましたが、ハウスダスト(アレルゲン)は、サイズは10~40μm。一方、スギ花粉は、30~40μmです。
ところが、空気の中の不純物は、これだけではありません。
黄砂:4μm、カビ胞子:2~100μm、PM2.5:2.5μm、細菌:0.5~1μm、ウイルス:0.5μm以下。
ご存じの通り、ここに挙げたモノは、体に入って欲しくないものばかり。空気清浄機は、これらにも対応する必要があります。このため、掃除機とは考え方が違って来ます。
空気清浄機の構造について
空気清浄機の構造は簡単です。
空気を循環させるファンと、その入口にあるフィルターが基本構造です。
濾紙が水の不純物を濾し取るように、エアフィルターが、空気中の不純物を濾し取るわけです。
ここのフィルターに使われるのがHEPAフィルター。JIS規格で、「定格流量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルター」と定義されています。
0.3μmまで濾し取っても、まだウイルスが残ります。
これに対し開発されたのが、シャープのプラズマクラスターイオンや、パナソニックのナノイーです。
イオン状態というのは不安定ですから、何か反応して安定になろうとします。
ウイルスは構造的にはタンパク質の塊ですから、イオンに攻撃(反応)され易いのです。
攻撃されると変質。人に害を及ぼさなくなるというわけです。
また、イオンはいろいろな特長を持ちますが、今回のお話とは直接関係がないので割愛します。
空気清浄機の効能の「見える化」
HEPAフィルターさえ使ってあれば、空気清浄の効果がある――。
理屈はそうでも、空気清浄機の効果を目で見ることができません。
このため、メーカーは規格テストを行い、結果を提示します。「○マル」「×バツ」が並ぶわけですが、それでも分かり難い。
一番分かりやすいのは、適用畳数と、その畳数をキレイにする時間です。しかし、このテストが日本と世界で、ちょっと違うことを知っておいてください。
日本で行われているテストは「JEM1467」。JEMは日本電機工業会のことです。
空気清浄機のJIS規格はありませんので、代用です。
JEM1467は、閉め切った部屋の空気を1時間に2回濾過するという考え方に基づいて作られています。1時間に2回というのは「換気」と同じ考え方です。
対しまして、世界のあちこちの国で使われている規格は、アメリカ家電製品協会(AHAM)が定めたCADR(CleanAir Delivery Rate / クリーンエア供給率)です。
こちらは、単純にどれくらいのスピードで空気をキレイにするのかを算出します。ホール的な部屋が多いアメリカらしい考え方です。
それぞれの考え方に一長一短があります。
が、花粉は外から人が持ち込む場合が多く、できる限り早急に対応したいもの。私は、CADRで判断するのが適していると考えています。
ちなみに、CADRは規格最高値以上の能力は「同じ」とされてしまいます。いわゆる100点と同じです。
この時、使われる表現は「最高基準の認証を取得」です。具体的には能力は、8畳(32㎥の空間)を約3分に1回きれいにするわけです。ある意味、家庭用空気清浄機の到達地点と言えます。
このためでしょうか、最近のカタログには、8畳を何分でキレイに浄化できるのかを、記載するメーカーが増えています。8畳基準対比だと分かりやすいです。
花粉症問題対策業者協議会とは(JAPOC:Japan Anti-pollinosis Council)
国民病と言われる「花粉症」。
2012年9月には、 花粉症問題対策業者協議会(以下JAPOC)が発足しています。
JAPOCは、花粉問題に取り組む企業や研究機関が中心となり、花粉問題への取り組みを多様な角度から検討し、より効果的・効率的な対策をオールジャパンで進めるための協議会です。
この協議会も、きちんとした能力のある空気清浄機がユーザーにとって大切だと、2015年には、「空気清浄機による空気中の花粉(花粉片)除去性能評価試験方法」が定められ、認証を始めています。段々知名度も上がっており、この認定マークを基準に選ぶのもいいと思います。
認証テストの弊害
眼に見えないから「テストして結果で判断」というのは結構なことですが、認証テストを受けるには、時間も費用も掛かります。
「全部の認証を取ったところがスゴいんだろう!」という人もいるでしょうが、もしそうなると、空気清浄機の価格に跳ね返ります。
このため、認証テストをセレクトして受けるメーカーもあります。
また、幾つもテスト結果を示されると、ユーザーは混乱してしまいます。適切な運用が望まれます。
花粉対策・アレルゲン対策になる空気清浄機の選び方と使い方
「花粉は外から侵入」「アレルゲンは部屋で発生」という大きな違いがあります。
花粉対策の場合は、空気清浄機は、ドア、窓のような外部との境目近くに設置、外と接触するときはとりえず「強」で、花粉をすぐ捕獲、部屋に持ち込まないように務めるのが重要です。
このため、8畳清浄化時間が時間が短いモノがお勧めとなります。
ただ、清浄時間が短い=適応畳数大ですから、価格も高くなります。
一方、ダニによるアレルゲンは室内で発生。ダニは空を飛びませんので、何かのきっかけで舞い上がらない限り、空気清浄機の出番はありません。
しかし、実際はベットメイクの時、掃除の時、掃除機の二次汚染がなくても、アレルゲンは舞います。
このため、空気清浄機は、その発生元、つまりベッドの近くに置き、強で吸わせるのがベターです。こちらも、この瞬間パワフルなのが一番です。
してはならないのは、適用畳数以下の空気清浄機を買うことです。
推奨メーカー
適応畳数、必要とされる機能(加湿機の有無など)で、モデルが著しく変わりますので、今回は、メーカー推奨とさせていただきます。
メーカーでいうと、スウェーデンのブルーエア、日本のカドー、シャープ、ダイキン、パナソニックはきちんとしています。
中でも、ブルーエアとカドーは、加湿機などの機能のないシンプル構成。
このため、形にこだわることができ、双方共に美しいです。また、この2社は「CADR」最高値を叩き出したモデルを世に送り出しています。
シャープ、ダイキン、パナソニックは加湿機付き、ウイルスにまで対応できるイオン発生機付きなど、多機能。部屋が狭い日本に合った空気清浄機です。
ただ、形はオーソドックスなものが多いこと、水を使う加湿機などが機能にあるとメンテナンスをしっかりする必要があることは、ご了承ください。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オ
フィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があ
り、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。
生活家電.com
http://www.seikatsukaden.com/