古来、難聴の治療に最も有効なツボとして使用されてきたのが「翳風」と「聴宮」です。私は、これらのツボとは別の位置に、突発性難聴をはじめとした難聴に有効と考えられる新たなツボを見つけたのです。「突難1号」「突難2号」と名づけています。【解説】藤井徳治(アクア鍼灸療法 一掌堂治療院院長)
解説者のプロフィール
藤井徳治(ふじい・とくじ)
一掌堂治療院院長。鍼灸師。あんまマッサージ指圧師。突発性難聴、メニエール病、耳鳴りの治療に意欲的に取り組み、独自の方法を考案して成果を上げている。
自然治癒力を高めれば難聴は治せる!
私は、内耳や聴神経といった音を判別する器官に問題が生じる「感音性難聴」を20代の終わりに発症し、徐々に聞こえが悪くなっていきました。当時は、感音性難聴は治らないとされていて、具体的な治療法は全く存在しなかったのです。
もちろん、難聴をなんとか改善するため、西洋・東洋を問わず、あらゆる治療法を試しました。しかし、両耳の聴力を失う結果となりました。
そんななか、私は、ご自身も難聴でありながら鍼灸師をされている恩師と出会いました。そのかたに導かれるように、鍼灸師に転身して以来35年。鍼灸を活用して難聴を治したいと願い、研鑽を続けてきました。
そして、感音性難聴の大部分を占める突発性難聴を完治させる最初の体験例が出るまで、10年以上かかりました。
では、どうして鍼灸が難聴に効くのでしょうか。
例えば、どんなに気温が高くても、体温はほぼ一定です。また、ちょっと指先を切ってしまったときには、白血球や血小板などが働くことで、いつの間にか治っています。
こうした力を、免疫力、自然治癒力などと呼びます。鍼灸治療は、人間が本来持っているこうした力に働きかけて、さまざまな症状を改善させるのです。だからこそ、難聴を治すことも可能になったのでしょう。
治療を重ねるうちに、私は、難聴に効果的なツボを発見しました。それが、「突難1号」「突難2号」という二つのツボです(下の図参照)。
古来、難聴の治療に最も有効なツボとして使用されてきたのが「翳風(えいふう)」と「聴宮(ちょうきゅう)」です。
翳風は、耳たぶの下で、あごの骨の後ろのくぼみにあります。聴宮は、耳珠(耳の穴の前側にある小さな突起部分)のすぐ前、口を開けるとできるくぼみにあります。
私は、長年の治療経験から、これらのツボとは別の位置に、突発性難聴をはじめとした難聴に有効と考えられる新たなツボを見つけたのです。
その一つが、翳風の5mm上、耳の後ろのくぼみの頂点にあります。もう一つは、聴宮の2cm下、耳たぶの下端です。
私は、この二つのツボを「突難1号」「突難2号」と名づけています。
突難1号、突難2号に、市販のチタンテープを1~3日貼る。ゴマや仁丹などがその位置に当たるようにして、肌用テープで留めてもよい。
※皮膚がかぶれたり、かゆみが出たりしたらすぐに中止する。
首のコリをほぐすとさらに効果がアップ!
私の治療院では、これらのツボの位置に鍼を打ったり、次の来院時まで、円皮鍼(丸いシールの中央に、数mm程度の鍼がついた物)を貼っています。
また、セルフケアとして行う場合には、それぞれの場所に、市販のチタンテープ(炭化チタンを塗ったシール状のテープ)を貼ってもらいます。チタンテープは、薬局で購入できます。
テープを貼るのは、調子のよくない側の耳だけでけっこうです。もし、両方とも聞こえが悪い場合は、左右にチタンテープを貼ってください。
もし、チタンテープが入手できない場合には、ゴマや仁丹などがその位置に当たるようにして、肌用テープで留めるという方法もあります。
2~3日は、貼ったままにしておきます。入浴時も、そのままでかまいません。
ただし、皮膚が弱いかたは注意が必要です。万が一、「皮膚がかぶれる」「かゆみが気になる」という症状が出たら、すぐに中止してください。
また、難聴にお悩みのかたは、たいてい首の筋肉がこっているものです。特にコリがひどいのが、胸鎖乳突筋です。
胸鎖乳突筋は、後頭部の乳様突起と呼ばれる部分から鎖骨、胸骨までつながっています。顔を横に向けたときに首に浮き出る筋肉です。ここをストレッチしたり、指圧したりしてもみほぐすこともお勧めです。
二つの特効ツボを刺激することと合わせ、胸鎖乳突筋をほぐせば、より大きな効果が期待できるでしょう。
この記事は『壮快』2019年9月号に掲載されています。