【糖尿病と果物】実は「朝のフルーツ」は血糖値が上がりづらい おすすめの治療食はコレ!

美容・ヘルスケア

糖尿病の患者さんは、果物を食べてはいけないと思っている人が多いようです。果糖の影響で、中性脂肪値や血糖値が上がると医師が注意するからです。しかし、それは大きな誤解。果物の果糖は、満腹時に食べれば確かに中性脂肪に変わりますが、空腹時にとるとエネルギーの代謝に使われるので、脂肪に変わることはありません。また、ブドウ糖はインスリンの分泌を上昇させますが、果物の果糖はインスリンへの刺激作用がありません。特に、食物繊維を多く含む果物は、GI値(血糖値の上昇の度合いを表す数値)が低く、血糖値が上がりにくいのです。【解説】上瀬英彦(上瀬クリニック院長)

解説者のプロフィール

上瀬英彦(じょうせ・ひでひこ)

上瀬クリニック院長。1947年生まれ。名古屋大学医学部卒業。名古屋大学医学部附属病院分院、松阪中央総合病院を経て、82年、上瀬クリニック開院。著書に『カロリー制限でもない 糖質制限でもない 第3の糖尿病食「朝フル・まご和食」』(ルネッサンス・アイ)など。
▼研究論文と専門分野(CiNii)
▼「朝フル・まご和食」のすすめ(Web医事新報)

和食は優れた健康食だが酵素が足りない

「糖尿病は治らない」「合併症を予防するために一生薬を飲み続けなければならない」……そう思っている人が多いのではないでしょうか。しかし、それは正しくありません。

主な原因となる、食事を変えれば、予防できるどころか、治すことも可能なのです。

私は長年、食事と生活習慣病の関係を研究し、生活習慣病を予防する理想の食事を模索してきました。

生活習慣病のなかでも、とりわけ食事の影響が大きいのは糖尿病です。糖尿病は、糖質や脂質のとり過ぎが原因だといわれています。しかし、ほんとうにそうでしょうか。

私の研究では、ご飯や魚、食物繊維の多い食品の摂取が減り、小麦食品(パンやパスタなど)や油っこい肉料理が増えたこと、つまり、和食離れが大きな原因だと考えられます。

和食は、1977年に米国で報告された「マクガバン・レポート」で、ガンや慢性疾患に予防効果のあることがわかりました。それ以来、健康によい食事として、世界中で認められています。

しかし、和食にも欠点があります。それは塩分が多めで、カリウムを多く含む生の野菜や果物が少ないことです。つまり、塩分が多いだけでなく、塩分を排出するカリウムも少ないわけです。これでは、血圧の高い人には推奨できません。

和食は9割までは理想的な食事なのに……と、思っていたときに出合ったのが、米国のエドワード・ハウエル博士が提唱した「酵素栄養学」でした。

酵素は、あらゆる生命活動に必要な栄養素(たんぱく質)です。体内でできる酵素は、大きく分けると、食べた物を消化する「消化酵素」と、新陳代謝や免疫活動に関係する「代謝酵素」の二つがあります。

ここで問題となるのが、体内の酵素の量には限りがあるということです。

例えば、加熱された食品を多量にとっていると、体内の消化酵素はどんどん減ってしまいます。そこで大事なのが、体内酵素の無駄遣いをしないことと、体の外から酵素(食物酵素)を補うことです。

食物酵素は、生の食品(果物、野菜、魚など)や発酵食品(納豆、甘酒など)に多く含まれています。生の食品をたくさんとって酵素を補給することが、酵素栄養学では健康長寿につながると考えます。

日本の優れた健康食である和食と、和食に不足している酵素。この二つを組み合わせ、私が考案した食事療法が、「朝フル・まご和食」です。

簡単にいうと、朝食は酵素がたっぷりのフルーツ食で、昼食と夕食は「ま・ご・わ・や・さ・し・い」のそれぞれの頭文字の食材(豆類、ゴマ、ワカメ、野菜、魚、シイタケ、イモ類など。詳細は下項参照)を基本にした和食をとる、というものです。

私は、すぐに自分でこの食事療法を試しました。すると、180mg/dlあった中性脂肪値が、1ヵ月で126mg/dlまで下がったのです(基準値は30~149mg/dl)。それまで、何をしても改善しなかったので驚きました。それに、3ヵ月で体重が6kg減り、とても体調がよくなりました。これが15年ほど前のことです。

患者全員のA1cが改善

私が食養の研究をしているのを知っていた、大学の同級生(整形外科医・当時57歳)から、連絡をもらったのもそのころでした。診察が終わると体がだるいので、血液検査をしたところ、空腹時血糖値が360mg/dl、ヘモグロビンA1cが8.6%もあったそうです。

食事療法は、きちんと遵守しなければ、効果は得られません。彼ならやってくれるという信頼感があったので、「朝フル・まご和食」を勧めました。

「朝フル・まご和食」でヘモグロビンA1cが正常化!14年間維持!

