視力低下の原因“コリ”を一瞬でほぐす「耳ひっぱり」のやり方

美容・ヘルスケア

無理なく行えて心も体も自然にゆるむ「ビジョンヨガ」では、深く呼吸をしながら耳をひっぱるポーズがあります。ここでは「耳ひっぱり」と呼びましょう。耳ひっぱりを行うと、目の周囲や頭部の筋肉のこりやこわばりが取れて血流が改善し、頭部や目に酸素が行き渡ります。【解説】薄久美子(ハーモニースペースdeヨガ主宰・ビジョンヨガインストラクター)

解説者のプロフィール

薄久美子(すすき・くみこ)
ビジョンヨガインストラクター。ヨガ教室「♪ハーモニースペースdeヨガ♪」主宰。2005年7月に教室をスタートするとともに、独自のイベントを次々に企画している。中でも、音楽とヨガのコラボレーション「ピアノdeヨガ」など、音楽講師の経験を生かした心と体の調和を取るヨガが支持されている。現在は東京・大阪を中心に雑誌、メディアなどでも活躍し、企業、団体、学校などへの出張ヨガも行っている。著書に『いたきもヨガダイエット』(KKベストセラーズ)、『耳ひっぱりで体が変わる!』(実業之日本社)がある。

視力が0.2から1.5に上がった例もある

「目の症状を耳で改善する」
ちょっと不思議な感じがするかもしれませんが、これは私が指導しているヨガで、日常的に起こっていることです。

ヨガといえば、難しいポーズをとるイメージを抱きがちですが、私たちが指導している「ビジョンヨガ」は違います。無理なく自分のペースで行えて、心も体も自然にゆるむヨガです。

ビジョンヨガの中に、教室などで必ず行うポーズがあります。それは、深く呼吸をしながら耳をひっぱる耳ヨガです。正式名称は「ファイヤー」と言いますが、ここではわかりやすく「耳ひっぱり」と呼びましょう。

耳ひっぱりは、全身のいろいろな部位に作用しますが、中でも効果が現れやすいものの一つが、目の症状です。

耳ひっぱりを行って「視力が回復した」「目の疲れや目のかすみが取れた」「ドライアイが改善した」などの実例が、多くみられます。

個人差は大きいものの、視力が0.7から1.2になった例や、0.2から1.5になった例などがあり、指導している私でさえ驚くことも多いのです。

私がビジョンヨガを始めたのは、15年ほど前、自律神経(内臓や神経の働きを調整する神経)のくずれによる症状に悩まされたのがきっかけでした。

ひどい疲れ目や乱視もありましたが、耳ひっぱりなどのビジョンヨガで、全身の不調とともに、目の症状も解消しました。

今でも、疲れると、物がにじんで見えることがあります。そんなときに耳ひっぱりをすると、じわーっとピントが合ってきて、少し目を閉じてから開くと、クリアな視界に戻ります。そんなふうに私も日々、耳ひっぱりで視力を整えています。

目に不調のある人は頭や目の筋肉がこっている

簡単にできる耳ひっぱりで、なぜこうした目への優れた効果があるのでしょうか。現在までの研究では、頭部や目への酸素の供給が、目の状態に大きく影響することがわかっています。

視力が低下した人や、目の疲れやすい人などは、目の周囲や頭部の筋肉がガチガチにこっていることが多いものです。この状態では、当然、頭部や目に十分な酸素が供給されません。

耳ひっぱりを行うと、そうした筋肉のこりやこわばりが、しだいに取れて血流が改善し、頭部や目に酸素が行き渡ります。

現代社会に生きる私たちは、脳や目を酷使して、その筋肉を硬くこわばらせがちです。油断すると、それによる血流不足の状態を長く続けてしまいます。

視力の低下や目の状態の悪化には、いろいろな要因が関係しますが、血流不足や酸素不足は、多少の差はあれどんな人にも影響しています。

耳ひっぱりを行うと、それを手軽に取り除いて、目や脳に酸素を行き渡らせることができます。その結果として、視力の回復や目の状態の改善が起こると考えられます。

いわば、耳をひっぱることで、ガチガチに固まった頭に、少しずつ隙間ができ、酸素が行き渡るのです。

教室などで耳ひっぱりを行っていると、あくびが連発して止まらなくなる人がよくいます。「あくびは脳の深呼吸」ですから、これも耳ひっぱりによって、脳に酸素が行き渡ることの一つの証明でしょう。あくびが出ると涙が出ますが、これも目を潤す助けになります。

東洋医学的な視点から見ると、耳には全身につながるツボが集まっています。耳ひっぱりを行うと、自然にそのツボが刺激されるという意味でも、目と全身を元気にするのに役立ちます。

