IoT家電という言葉をよく耳にするようになりました。今後も、このIoT家電が私たちの暮らしをどんどん便利にしていくはずだ、そう考えがちです。しかし、IoTは思ったほど進んでないのです。その理由は「Wi-Fiの欠点」と「RFIDのコストの高さ」が関係していると私は考えています。

IoTが進まない2つの理由

2015年頃から至るところで言われ始めた家電のIoT化。IoTは、世界でも最大級の米国で開催される家電ショー、CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)の基調講演で、鳴り物入りで登場した技術ですが、現時点で、学習リモコン以上のレベルに達しているのかと問われれば、疑問符が付くレベルだと思います。
パソコン、スマートフォンの技術が、ほぼ飽和になっている現在、技術は確立しているはずなのに、どうしてIoTは進まないのでしょうか?
それには2つの理由があると考えられます。

この先何もかも「Wi-Fi」でつなぐのか?

クルマの自動運転は「5G」から

スマートフォンがWi-Fiでつなげられるようになって、「家電をつなげるのもWi-Fiが当たり前、常識の範疇」みたいなことが言われています。

ところが、クルマの自動運転は、Wi-Fiではなく、次世代通信の「5G」からといわれています。「Wi-Fiが便利だといわれ、スマホがここまで普及しているのだから、自動運転もWi-Fiでできないの?」と思っている人も多いでしょう。
これは、Wi-Fiだと、高速移動体を含む、電波状態が悪いところを走行する可能性のあるクルマに対し、常時接続を約束することができないためです。万能のように見えるWi-Fiですが、いろいろな欠点があるのです。

画像: クルマの自動運転は「5G」から

Wi-Fiの欠点は「つながらないことがある」こと

スマホやPCはなぜWi-Fiでつなぐの?

Wi-Fiの一番の欠点は、日常何気なく貴方も感じている不便さ「つながらないことがある」ということです。スマートフォンを片手に、部屋内、建物内をウロウロした経験は、まず誰しも持っていると思います。家電は部屋のいろいろなところ、人の邪魔にならないことを考えれば、「隅」に置かれます。つながるためには、非常に不利な位置と言えます。

逆に、スマートフォン、PCなどは何故Wi-Fiでつなぐのでしょうか?

理由は簡単です。大量のデータを送受信するのに都合がイイからです。特に「動画」はWi-Fiでないと転送レートが足りません。このため、ビジュアルデーターを扱う、パソコン、スマートフォンは、Wi-Fiありきなのです。

家電をWi-Fiをつなぐには「切れない通信」が必要

注目の通信技術「HD-PLC」と「LPWA」とは

しかし、家電は違います。家電のやり取りは、「現状を伝える数値データ」が基本です。Wi-Fiの大容量送受信なんて必要ありません。

多分、Wi-Fiが必要なのは「監視カメラ」で映像を使う玄関周りなどの「セキュリティー関連だけ」と言っても差し支えありません。
むしろ、家電では「通信が切れる」事が問題となってくるでしょう。

このため、今、注目を浴びようとしているのが、「HD-PLC(HD-Power Line Communication:電力線通信)」と「LPWA(Low Power Wide Area:ローパワーワイドエリア)」です。

HD-PLCは、電力線通信です。家電の電源ケーブルをコンセントに差し込めば、通信できます。バッテリー駆動のポータブルが多くなる現状ですが、大型白モノ家電に関しては問題ありません。しかも、全部屋に電気線は通っていますので、手間も掛かりません。

もう一つの LPWAは、なるべく消費電力を抑えて遠距離通信を実現する通信方式です。Wi-Fiより少ない情報量を、確実に、広範囲に通信できるようにした規格です。大きなデータを送れないのですが、その代わりに低電力で十分。省エネ型の通信でもあります。

ちなみに、一時騒がれたHEMS(ヘムス:ホーム・エネルギー・マネージメント・システム)で使ってもイイとされたのは、Wi-FiとPLC(HD-PLCのベーシック規格)。当時、近々全家庭にWi-Fiが備えられ、Wi-Fiは確実な通信手段となると考えられていたようですが、2019年の現在、そこに達していません。ユーザー全員に、確実に益をもたらすと言えないのが、今のWi-Fiの現状なのです。

冷蔵庫のIoT化を阻むモノ

中身が把握できる冷蔵庫はいつできる?