効果はすぐに現れました(上のグラフ参照)。1ヵ月後の血液検査でヘモグロビンA1cが7.4%になり、2ヵ月後には5.4%と、正常域に入ったのです。薬はいっさい飲んでいません。さらに、体重も7kg減量でき、体のだるさもすっかりなくなったそうです。

このとき、「朝フル・まご和食」は糖尿病の治療食になると、私は確信しました。彼はその後もこの食事を続け、14年たった今も、正常値を保っています。

それ以来、私は自信を持ってこの食事を糖尿病の患者さんに勧めています。その際、最初に薬による治療もあることを説明し、患者さんにどちらの治療を受けたいか選んでもらいます。そのうえで、希望者にだけ「朝フル・まご和食」を行ってもらいます。

これまで当院で「朝フル・まご和食」を行った2型糖尿病の患者さんは全員、ヘモグロビンA1cが改善しました。

(1)ヘモグロビンA1c

(2)空腹時血糖値

上のグラフはその結果をまとめたものです。集計した患者さんは、40人中、男性24人(平均年齢51歳)、女性16人(同60.2歳)です。

「朝フル・まご和食」を始めて約5ヵ月後には、ヘモグロビンA1cの平均値が8.9%から6.4%まで降下。空腹時血糖値の平均値も219.4mg/dlから114.0mg/dlまで下がりました。

糖尿病と診断されるのはヘモグロビンA1cが6.5%以上ですから、治療の目標値は6.4%以下に設定しました。それを達成した人は27人で、全体の67.5%でした。

ただし、初診時のヘモグロビンA1cが6.5~8%未満だった群(16人)は、全員が達成し、重症の10%以上だった群(11人)でも5人と半数近くが達成しています。6.4%までは下がらなかった人たちも、全員数値の改善が見られました。

(3)ヘモグロビンA1c6.4%以下の達成率
人数:40人

男性:24人(平均51歳)
女性:16人(平均60歳)
「朝フル・まご和食」
開始時のヘモグロビンA1c
• 10%以上 11人
• 8~10%未満 13人
• 6.5~8%未満 16人
期間:約5ヵ月

効果の現れ方に個人差がありますが、これはどれだけ「朝フル・まご和食」をきちんとできたかの差だと考えられます。きちんと行えば、必ずよい結果が出るはずです。

「朝フル・まご和食」のよいところは、糖尿病への優れた改善効果だけでなく、めんどうなカロリー(エネルギー)計算が不要で、食べる量にも制限がないことです。ハードルは高くありません。どんな人でも挑戦できると思います。次項では、そのやり方をご紹介しましょう。

糖尿病の人も朝の果物なら安心

私が糖尿病の患者さんに勧めている「朝フル・まご和食」は、糖尿病の治療食として、優れた効果を発揮しています。きちんと実行している患者さんは皆さん、薬に頼らず血糖値が順調に下がって安定しているのです。

朝食はフルーツのみで、昼食と夕食は「ま・ご・わ・や・さ・し・い」のそれぞれ頭文字の食材を基本とする和食をとる、という簡単な食事療法です。

ちなみに、「ま」は豆類、「ご」はゴマ(ナッツ類)、「わ」はワカメ(海藻類)、「や」は野菜、「さ」は魚(魚介類)、「し」はシイタケ(キノコ類)、「い」はイモ類のことです。

糖尿病の患者さんは、果物を食べてはいけないと思っている人が多いようです。果糖の影響で、中性脂肪値や血糖値が上がると医師が注意するからです。

しかし、それは大きな誤解。果物の果糖は、満腹時に食べれば確かに中性脂肪に変わりますが、空腹時にとるとエネルギーの代謝に使われるので、脂肪に変わることはありません。

また、ブドウ糖はインスリンの分泌を上昇させますが、果物の果糖はインスリンへの刺激作用がありません。特に、食物繊維を多く含む果物は、GI値(血糖値の上昇の度合いを表す数値)が低く、血糖値が上がりにくいのです。

実際、空腹時に75gのブドウ糖を摂取して血糖値の経過を調べる負荷試験と同じ条件で、果物の負荷試験を行ったところ、食後血糖値はほとんど上がりませんでした(下のグラフはその一例)。ですから、糖尿病の人も朝の空腹時なら、安心して果物を食べてください。

空腹時のフルーツは血糖値を上げない!(糖質:150g)

太っている人は3ヵ月で適正体重までやせる

では、「朝フル・まご和食」のやり方を紹介しましょう。

●朝食

朝食は、果物なら何を食べてもかまいませんし、好きなだけ食べてけっこうです。季節の果物を中心に、手に入りやすいバナナやリンゴ、キウイフルーツなどを食べてください。手作りのジュースやスムージー(ミキサーで果物を攪拌した飲み物)にしてもいいでしょう。

冷たい果物が苦手な人は、40度前後のお湯で5~10分温めてください。ただし、65度以上の熱が加わると酵素が失われますから、注意が必要です。

果物は必ず空腹時に食べて、そのあと30分はほかの物を食べないようにします。この2点を守れば、血糖値が上昇することはありません。

●昼食・夕食

主食はご飯です。お米には、レジスタントスターチという難消化性でんぷんが含まれていて、血糖値の上昇を抑える働きがあるといわれています。

白米でもかまいませんが、玄米か五分づき、七分づきならなおいいでしょう。食物繊維の多い大麦や雑穀、アズキなどを少量加えると、血糖値の上昇が緩やかになるのでお勧めです。