最近、体験会や講演などで、目をテーマに耳ひっぱりの話をする機会が増えました。目と耳の関係が、注目されてきていることを実感しています。

緑内障や白内障のセルフケアにもお勧め

耳ひっぱりを続けているうちに、視力が上がった人や目の状態が改善した人は、たくさんいらっしゃいます。

最近の例では、50代の女性で、「老眼鏡の調整が不要になった」という人がいました。また、60歳の女性で、「近眼の視力がよくなり、遠くがよく見えるようになった」という人もいます。この人は、逆に「老眼は進んだ」とおっしゃっていますが、近視がよくなった影響かもしれません。

近視や老眼、乱視、遠視などのほか、白内障や緑内障などの人が、治療を受けながら、セルフケアとして耳ひっぱりを行うのもよい方法です。

これらの目の病気の場合も、目の血液や体液の循環をよくすることが、回復を促すために役立つからです。

特に冬は、血圧とともに眼圧も上がりやすいといわれています。その予防のためにも、耳ひっぱりを行うとよいでしょう。

「耳ひっぱり」のやり方

【ポイント】
基本は座ってらくな姿勢で、リラックスして行います。お風呂や寝床の中などで行うのもお勧めです。
自然に深く呼吸しながら、息を止めないで行いましょう。呼吸は、鼻でできれば鼻で、息苦しければ、口でしてください。一方の耳ずつ行うほうが、集中できて望ましいのですが、左右同時に行ってもかまいません。
つまむ場所はだいたいでOKです。つまんでみて痛気持ちいいところがあれば、そこをつまんでひっぱりましょう。
1日のうち、いつやっても、何回やってもけっこうです。ただし、気持ちよくできて、耳の皮膚を傷めない範囲で行いましょう。

(1) 耳の上部をひっぱる

耳の上部を、親指と人さし指の腹でつまむ。
息を吐きながら、斜め上に向かってひっぱる。
5秒ほどひっぱったら、力を抜く。
※(1)~(3)を3回くり返す。

(2) 耳の中央をひっぱる

耳の中央を、親指と人さし指の腹でつまむ。
息を吐きながら、真横に向かってひっぱる。
5秒ほどひっぱったら、力を抜く。
※(1)~(3)を3回くり返す。

(3) 耳たぶをひっぱる

耳たぶを、親指と人さし指の腹でつまむ。
息を吐きながら、下に向かってひっぱる。
5秒ほどひっぱったら、力を抜く。
※(1)~(3)を3回くり返す。

【より効果を上げるには】

耳を折り曲げたり折りたたんだりしてひっぱったり、耳全体をイタ気持ちいいくらいの力でもみほぐしたりするのもお勧め。

目だけでなく全身の状態をよくする

耳ひっぱりは、視力低下や目の症状のほか、首・肩のこり、不眠、慢性頭痛、冷え症、便秘、耳鳴り、うつ、イライラなどを改善するのにも役立ちます。

また、肌をきれいにする効果や、集中力を高める効果、免疫力(病気に対する抵抗力)を高める効果もあります。

耳ひっぱりを続けていると、「カゼをひかなくなった」「ひいても回復が早い」という声もよく聞かれます。これも、体温上昇によって免疫力が上がる結果でしょう。首すじが寒いときなど、耳ひっぱりを行うと、ポカポカして寒さが気にならなくなることも、よく経験します。

基本的に、耳ひっぱりをして激しい痛みを感じる人は、目や体の状態がよくないことが多いものです。

こまめに耳ひっぱりを続けていると、痛みが和らぐとともに、耳全体がマシュマロのように軟らかくなってきます。それに伴って、目や体の不調も改善してきます。

ただし、最近は、緊張状態が続きすぎて、痛みすら感じなくなっている「失体感」と呼ばれる状態の人も増えています。この場合は、耳だけでなく、体のほかの部位にも痛みを感じにくくなっています。

これは、激痛を感じる以上に危険で、突然の大病に襲われる可能性もあります。そんな場合も、耳ひっぱりを続けていると、痛みを感じるようになり、健康体に近づいていきます。

耳ひっぱりのやり方は、上記のとおり、とても簡単です。行う回数や時間帯は、自由に調整してかまいません。

耳のケガなどをしている人以外は、どなたでも、いつでもどこでも安全に行えます。ぜひお試しください。

この記事は『安心』2019年2月号に掲載されています。

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特選街web編集部

1979年に創刊された老舗商品情報誌「特選街」(マキノ出版)を起源とし、のちにウェブマガジン「特選街web」として生活に役立つ商品情報を発信。2023年6月よりブティック社が運営を引き継ぎ、同年7月に新編集部でリスタート。

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