甘酒の注目の成分「プロラミン」に注目!医師が勧める効果的な飲み方はトマト甘酒

美容・ヘルスケア

甘酒の成分で注目したいのは「プロラミン」です。この難消化性たんぱく質は、食物繊維と同様に、腸内環境を整えて便秘改善やコレステロール排出促進、肥満抑制などの作用があると考えられ、今、とても注目されている物質です。【解説】白澤卓二(お茶の水健康長寿クリニック院長)

解説者のプロフィール

白澤卓二(しらさわ・たくじ)
1958年、神奈川県生まれ。82年、千葉大学医学部卒業。90年、同大学大学院医学研究科博士課程修了。医学博士。東京都老人総合研究所を経て、2007~2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。17年、お茶の水健康長寿クリニックを開院。白澤抗加齢医学研究所所長、日本ファンクショナルダイエット協会理事長、日本アンチエイジングフード協会理事長、ミシガン大学医学部神経学客員教授も務める。テレビや新聞、雑誌での医学解説でも活躍。著書・監修書は300冊を超える。

コレステロールを排出し肥満を抑制する

麹甘酒とトマトジュースを混ぜて飲む「トマト甘酒」は、アンチエイジング(老化防止)の観点から、とてもお勧めできる健康ドリンクと言えます。

まずは、甘酒とトマトそれぞれに含まれる成分を見ていきましょう。

米麹による発酵で作られる甘酒の特徴は、コウジカビによって生み出されるさまざまな栄養成分を含むということです。

米に付着したコウジカビが増殖するさいに、大量の酵素を作り出します。代表的な消化酵素である、でんぷんを分解し糖に変えるアミラーゼ、たんぱく質を分解してアミノ酸に変えるプロテアーゼ、脂肪を分解するリパーゼを始め、多種の酵素を含みます。

麹甘酒では、こうした酵素があらかじめ米を分解し、体内で行われる代謝(消化と合成)がスムーズに行えるようになっています。

また、発酵の過程で、エネルギー代謝に欠かせないビタミンB群や腸内環境を整えるオリゴ糖、体内では合成できない9種の必須アミノ酸が作り出されています。

甘酒に含まれるペプチド(たんぱく質が消化酵素などの働きで分解され、アミノ酸に変わる途中に作られる成分)には、血圧を上昇させるACEという酵素の働きを阻害し、血圧上昇を抑える効果のあることが判明しています。

さらに甘酒の成分で注目したいのは「プロラミン」です。プロラミンは消化・吸収されにくい「レジスタントプロテイン」と呼ばれる難消化性たんぱく質の一種です。

この難消化性たんぱく質は、食物繊維と同様に、腸内環境を整えて便秘改善やコレステロール排出促進、肥満抑制などの作用があると考えられ、今、とても注目されている物質です。

甘酒は原料に米麹を用いるものと、酒粕を用いるもの、両方を使うものなどがあります。

金沢工業大学の研究では、プロラミンの含有量は「米麹と米のみから製造された甘酒」が最も多いと報告されています。

麹甘酒は、原料である米のでんぷんが分解され、ブドウ糖やオリゴ糖に変わることで、強い甘味が引き出されています。けれども、これは体内で起こっている消化反応と同じであるため、同量のおかゆと糖質量は変わりません。

それに対して、酒粕を溶きのばした甘酒は、砂糖などの糖類が添加されている分、糖質量がさらに高くなります。

脳卒中リスクを下げるトマトのリコピン

一方、トマトジュースに含まれる成分では、「リコピン」が代表的です。リコピンは植物に含まれる色素成分「カロテノイド」の一種で、トマトの特徴である赤色のもとです。

リコピンは高い抗酸化作用を持つことが知られています。抗酸化作用は体内で増えた活性酸素を除去する働きのことで、老化や病気の抑制に働きます。

リコピンの抗酸化作用は、同じく抗酸化作用を持つビタミンEの100倍以上といわれるほど強力です。

これまでの研究報告からリコピンには、動脈硬化、糖尿病、肝臓がん、大腸がんなどの発症を抑制する効果が期待できるといわれています。

東フィンランド大学の研究では、十数年にわたり1000人以上の血液中の主要なカロテノイド濃度(リコピンを含む)と脳卒中の発症の関係を調べています。

その結果、リコピンの血中濃度が高いグループは、低いグループよりも脳卒中リスクが55%も低下しました。

ほかのカロテノイドには、このような脳卒中の予防効果は見られなかったと報告されています。

また、トマトは、野菜の中でもGABA(γ‐アミノ酪酸)を豊富に含みます。GABAは、血管を収縮させるノルアドレナインという物質の分泌を抑えるため、高血圧を改善する働きが知られています。

さらに、トマトには代謝を促すビタミンB群や、ナトリウムの排出を促し高血圧を改善するカリウムなど、各種ミネラルも豊富です。

水溶性食物繊維で、便を軟らかくする作用があるペクチンは、便秘の解消に有用です。

それぞれの持つ機能性成分のほか、組み合わせることで得られるメリットもあります。

血糖を筋肉に取り込むホルモンであるインスリンの過剰分泌は、肥満につながります。

甘酒は、血糖値を上げてインスリンの分泌を促す、糖質を多く含む飲み物です。けれども、食物繊維が豊富なトマトジュースとともに飲むことで、急激な血糖値の上昇を抑えながら、すみやかにエネルギーを得たり、さまざま栄養素を補給することができるのです。

抗酸化作用と老廃物排出作用があるトマト甘酒

この記事は『安心』2019年4月号に掲載されています。

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