ひとくちで「むくみ」といっても、日常的な理由で起こる心配ないものから、病気によって起こる危険なものまでさまざまです。そこで、むくみの基礎知識や危険度を見分けるヒント、対処法をご紹介しましょう。「一晩寝て、むくみが取れるかどうか」が一つの目安になります。【解説】重松宏(山王メディカルセンター血管外科統括部長)

解説者のプロフィール

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重松宏(しげまつ・ひろし)
山王メディカルセンター血管外科統括部長。都庁前血管外科・循環器内科理事長。日本血管外科学会理事長。国際医療福祉大学教授。血管疾患に対する外科的治療のエキスパートで、経皮的血管形成術や大動脈瘤に対するステントグラフト治療、静脈瘤に対するレーザー治療など低侵襲的血管内治療の先駆者でもある。「未病に勝る治療はない」と考え、心・血管検診の重要性を啓発している。

一晩寝て取れるむくみなら心配なし

「足が重くてだるい」「すねを押すと指の形にへこむ」こういった症状に悩んでいる人は非常に多く、日頃の診療でもよくいらっしゃいます。

ひとくちで「むくみ」といっても、日常的な理由で起こる心配ないものから、病気によって起こる危険なものまでさまざまです。

そこで、むくみの基礎知識や危険度を見分けるヒント、対処法をご紹介しましょう。

むくみとは、静脈やリンパ管(体内の老廃物や毒素、余分な水分を運び出す体液の通り道)からしみ出した水分や血液成分が、皮下組織にたまった状態です。

静脈とリンパ管は、互いに水分や血液成分をやりとりしながら、それらを組織に届ける役目を果たしています。

最終的に、水分などは静脈に回収されるのですが、なんらかの理由でその戻りが悪いときや、静脈自体の血流が滞ったときなどにむくみが起こります。

むくみが起こると、冒頭に挙げた症状のほか、足がつりやすい、靴がはきにくい、足を上に上げたくなるといった症状が出ます。

こうした足のむくみが、重大な病気から起こっているか、それとも病的でない日常的な原因から起こっているかを見分けるには、「一晩寝て、むくみが取れるかどうか」が一つの目安になります。

一晩寝て取れるなら、長時間の立ち仕事や運動不足、筋力不足、塩分のとりすぎなどからくる、心配のないむくみの可能性が大きいといえます。

足の筋肉量や運動量によって左右される

では、むくみと運動や筋肉との関係に触れておきましょう。

心臓から各部に血液を送り届ける動脈は、弾力性に富んでいて血液を力強く先に送ります。

一方、静脈には逆流防止の弁がついているだけで、動脈のような弾力性はありません。特に足は下部にあるので、静脈血の戻りが悪くなりやすく、むくみを起こしやすいのです。

それを補うのが、足の運動です。足を動かすと、「ミルキングアクション」と呼ばれる乳搾りのような動きが起こり、静脈血の戻りが促されます。

女性や高齢者に足のむくみが起こりやすいのは、筋肉量が少ない人が多く、この動きが乏しくなりやすいからです。そういう場合は、簡単な足の運動を心がけることがむくみの解消に役立ちます(下記参照)。

また、足を圧迫してむくみを予防・改善する弾性ストッキング(※)を利用するのもよいでしょう。

なお、女性には、生理周期に伴うむくみも起こります。重いときは婦人科での治療が必要ですが、軽ければ足の運動や弾性ストッキングで対処できます。

※下肢の血流をよくするため特殊な編み方で作られた圧迫力を備えたストッキングのこと

命の危険があるむくみもあるので要注意

一方、寝ても取れないむくみは、なんらかの病気による恐れがあります。この場合、
①一方の足だけに起こるむくみ
②左右両方の足に起こるむくみ
に大別できます。

①の場合、疑われる病気としては、下肢静脈瘤やリンパ浮腫、深部静脈血栓症などがあります。

下肢静脈瘤は、静脈の弁が壊れることにより、足の静脈がコブのように膨らむ病気です。通常、下肢静脈瘤とともにむくみが起こりますが、太っている人ではコブがわかりにくいこともあります。

