【正しい歩き方・姿勢】疲れやすい人、O脚の人は「かかと重心」で改善・矯正できる

美容・ヘルスケア

足が疲れやすくて長時間歩くことができない、歩くと腰が痛くなる、ひざが痛い、肩こりがひどい、姿勢が悪い、O脚を治したい、外反母趾が痛い…。これらの悩みの予防・改善に役立つ歩き方が「ゆるかかと歩き」です。人間の体の構造から見て理にかなった歩き方、正しい歩き方、疲れづらい歩き方について、専門家に解説していただいた。

監修者のプロフィール

佐々木政幸(ささき・まさゆき)

日本整形外科学会認定・整形外科専門医。NPO法人腰痛・膝痛チーム医療研究所副理事長。
久我山整形外科ペインクリニック院長。
1996年、慶應義塾大学医学部整形外科学教室入局。済生会宇都宮病院、国立療養所村山病院(現・村山医療センター)、東京都保健医療公社大久保病院などに勤務した後、2010年、久我山整形外科ペインクリニックを開院。一人ひとりにあった丁寧な治療で、患者のQuality of Lifeをできるかぎり向上させることに取り組んでいる。腰痛、ひざの痛み、肩こり、手足のしびれ・しこり、骨粗しょう症などに悩む患者から、厚い信頼を得ている。
▼研究論文・専門分野(NII学術情報ナビゲータ)

解説者のプロフィール

中島武志(なかじま・たけし)

歩行指導専門家。一般社団法人ネイティブウォーキング協会代表。コンディショニングセンター新大阪センター長。ボディケアトレーナー。
患者の足の症状を根本から解決するために、足の医療の先進国アメリカの足病医学を研究、膨大な数の治療や歩行指導のデータを収集して、足の構造上理にかなった、歩き方改善のオリジナルメソッド「ゆるかかと歩き」を開発する。これまで、1800人超(2019年7月現在)の足の症状を改善へと導いてきた。現在では治療実績を頼りに、近畿圏一円はもちろん沖縄や高知、島根などからも患者が来院。2017年末からは、他の治療家からの要請により、東京や福岡、静岡、岡山など全国の治療家にゆるかかと歩きのノウハウを公開、指導している。

※この記事は書籍『足・腰・ひざの痛みが消える「ゆるかかと歩き」』(あさ出版)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。

こんなお悩み、ありませんか?

「外反母趾が痛い」「歩くとなぜか腰が痛くなる」
「足の横幅が広くて合う靴がない」「O脚を治したい」
「歩くとひざが痛い」「肩こりがひどい」「姿勢が悪い」
「足が疲れやすくて長時間歩くことができない」
これらの悩みを改善する歩き方があります。

「歩き方で治るはずがない」と思われるでしょう。
にわかには信じられないかもしれませんが、そんな歩き方が、実際にあるのです。
今回紹介する「ゆるかかと歩き」は、足はもちろん、体の様々な悩みを解決へと導きます。
なぜなら、「ゆるかかと歩き」は人間の体の構造上、理にかなった最も自然な歩き方だからです。

歩く距離より歩き方

最近は、足の健康を維持するため、また、足が弱らないようにと、
「できるだけたくさん歩いていますよ」
「毎朝ウォーキングを頑張っています」
と、歩くことを意識している方は多くなっています。

健康を気にする方が増えたことやウォーキングブームもあり、実際に公園などで歩いている方もよく見かけます。
もちろん、全く歩かなければ足は弱っていきますし、一定の「歩く量」が必要なのは、間違いありません。
しかし、ひざの痛みやだるさ、外反母趾、むくみなどの足の症状の多くは、実は「歩く量」によって変わるものではないのです。
足の健康のために大事なのは「歩き方」です。

「歩き方」。
そう改めて言われて考えてみると、今まで自分の歩き方に疑問を持ったことがない方が、多いのではないでしょうか。

足は二本あって、交互に出せば前に進む――。
せいぜいそれくらいで、その「動かし方」にも良し悪しがあり、それが足の健康を左右する、そんなふうに考えたことはないかもしれません。

最近では食生活に関する情報も 、「食べる量」より何を食べるかというその内容や食べる順番、食べる時間帯といった「食べ方」に注目が集まっています。
健康でい続けるためには、食べる量のコントロールはもう当たり前で、「食べ方」、つまり「質」がさらに重要だと、注目され始めたということです。

