ゴーヤの有効成分「チャランチン」は「植物インスリン」とも呼ばれるほど、血糖値を下げるインスリンの分泌を促します。さらに、血糖値を上げるグルカゴンにも作用するため、血糖値を上げ過ぎず下げ過ぎず、ちょうどよい具合にとどめることができるのです。【解説】下津浦康裕(下津浦内科医院院長)
解説者のプロフィール
下津浦康裕(しもつうら・やすひろ)
下津浦内科医院院長。福岡大学医学部卒業。久留米大学医学部や聖マリア病院消化器内科医長などでの勤務を経て、1985年に下津浦内科医院を開業。同年にORT生命科学研究所を開設。1986年からバイ・ディジタルO-リングテストを臨床に生かし、難病治療の研究に取り組む。
ゴーヤの健康効果
苦み成分に健康効果たっぷり!
2019年7月22日に放送されたテレビ番組『名医のTHE太鼓判!』(TBS系)に、私がゴーヤ博士として出演し、血管障害対策の食べ物としてゴーヤ(にがうり)を紹介したところ、大きな反響がありました。
実際、私のクリニックには、糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満、ガンなど、難病を患っている患者さんが多く来院されます。私はそうしたかたがたに、ゴーヤを積極的にとることを勧めています。
ゴーヤの旬は7〜8月と言われ、その時期は、全国のスーパーで大きなゴーヤを安価で手に入れることができます。
ゴーヤは昔から、民間療法に用いられてきました。もともと「体にいい」というイメージがあったゴーヤですが、近年は機能性食品として大きな注目を集めるようになりました。
日本だけでなく、アメリカ、ヨーロッパ、中国、東南アジアなど、世界各国で薬理効果に対する研究が進められています。
2008年、中国科学院・上海薬物研究所とオーストラリアのガーバン医学研究所の共同研究で、ゴーヤから抽出した数種類の化合物に、インスリンのように血糖を下げる働きがあることがわかりました。
注目の成分は「チャランチン」と「モモルデシン」
ゴーヤの有効成分の中でも、特に注目したいのは、「チャランチン」と「モモルデシン」です。
チャランチンは脂溶性のたんぱく質で、「植物インスリン」とも呼ばれるほど、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌を促します。血糖値のほか、血中のコレステロール値を下げる働きもあります。
チャランチンのさらに優位な特徴は、インスリンだけでなく、血糖値を上げるホルモンであるグルカゴンにも作用する点です。これにより、血糖値を上げ過ぎず、下げ過ぎず、ちょうどよい具合にとどめることができるのです。
モモルデシンは、ゴーヤ特有の苦み成分です。ゴーヤの苦みが苦手な人も多いでしょうが、「良薬口に苦し」という言葉のとおり、この苦みにこそ、多くの健康効果が含まれています。
モモルデシンには、肝機能を高める作用、血糖値の降下作用、コレステロールの低下作用があります。また、血圧が高めの場合は下げ、低めの場合は上げる、血圧のコントロール作用もあります。
血液をサラサラにして動脈硬化(加齢や長年の生活習慣により血管が硬くなった状態)を防ぐなど、生活習慣病の予防に効果的な成分です。
ほかにも、ゴーヤは「万能薬」と言っても過言ではないほど、たくさんの健康効果があります。
ゴーヤに含まれる栄養成分の働き
モモルデシン
・血糖降下作用
・肝機能アップ
・コレステロール低下
・血圧を安定させる
チャランチン
・血糖値を安定させる
・コレステロール低下
ビタミンC
・疲労回復
・夏バテ防止
モモルカロシド
・ガン発生の阻害作用
カロテン
・ガンの予防
・近視・老眼予防
サポニン
・抗ガン作用
ゴーヤジュースの基本的な作り方
【準備するもの】
中くらいのゴーヤ…1/4本
バナナ…1/2〜1本
リンゴ…1/2個
水…1カップ程度
※目安の量ですので、お好みで調整してください
※これでも飲みにくい場合、ハチミツを入れてもよいのですが、血糖値が高めのかたは入れないほうがよいでしょう
❶ゴーヤは水でよく洗って縦に切り、中の種とわたをスプーンなどで取り除き、適当な厚さに切る
❷バナナは皮を剥き、適当な大きさに切る。リンゴは皮と芯を取り除き、適当な大きさに切る
❸ミキサーに(1)と(2)を加え、水を入れる
❹ジュースのようになるまで、しっかり攪拌する
❺出来上がり。朝食前か朝食時にいっしょに飲む
●注意事項
・ゴーヤは3時間おきに取ると最も効果が得られると言われますが、朝飲むだけでもOKです
・食事はふだんどおりでかまいません
・苦みが気にならない人は、種やわたを取らずにジュースにすると、なお効果的です
・ゴーヤには子宮収縮作用があるため、妊婦さんは摂取を控えてください
ゴーヤジュースはダイエットにもおすすめ
食生活を変えずに飲むだけでやせた!
ゴーヤは、生で摂取するのが最もお勧めです。ただ、「生でそのまま食べるのは苦いので続かない」という人も多いでしょう。
そこで私が患者さんに勧めているのが「ゴーヤジュース」です。
詳しい作り方は下記でご紹介しますが、ゴーヤとリンゴとバナナに水を加えて、ジューサーで攪拌するだけ。リンゴとバナナを加えると、驚くほど飲みやすくなります。これを毎朝、飲んでください。
私自身も、毎朝ゴーヤジュースを飲んでいます。私の場合、朝ゴーヤジュースを飲むだけで、ほかに食事は変えていないのですが、7カ月間で86kgあった体重が、7kg落ちて、79kgになりました(身長は171cm)。
当院では、糖尿病や高血圧、肝機能の数値が悪いかた、便秘、肥満に悩むかたなどにゴーヤジュースを勧め、見違えるほど数値が改善したかたや、自然とやせたかたがたくさんいらっしゃいます。
また、当院の私以外のスタッフたちもゴーヤジュースを愛飲しています。当院は福岡県久留米市にありますが、使用するゴーヤは近くのゴーヤ農園で採れたものです。その農園で作られているゴーヤは、ほかの地域で作られているものよりも苦みが強いのです。
市販のゴーヤは品種改良され、苦みが抑えられています。しかし、先述のとおり、ゴーヤは苦み成分に健康効果が多く含まれています。苦いゴーヤもゴーヤジュースにすれば、おいしくとることができるのです。
昨年から、久留米市の全面協力を受け、ゴーヤを久留米の新しい名産物にしようという展開があります。
これほどの健康効果があるゴーヤですが、晩秋から冬にかけては出回りません。冬でもゴーヤを取れるよう、久留米産のゴーヤを使って、サプリメントを開発しました。これは、今年から久留米市のふるさと納税の返礼品にも指定される予定です。
しかし、夏は取れたてのゴーヤをゴーヤジュースにして飲むのがいちばんです。ぜひゴーヤジュースを日々の健康に役立ててください。