運動療法は、大きく三つに分かれます。一つは、ウォーミングアップに当たる「腎臓リハビリ体操」、二つめは有酸素運動などの「腎臓リハビリ運動」、三つめは筋肉を鍛える「腎臓リハビリ筋トレ」です。しかし、必ずしもこれらの運動をすべて行う必要はありません。大事なのは、短時間でも毎日続けることです。【解説】上月正博(東北大学大学院医学研究科教授・東北大学病院リハビリテーション部長)

解説者のプロフィール

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上月正博(こうづき・まさひろ)
1981年、東北大学医学部卒業。東北大学大学院医学系研究科障害科学専攻機能医科講座内部障害分野教授。東北大学病院リハビリテーション部長、同障害科学専攻長。日本腎臓リハビリテーション学会理事長。「腎臓リハビリテーション」という新たな概念を提唱し、腎疾患や透析医療に基づく身体的・精神的影響を軽減させる活動に尽力。著書に『腎臓病は運動でよくなる!』(マキノ出版)など多数。上の写真は、「ハンス・セリエ賞」のメダルを手にする著者。

短時間でも毎日続けることが大事

私が勧めている「東北大学式・腎臓リハビリテーション」の運動療法は、腎機能を高めるだけでなく、慢性腎臓病を悪化させる生活習慣病やメタボ症候群(糖尿病や高血圧、肥満など)を予防・改善する効果も期待できます。

運動療法を行うと、全身の血流が促進され、内臓脂肪の減少や、血圧や血糖値の調整に役立つからです。

運動療法は、大きく三つに分かれます(下記やり方参照)。

一つは、ウォーミングアップに当たる「腎臓リハビリ体操」、二つめは有酸素運動などの「腎臓リハビリ運動」、三つめは筋肉を鍛える「腎臓リハビリ筋トレ」です。

しかし、必ずしもこれらの運動をすべて行う必要はありません。時間に余裕のない人や、体力に自信のない人は、腎臓リハビリ体操や腎臓リハビリ運動だけでもいいでしょう。

大事なのは、短時間でも毎日続けることです。

運動の強度は、息切れしない程度にとどめます。息が上がるような強い運動は、かえって腎臓に負担をかけてしまい、よくありません。

①腎臓リハビリ体操(基本体操)のやり方

運動前や運動後に行ってほしい四つの簡単な体操です。これまで安静第一で過ごしてきた人は、まずはこの体操だけでも始めてください。

一つひとつの動きを10〜15秒かけてゆっくり行います。リラックスした状態で、体を動かす範囲をできるだけ広げるつもりで行いましょう。

それぞれ5〜10回行うのを1セットとして、1日3セットを目標にしてください。最初は無理をせず、少ない回数から始め、慣れたら少しずつ回数を増やします。

ポイントは「ひなまつり
《ひ》 広い範囲で
《な》 長く行う(10〜15秒)
《ま》 マイペースで
《つ》 「つー」といいながら息を止めずに
《り》 リラックスしてゆっくり

❶かかとの上げ下ろし

画像1: 【東北大式腎臓リハビリテーションとは】腎機能を高める3つの運動療法のやり方

両足をそろえて立つ。その状態でかかとの上げ下ろしを行う。アキレス腱を伸ばす効果もある。
※イスなどにつかまって行ってもよい。

❷足上げ

画像: ❷足上げ

イスなどにつかまって体を支えながら、一方の足を前や上、後ろに上げる。反対の足も同様に行う。

❸ばんざい

画像2: 【東北大式腎臓リハビリテーションとは】腎機能を高める3つの運動療法のやり方

足を肩幅に広げて立つ。ばんざいをするように両腕を上げ、元に戻す。腕は耳に近づけるようにして上げる。

❹中腰スクワット

画像3: 【東北大式腎臓リハビリテーションとは】腎機能を高める3つの運動療法のやり方

足を少し開いて立つ。そのまま軽くひざを曲げて腰を落とし、元の姿勢に戻る。
※イスなどにつかまって行ってもよい。

②腎臓リハビリ運動(有酸素運動)のやり方

お勧めしたいのは、ウォーキングや自転車こぎなどの有酸素運動です。

足を使って筋力を鍛えると、血流がよくなって酸素の取り込み量が増えます。この酸素の取り込み量が、寿命の長さを決めます。心肺機能の向上、肥満の解消、血圧の降下、耐糖能の改善(インスリンの効きをよくする)など、さまざまな効果が認められています。

ウォーキングは、1日20〜60分を週に3〜5回行います。速く歩く必要はありません。息が上がらない程度の速さで歩いてください。長く歩けない人は、3〜5分程度の軽い散歩を数回行ってもいいでしょう。

また、足がふらつきそうな人は、ペダルこぎのマシン(エルゴメーター)を使うと、室内で安全に有酸素運動ができます。

ウォーキング

画像: ウォーキング

③腎臓リハビリ筋トレ(筋力トレーニング)のやり方

耐えられる運動量が個別に異なるので、医師の指導のもとで行う。

腎臓リハビリ筋トレでは、特に片足立ちとスクワットをお勧めします。いずれも下半身の筋肉強化に役立つだけでなく、バランスを取るために、上半身の筋肉も使われる優れた筋トレです。

週に2〜3回、どちらかの運動を行えばいいでしょう。2日続けて行う場合は、同じ運動をせず、交互に行ってください。

筋肉は、負荷をかけるとダメージを受け、それが修復されるときに太くなります。筋肉の修復には24時間かかるといわれています。同じ部位の運動を続けると十分修復できず、かえって筋肉にダメージが残ります。

筋トレでは、筋肉に力を入れるときに息を吐き、緩めるときに息を吸うのが基本です。力んで息を止めると血圧が上がるので、気をつけてください。

片足立ち(ダイナミックフラミンゴ療法)

画像4: 【東北大式腎臓リハビリテーションとは】腎機能を高める3つの運動療法のやり方

左足の太ももが床と平行になるくらいまで引き上げ、1分保つ。右足も同様に行う。これを1セットとして、朝昼晩、1日に3セットを毎日行う。
※イスにつかまって行ってもよい。

★1分の片足立ちで大腿骨頭(太ももの骨の頭部)に加わる力は、53分歩くことで得られる総負荷量と同じ。
★バランスの改善、股関節周囲の骨の強化、足の筋肉増強。

スクワット

画像5: 【東北大式腎臓リハビリテーションとは】腎機能を高める3つの運動療法のやり方

肩幅より少し足を開き、つま先は少し外側に向ける。イスの背に両手を添えて、背すじを伸ばす。
息を吸いながら、3〜5秒かけてひざをゆっくり曲げる。
(ひざを曲げたとき、ひざがつま先より前に出ないようにする。)
息を吐きながら、3〜5秒かけてひざをゆっくり伸ばす。
※②〜③を5〜10回くり返す。これを1セットとして、できれば1日3セット、週に3〜4日行う。

★太ももの筋肉を強化。

運動療法がお勧めできない症状のかた

運動療法は、いずれも安全で強度が低いものですが、次のような人にはお勧めできません。

・高血圧で、最大血圧が180mmHg以上
・糖尿病で、空腹時血糖値が250mg/dl以上
そのほか、
・急性腎炎・ネフローゼ症候群
・心不全や狭心症があって症状が安定しない人
・急激に症状が悪化した慢性腎臓病の人
も、運動は控えてください。あるいは、運動を始める前に、必ず医師に相談してください。

なお、病院で運動療法を受けたい人は、日本腎臓リハビリテーション学会のホームページの「施設会員」を参考にするといいでしょう。

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