体が「何をどう食べるか」によって作られているのと同じように、足も、「どう歩くか」によって作られます。
それは車のタイヤがその性能や寿命以上に、乗り方によって早くすり減ったり、長持ちしたりするのと同じです。
にもかかわらず、「歩き方」にそれほど注意を払っている人は、あまり多くないのではないでしょうか。

鉛筆や箸にも、いわゆる「正しい持ち方」――最も体に負担がなくスムーズに動かすことができる動作――があります。
間違った持ち方でも、字を書いたりご飯を食べたりすることは、できないわけではありませんが、疲れが早く出たり、その持ち方を続けることで体のどこかを痛めたりすることになるでしょう。
他のあらゆる姿勢や動作でも同じことが言えます。

例えば、野球では体の構造上、体に負担のない投げ方をする投手は、比較的故障が少なく、力も発揮しやすいものです。ゴルフでも、正しいフォームのときは大きな飛距離を、力まずとも出すことができます。
同じように、歩き方にも「最も適切なフォーム」があるのです。

正しい歩き方のフォームが崩れてしまうと、足や体に負担がかかり、様々な不調が出てしまいます。
あなたの足や体の不調が、いくら治療をしてもなかなか良くならず、長患いしてしまっている原因は、毎日の歩き方に問題があるのかもしれないのです。

重心の位置を変えれば、足は驚きの軽さに

「ゆるかかと歩き」を取り入れると、具体的にはどんな効果や改善がもたらされるのでしょうか。
その効果を見ていきましょう。
早速ですが、あなたは歩いているとき、大まかに言えばどちら側に重心をかけていますか?

(1)前寄り(前足部側)
(2)後ろ寄り(かかと側)

この質問をすると、その多くが、
「歩くときには前のほう((1))に、力を入れたり、重心をかけたりしています」
とお答えになります。

その理由は「安定するから」「素早く動けるから」などというものが多いのですが、実はこの前寄り(前足部側)に重心をかける歩き方こそが、あなたの足を重く、悪くし、歩きにくくしている原因なのです。

下の(A)のイラストをご覧ください。

横から体を見たとき、体の真下にあるのは、かかとだということがわかります。
前足部の上に体はありません。
体の構造から考えると、「(2)後ろ寄り(かかと側)」に重心をかけた状態が体に負担がないのです。

(B)のイラストを見ればわかるように、前寄り(前足部側)に体重をかけて歩いている方は、言い換えれば前傾して歩いているということ。
「前へ進むのだから、前寄りに重心がかかっているほうが歩きやすいのではないでしょうか」と、言われることがありますが、それこそが大きな誤解です。

実際に今、体を前に傾けて、前足部側に重心をかけて歩いてみてください。

体が前傾した分、足の動きは遅れてしまって前に出にくく、重く、引きずるようになってしまうはずです。
反対に、体を起こし、かかと側に重心をかけて歩くようにしてみると、重さを感じず、足は自然に上がり、楽に歩けることがわかります。

本来、前に進むために出さなくてはいけないのは、体ではなく足です。
足が前に出れば、体は、あとから自然とついてきます。
しかし、残念ながら、足のぐらつきや不安定を嫌い、足の「指」を踏みしめて歩いている方は多くいらっしゃいます。
特にご年配の方に多く、「杖」や「押し車」で歩く習慣になると、前足部側に重心をかけて歩く癖はさらについてしまいます。

体の真下にあるのは、かかとだということを覚えておきましょう。
歩くときは「かかと側」に重心をかけるのが正解なのです。
なので、昔から歩くことを「踵を踏む」「踵を返す」と言うのです。

正確には、歩くときの重心の位置は、くるぶしより2~3cmほど前です。
この位置に重心をかけて歩くと、今まで前足部側に重心をかけていた方は、ほぼ、かかとに重心があるような感覚になるはずです。

「ゆるかかと歩き」は、実際にはかかとに重心がかかるわけではありませんが、前足部側に重心をかける癖を直すために、かかと側に重心をかける感覚で歩くという意味で、「ゆるかかと歩き」と名付けています。

指に力を入れず歩く感覚が不安定に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、「ゆるかかと歩き」を身につけ、重心位置を正しく保って歩くことができるようになれば、足は驚くほど軽くなり、まるで別人の足のようになります。
慣れた頃には、毎日の通勤や散歩が、疲れ知らずで、とても楽しいものになるでしょう。