リンパ浮腫は、がんの治療で、リンパ節を取り除いた後に起こるもので、専門的な治療が必要です。切除するリンパ節の位置によって、左右の足に起こることもあります。

深部静脈血栓症は、「エコノミークラス症候群」という名称でも有名でしょう。また近年では、震災後の避難所で多発したのが記憶に新しいです。

これは長時間、狭い場所で動かないでいた後、立って動き始めたとき、足の深い部分の静脈にできた血栓(血の塊)が、流れて肺動脈に詰まるものです。

命の危険がある重い病気ですから、狭い場所に長くいた後、一方の足がむくんだら、早急に受診しましょう

②左右両方の足に、寝ても治らないがんこなむくみが生じた場合は、リンパ浮腫のほか、心臓、腎臓、肝臓などの重い病気や栄養障害の危険性があります。これらが疑われる場合も、早急に受診してください。

足のむくみが気になって受診する場合、左右一方のむくみなら血管外科、左右両方なら内科を受診するとよいでしょう。

「たかがむくみ」と思わずに、早めのケアや必要に応じた受診を心がけてください。

画像: 命の危険があるむくみもあるので要注意

むくみのセルフケアとしてお勧め

むくみが起こりやすいときや、なかなかスッキリ取れない場合、病気によるものであれば医学的な治療が必要です。

しかし、日常的な理由によるむくみなら、セルフケアで改善できる場合があります。
今回は、私が患者さんたちにお勧めして好評の「かかとの上下体操」をご紹介しましょう。

基本的なやり方は、下記を参照してください。つま先立ちをするとき、ふくらはぎがキュッと硬くなる程度にかかとを上げるのがコツです。

イスに座って行ってもかまいませんし、転倒の心配がない人は、支えなしに立って行ってもけっこうです。

この運動とともに、むくみのセルフケアとしてお勧めなのが「弾性ストッキング」です。これは、弾力性の強い靴下で、足を圧迫して静脈血の戻りを促すものです。

弾性ストッキングには、医療用と一般用があります。静脈瘤やリンパ浮腫の場合は、専門家の指導の下、医療用のものを使う必要があります。

そうでない場合は、薬局や通信販売で入手できる一般用でよいでしょう。私も愛用しており、その快適さがやみつきになっています。私は、弾性ストッキング以外の靴下は持っていないほどです。

特に、飛行機や車で長時間移動するときには、その快適さを実感します。普通なら、足がむくんでだるくなるところで、弾性ストッキングをはいていると、足が軽いままなのです。私が使っているのは、医療用のいちばん弾力の弱いタイプです。

ただし、締めすぎて不快になる場合もあるので、自分の足に合うものを選びましょう。

立っても座っても行える「かかとの上下体操」のやり方

【その①】 立って行う

イスや机に手をおき、体がぐらつかないことを確認してから、かかとを挙げ、指先で立つ。リズミカルにかかとをしっかり上下させる。朝晩、30回行う。

画像1: 立っても座っても行える「かかとの上下体操」のやり方

【その②】 座って行う

イスに座り、かかとを上げる。リズミカルにかかとをしっかり上下させる。気づいたときにいつでも行うとよい。

画像2: 立っても座っても行える「かかとの上下体操」のやり方

塩分のとりすぎや飲酒、睡眠不足も要注意

また、足の閉塞性動脈硬化症(足の動脈硬化により、休みながらでないと長い距離を歩けない「間欠性跛行」などが起こるもの)があるお年寄りが弾性ストッキングをはくと、ますます血行が悪くなる場合があるので要注意です。その場合は、医師に相談しましょう。
そのほか、むくみを防ぐには、塩分のとりすぎを避けることも大切です。

塩分をとりすぎると、多くの水が体内にたまってむくみやすくなります。また、お酒の飲みすぎや過労、睡眠不足などによってもむくみが起こりやすくなるので、要注意です。

病気でなくてもむくみが起こるのは、人類が二足歩行を始めたときからの宿命ともいえます。四本足の時代に比べ、体が縦に長くなったため、足からの血液やリンパ液の戻りが悪くなり、むくみやすくなってしまったのです。

年を取るほど筋肉が減って、むくみやすくなります。かかとの上下体操や弾性ストッキングを活用して、むくみを予防・改善してください。

画像: この記事は『安心』2018年11月号に掲載されています。

この記事は『安心』2018年11月号に掲載されています。

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