冷蔵庫のIoTに欠かせないのが、冷蔵庫の中身の把握です。
しかし、これができていないのが現状。カメラを使うバーコードを使うといった方法が提案されていますが、現状では「手入力でお願いします」といったIoTには程遠い製品を出しているメーカーもある位です。

バーコードはなぜ冷蔵庫に使えない?

しかし、スーパーなどで、あれだけレジ打ちで多用されるバーコードが、冷蔵庫で使えないのは何故でしょうか? 
それは、正式なバーコードは、申し込まれた型式(品番)に対し、1つ発行されるシステムだからです。さらに、生鮮食品は別で、スーパー毎に勝手に決めたバーコードを使っています。その上、バーコードには、賞味期限などのデーターをネット上で紐付けることはできません。

今バーコードに紐付けられるのは、名前情報だけなのです。製品を認識した後に、POSシステムなどがその価格データを紐付けているのです。
さらに、製品の中に複数の賞味期限がある場合はデータを紐付けられません。このように、バーコードは、かなり便利なシステムですが、限界があるのです。

バーコードの弱点を克服した「RFID」とは

それを進化させたのがRFID(Radio Frequency Identifier)。と言っても赤外線で読むバーコードとは全く違います。
RFとはラジオ波、IDは個体識別のIDで、電子回路が内蔵されたラベル(タグ)のことです。そのラベルにラジオ波を送ると、それを反射、その反射波にいろいろなデータを載せて送ってくれます。型番、価格はもちろんのこと、賞味期限などの情報もです。

RFIDをいち早く取り入れたのが、GU、ユニクロ。セルフレジでは、カゴいっぱいの商品の総計が瞬時に出ますが、そのカラクリはラジオ波で一発読み取りしているからです。

RFIDはコストの面で実用化が難しい

ただし問題もあります。回路内蔵なので、印刷するだけのバーコードに比べ、コストがかかるのです。今、約10円/枚と言われています。とてもではないですが、5円、10円の商品に貼ることはできません。

しかし在庫確認も含め、流通改革の目玉として、コンビニ業界なども採用宣言をしています。ただし条件付きだそうです。1円/枚で、製造者がRFIDを貼ることを挙げています。

採用の難易度はかなり高いですが、採用となると、冷蔵庫の中身は、RFIDで、ごく自然にリスト化できます。しかも賞味期限付きで。
とはいえ、上述したような環境が整わない限り、冷蔵庫に搭載してほしいサービス『何が中に入っているかを、どこにいても知ることができる』を、実現するのは厳しいでしょう。

まとめ

IoTの環境が整うのはいつ?

通信に関する最終結論は2020〜2021年と言われています。そこまでに、新しい方式が提案されて、ある程度力を持たなければ、Wi-FiでIoTは進むことになると思います。
その時は、思い通りのサービスを享受できない場合があり、Wi-Fiのマイナス面をどう克服するかが、鍵となるでしょう。

RFIDは、2025年が大きな山場といわれています。ここまでにコンビニ業界が挙げている『1円/枚・製造者が貼る』という条件が達成されると、コンビニで販売される全商品にRFIDが付くことになるでしょう。

2015年をIoTが世の中に認知された年とすると、真に使えるサービスになるのに、ざっと10年になる計算ですね。人間の生活基盤に関することを変えるには、これ位の時間が必要なのかもしれません。

画像: IoTの環境が整うのはいつ?

◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング、ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。

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