世には伝えるべきたいせつなニュースもありますが、当事者以外にとってはどうでもいいネガティブなニュース、悲惨なニュースも多く流れています。それらをまともに受け取っていると、ストレス過多になり、悪い方向に流されやすくなるのです。【解説】DaiGo(メンタリスト)
解説者のプロフィール
DaiGo(だいご)
メンタリスト。慶應義塾大学理工学部物理情報工学科卒業。人の心を作ることに興味を持ち、人工知能記憶材料系マテリアルサイエンスを研究。英国発祥のメンタリズム(人の心を読み、操る技術)を日本のメディアで初めて紹介し、日本唯一のメンタリストとして多くのテレビ番組に出演。『コミュ障でも5分で増やせる 超人脈術』『運は操れる』(いずれもマキノ出版)ほか、人間心理をテーマに執筆した著作は累計で300万部を突破。
オフィシャルサイト=http://daigo.jp/
警告を書くことでタバコの売上は上がる!?
テレビや新聞などのメディアやネットでは、毎日のように悲しいニュースや悪いニュースが流れています。人は、不快感を覚える情報や、ショッキングな情報に接すれば接するほど、「受動ストレス」がたまることがわかっています。
受動ストレスが蓄積すると、メンタルも大きなダメージを受け、うつや不安の原因になります。そうなると、私生活や仕事にも影響を及ぼします。
自分からわざわざネガティブなニュースに接していくのは、自分で自分の体を傷つけていることと何も変わらないのです。ネガティブなニュースはできる限り、避けることが肝要です。
米カリフォルニア大学は、興味深い実験を行っています。自分のことを「太っている」と思う女性に、肥満に関するネガティブなニュースを読ませたところ、なんと87%の女性がお菓子などの間食の誘惑に負けやすくなったそうです。
自分のコンプレックスに関するネガティブなニュースに触れた人は、不思議なことに、それに関する誘惑に負けやすくなってしまうのです。これも受動ストレスによるものです。
「喫煙」についても、同様のデータがあります。タバコのパッケージには「体に害があること」を表す絵や注意文が書かれていますが、実はこれによって「タバコの売上は上がること」がわかっています。
確かに、タバコを初めて買う人は、こうしたタバコのリスクの知ると、購入意欲を失いがちです。しかし、すでに吸っている人たちには、反対の心理が働きます。
「喫煙が体に悪いことはわかっていても、禁煙できない」とストレスを感じ、その結果、誘惑に弱くなり、皮肉にもタバコを吸う本数は増えていくのです。
これは、ネガティブなニュースを使って、逆に売上を増やそうとしている一例です。
人はネガティブに引っ張られやすい
見方を変えると、メディアは「情報の受け手を誘惑に負けやすくしている」とも言えます。
もちろん世には伝えるべきたいせつなニュースもありますが、当事者以外にとってはどうでもいいネガティブなニュース、悲惨なニュースも多く流れています。それらをまともに受け取っていると、ストレス過多になり、悪い方向に流されやすくなるのです。
ニュースの合間に流れるCMの誘惑にも負けやすくなります。これは人の「受動ストレスにより、誘惑に負けやすくなる」という性質を利用した、優秀なマーケティング手法なのです。
1993年に、「人の感情が、いかに他人に伝染するのか」というテーマで、実験が行われました。
その結果、周りにネガティブな人やネガティブなニュースが多くなると、自分の表情や姿勢も変わって、声の出し方やコミュニケーションの取り方まで暗くなってしまうことがわかっています。
しかも、この実験では、意図的にネガティブなニュースを流すと、被験者の半数程度はネガティブに引っ張られることもわかりました。ネガティブなニュースに触れるだけで、約50%の人がそれに引っ張られて「ネガティブな人」になる可能性があるということです。
何か不安なことがある人や、そもそもネガティブな傾向のある人は、悪いニュースを流すメディアやネットから距離を置くようにしましょう。ネガティブな情報を遮断するだけでも、かなり不安感は晴れ、人生が好転していくはずです。