正しい立ち方を身につける

ここからは実際に、「ゆるかかと歩き」の方法をご紹介します。

人間の体の構造上、理にかなった歩き方をするためには、まず、理にかなった立ち方を身につける必要があります。
では、人間の体の構造上、理にかなった正しい立ち方とは、どんな立ち方でしょうか。

上の写真をご覧ください。
正しい立ち方は横から見たときに、●印の4箇所が、縦に一直線に並んだ状態です。
どのようにしたら、このように立つことができるのでしょうか。
下の6つのポイントをおさえながら、立ってみましょう。

正しい立ち方をすると、どんな感覚でしょうか。
ものすごくお尻を突き出しているように感じた方もいるかもしれません。
しかし、鏡で確認してみると、お尻が突き出ていることはなく、体は真っ直ぐなことがわかるはずです。

お尻を突き出しているように感じるのは、今まで胸を反らし、お腹を突き出すような反り腰で立っていたからです。
胸が反ると、その分、顎を引くことになり、ひざもぴんと伸びてしまいます。

この状態は、体の構造上、無理があり、様々な箇所に負担が大きくかかってしまいます。
また、この立ち方のせいで、実際よりもお腹が出ている、太っているように見えてしまっている方はとてもたくさんいらっしゃいます。

もし、正しい立ち方をしてみて腰が痛いと感じるなら、それも「反り腰」が原因です。
反り腰の方はある程度、改善させてから正しい立ち方に挑戦しましょう。
とても簡単な反り腰の改善方法を、ご紹介します。

(1)立った姿勢で顔を下に向けます。
(2)足の甲を見ます。
(3)そのままの姿勢で、顔だけ戻して正面を見ます。

これだけで、反り腰は改善されます。
反り腰の方は、(1)のときに足の甲が見えないはずです。
信号待ちをしているとき、電車の中でなど、ふと気づいたときに、都度、行うといいでしょう。
(1)のときに足の甲が見えるようになったら、上図の「正しい立ち方」に挑戦しましょう。

ゆるかかと歩きを身につける

正しい立ち方の次は、いよいよ、「ゆるかかと歩き」の方法です。

「ゆるかかと歩き」で最も大切なのは、「かかと側重心で歩くこと」です。
歩くときの重心の位置は、正確には、くるぶしより2~3cmほど前です。

しかし、実際に歩くときの意識としては、かかと側に重心をかけるという意識でOKです。
ただ、「かかと側に重心をかけましょう」と言っても、なかなか難しいと思います。
最も簡単に、「ゆるかかと歩き」ができる方法をお教えしましょう。

下の図解をご覧ください。
この方法で歩くと、前足部側にはあまり重心がかからず、かかと側重心で歩けます。

足の指をほとんど使っていないように感じるかもしれませんが、それで大丈夫です。
なぜなら、今まで足の指を過剰に使いすぎていたことで足の指を使っていないように感じるだけだからです。
足を前に踏み出したときに、重心はかかとから指のほうに自然に移動しています。
そのため、 「かかと側重心」を意識するだけで十分なのです。

「ゆるかかと歩き」で歩くと、足がふだんより上がっているのを実感できるかと思います。
足は、足のくるぶしの位置まで上げるのが、理想です。
多くの方はきちんと足を上げて歩く習慣がないので、意識的に足を上げるようにしましょう。
最初は鏡を見ながら、足の上がり具合を確認すると良いでしょう。

「ゆるかかと歩き」の方法がわかっても、すぐにそれをふだんの生活で実践することはなかなか難しいかもしれません。

もっともっと、この素晴らしい歩き方を、多くの人に身につけていただきたいと強く思います。
遠くない未来に、必ず、あなたの体にうれしい変化をもたらすことでしょう。

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ゆるかかと歩き
著者:中島武志(歩行指導専門家)
監修:佐々木政幸(整形外科専門医・久我山整形外科ペインクリニック院長)
大切なのは、「歩く距離」よりも「歩き方」だった▼ゆるかかと歩きを身につければ、一生ラクに歩けるようになる▼重度の外反母趾が約4カ月で改善▼腰痛・ひざ痛が自然と解消▼足の横幅がどんどん小さくなり太もも・ふくらはぎも細くなる▼O脚、魚の目、タコ、巻き爪、むくみにも効果大

※この記事は書籍『足・腰・ひざの痛みが消える「ゆるかかと歩き」』(あさ出版)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。

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