パン、うどん、パスタ、ラーメンなどの小麦食品は、GI値が高めで血糖値を上げやすいので、できるだけ控えましょう。

副食は、「まごわやさしい」の食材(下記参照)を意識して、積極的にとります。

「ま」豆類
大豆、エンドウマメ、アズキ、インゲンマメ、ソラマメ、黒豆、豆腐、納豆、みそ、しょうゆ、きな粉など。

「ご」ゴマ(ナッツ類)
ゴマ、ピーナッツ、クリ、アーモンド、クルミなど。

「わ」ワカメ(海藻類)
ワカメ、ノリ、ヒジキ、モズク、コンブ、メカブなど。

「や」野菜
ニンジン、タマネギ、カボチャ、キャベツ、ナス、キュウリ、トマト、大根、ゴボウなど。

「さ」魚(魚介類)
アジ、サバ、イワシ、サケ、マグロ、カツオ、イカ、タコ、エビ、貝類など。

「し」シイタケ(キノコ類)
シイタケ、シメジ、エノキ、エリンギ、マイタケ、ナメコなど。

「い」イモ類
サツマイモ、ジャガイモ、サトイモ、ヤマイモ、、コンニャクなど。

必ずとってほしいのは、酵素の豊富な生の野菜や魚です。
野菜なら、大根おろし、ヤマイモの細切り、キュウリやワカメの酢の物、キャベツのせん切り、野菜サラダなどです。ぬか漬けや納豆、キムチ、みそ汁のような発酵食品も酵素が多いのでとりましょう。

サバやサンマなどの青魚に豊富なEPADHAなどの脂肪酸は、動脈硬化の抑制に役立ちます。魚はできるだけ、刺し身(生)でとりましょう。加熱する場合、煮るか、焼くことです。フライや天ぷらは避けてください。

現在、糖尿病の合併症の原因物質として注視されているのがAGEs(終末糖化産物)です。これはたんぱく質の変性(糖化)によりできる非可逆的な(元に戻らない)物質で、体内でできる場合と、食べ物でできる場合があります。食べ物では、油で揚げたり、高温で焼いたりすることで最も増えます。

昼食や夕食は、食べる順番も大事です
まず非加熱食品(生の野菜や海藻など)をとり、その次に、加熱食品をとります。

加熱食品は、食物繊維の多い物(野菜の煮物や和え物、蒸し物など)、たんぱく質の多い物(魚介類、豆類など)の順で食べ、最後にご飯を食べます。

ご飯の前にたんぱく質である魚をとると、インクレチンという消化管ホルモンの分泌が促され、食後の血糖値の上昇が抑制されることもわかっています。

最後に食べるご飯は自然に少量になります。漬物やみそ汁といっしょにとるといいでしょう。食後デザートは禁止です。

こうして食べる順番を守り、肉や油っこい料理を控え、腹八分めに抑えることが基本です。

●間食・飲み物

おやつは、たまに食べるのはいいものの、習慣化しないことです。我慢できない場合は、果物やナッツ類を食べましょう

飲み物は、お茶、水、ミネラルウォーター、手作りジュース、ブラックコーヒー、紅茶、豆乳など、甘くない物が原則です。

多くの清涼飲料水(市販のジュース、コーラなど)やスポーツドリンクには、コーンシロップから作った果糖ブドウ糖液糖(HFCS)が使われています。これは糖の吸収が早く、血糖値を急激に上げるので厳禁です。

なお、「朝フル・まご和食」をしばらく続けると、一時的に体調がくずれる人がいます。これは好転反応ですから、心配しないで続けてください。

通常、この食事を続けると、翌月から血糖値に変化が出てきます。また太っている人は体重が減りますが、3ヵ月以降は横ばいになります。おそらく、その体重がその人の適正体重なのでしょう。

《「朝フル・まご和食」のやり方》
朝食 果物のみ食べる。
季節の果物を中心に、バナナやリンゴ、キウイフルーツなどをとる。
好きなだけ食べてよい。
手作りのジュースやスムージーにしてとってもよい。

昼食・夕食 主食はご飯(五分づき、七分づき)、副食は「まごわやさしい(上記参照)」を中心に、できるだけ旬の食材を選ぶ。
必ずとってほしいのは生の野菜や刺し身。納豆や漬物など発酵食品も加えたい。
焼き魚にはたくさんの大根おろしを添え、煮魚にはショウガをたっぷり入れる。

食べる順番
非加熱食品(生野菜、発酵食品、刺し身など)
加熱食品・食物繊維の多い物(野菜の煮物や和え物、蒸し物など)
加熱食品・たんぱく質の多い物(魚介類、豆類など)
ご飯、みそ汁、漬物、梅干し

間食
原則しない。無理な場合はナッツ類や果物など。
飲み物
水、お茶、紅茶、ブラックコーヒー、手作りジュース、アルコール(適量)

この記事は『壮快』2019年10月号に掲載されています。

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