機能が低下している内臓は、筋肉と同様に緊張してかたくなり、血流が悪くなる傾向にあります。連動している手足の筋肉を動かして刺激を与えることで、緊張を緩めることができます。すると、血流が促進され、内臓の機能も回復してくるのです。【解説】南一夫(内臓調整療法学院・内臓調整療法師会・行徳内臓調整療法院代表)
解説者のプロフィール
南一夫(みなみ・かずお)
内臓調整療法学院・内臓調整療法師会・行徳内臓調整療法院代表。1973年、千葉工業大学卒業。82年、姿勢保健均整専門学校卒業。91年、身体均整師養成講座講師。2011年、内臓調整療法師会を設立、内臓調整療法学院を開設し、現在に至る。年間6000人、延べ13万人の施術歴がある。著書に『内臓体壁反射による異常観察と調整テクニック概論』(身体均整師会出版部)。
足を前後する動きで腎臓をマッサージ
病気や老化などで機能が低下している内臓は、筋肉と同様に緊張してかたくなり、血流が悪くなる傾向にあります。
肩こりなど、かたくなった筋肉はマッサージでほぐせば血流がよくなり、コリや痛みが取れます。これは内臓にも当てはまることなのです。
体の奥にある内臓をマッサージできるのかと思われる人もいるでしょうが、私たちは筋肉反射を活用した独自の内臓調整法で、それを可能にしています。
原理は、簡単です。あらゆる臓器は筋肉に守られており、それらは手足の筋肉とも連動しています。かたくなっている内臓があれば、それと連動している手足の筋肉を動かして刺激を与えることで、緊張を緩めることができます。すると、血流が促進され、内臓の機能も回復してくるのです。
腎臓の場合、連動するのは「大腰筋」と呼ばれる体の深部にある大きな筋肉になります。
大腰筋は、背骨と太ももの骨をつなぐ筋肉で、股関節を大きく曲げる際に使われます。足を上げたり、大またで歩いたりする動作には欠かせません。
下図のように、腎臓は大腰筋上部の前方に近接しています。そのため、足を使って大腰筋を動かすと、手前にある腎臓を軽くゆらすことができ、マッサージ効果が生まれるのです。
若くて元気なうちは、よく歩いたり運動したりして、大腰筋を活発に使いますから、自然に腎臓がマッサージされます。
しかし、加齢や病気によって足(大腰筋)を使わなくなると、徐々にその影響が腎臓に現れ、かたくなってくるのです。
そこで私が考案したのが「腎臓ゆらし」(やり方は下記参照)です。
腎臓ゆらしは、両足をそろえて立ち、片方の足を後方にゆっくりけり上げるという簡単な体操です。ポイントは、しっかりと後ろにけり上げることです。ひざが曲がっていてもかまいません。
片足につき20~30回ずつ行うのを1セットとして、1日に3セットくらい行いましょう。
とても簡単な運動ですが、足を前後する動きが大腰筋を大きく伸縮させ、腹部深くにある腎臓に刺激を伝えることになるのです。
体の安定が悪い人は、必ず壁やイスの背もたれに手をついて行ってください。ひざの痛い人は、片方のお尻だけをイスにのせて行ってもかまいません。
腎臓ゆらしの効果をより高める方法もお教えしましょう。
足をけり上げる前に、意識して深く息を吸い込みます。すると、横隔膜(胸腔と腹腔の境にある筋膜)といっしょに腎臓も少し下がります。この状態で片足をゆっくり後方に上げると、大腰筋からの刺激がさらに腎臓に伝わりやすくなります。
「腎臓ゆらし」のやり方
❶両足をそろえて立つ。
❷左足を前方に軽く振り、その反動で後ろにゆっくりけり上げる。これを20〜30回くり返す。
❸右足も同様に行う。
※(1)〜(3)を1セットとして、1日に3セット行う。
【ポイント】
・後方にしっかりけり上げる
・足をけり上げる前に深く息を吸う
【注意】
・体の安定が悪い人は、必ず壁やイスの背につかまって行う。
・ひざが痛い場合は、イスに座って行う。
だるさ、吐きけ、頭痛、貧血、めまいが軽減!
こうして腎臓が柔軟になり、働きもよくなると、その効果は腎臓が持つ多くの機能に影響すると考えられます。
腎臓の血液ろ過機能が衰えると、体内の有害物質が排出されず、尿毒症を招きやすくなります。その影響はあらゆる臓器・器官におよび、だるさやむくみ、吐きけ、食欲不振、頭痛などの症状を引き起こします。
また、腎臓は赤血球の産生や血液中の水分や電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リンなど)の調整にも働いています。それらの機能が低下することで、貧血やめまい、むくみ、血圧上昇といった症状が現れます。
私どもでは腎臓の不調を訴えられる患者さんには必ず、腎臓ゆらしを勧めます。続けていると、前述のようなさまざまな症状が軽減されるのが実感できます。実際、クレアチニンや尿素窒素など、腎機能の指標となる数値が改善された人もいます。
腎臓に不安を抱えている人は腎臓ゆらしをぜひ試してみてください。