健康長寿に役立つことがきちんと科学的に証明されている物質があります。それは「ポリアミン」という物質です。特に納豆に代表される大豆の発酵食品はポリアミンの宝庫といえます。「キャベツ納豆」は、ポリアミンを増やす目的ではお勧めの食べ方だと思います。【解説】早田邦康(自治医科大学附属さいたま医療センター教授)

解説者のプロフィール

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早田邦康(そうだ・くにやす)

医学博士。自治医科大学附属さいたま医療センター循環器病臨床医学研究所所長、自治医科大学大学院医学研究科教授。専門分野は消化器一般外科、侵襲と免疫、がん免疫、がん悪液質のほか、ポリアミンに関する研究論文が多数ある。著書に『納豆一日一パックの若返り術』(グラフ社)などがある。

ポリアミンの健康長寿効果を世界で初めて発表

世の中には、「体によい」「健康長寿に役立つ」と言われながら、実は、そのことが科学的に証明されていない物質が数多く存在します。

また、摂取しても、その有効成分が体に吸収されているか、臓器や組織に届いているかどうか自体、不明のものが少なくありません。

そんな中、健康長寿に役立つことが、きちんと科学的に証明されている物質があります。しかも、その物質は、日常的な食材で摂取でき、摂取すれば体内に増え、臓器や組織に到達することも分かっています。

それは、「ポリアミン」という物質です。ポリアミンは、300年以上前に発見されましたが、私たちの健康にどう関係しているかは、ほとんど分かっていませんでした。

ところが、近年、私たちの研究グループが行った発表をきっかけに、ポリアミンは急速に注目を浴びるようになったのです。

ポリアミンは、全ての生物の細胞内で作られます。人間や動物はもちろん、微生物や植物の細胞内でも作られます。

ですから、私たちが普段口にしているさまざまな食物にもポリアミンが含まれます。中でも、ポリアミンを多く含むのが、大豆キノコ野菜などです。特に、納豆に代表される大豆の発酵食品は、ポリアミンの宝庫といえます。

ポリアミンは、分子量(物質の大きさを示す数値。通常、およそ1000を超えると腸管から吸収されない)が200程度の小さい物質で、そのまま体に吸収され、血中に入ってさまざまな臓器や組織に届きます。

私は、免疫関係の研究中に、ポリアミンの名前が出てきたことから、興味を抱いて研究を始めました。そして研究を重ねて、ポリアミンで寿命が延長できること、つまり「ポリアミンによって健康長寿を達成できる」ことをつきとめ、2009年に、世界で初めて論文発表を行いました。

それは、次のような動物実験についての報告でした。

同じ種類・週齢のマウスを2群に分け、A群にはポリアミンを豊富に含むエサを、B群には、ポリアミンを普通程度に含むエサを与えて飼育しました。すると、50週齢以降、両群の生存率の差が開き始め、A群のほうが、明らかに長生きしました。

88週齢(人間でいうと70〜80歳)まで生き残ったマウスを比べると、A群は食欲が衰えず、毛並みや毛ヅヤがよく、活発に動き回っていました。

B群は、食欲が落ちて体重が減り、毛がボサボサで動きも鈍くなっていました。実験を行った私自身も驚くほど、老化の程度に大きな差が出たのです。

各群のマウスの腎臓・肝臓の組織を顕微鏡で見ると、A群はしっかり細胞が残っていましたが、B群は細胞が減ってまばらでした。ポリアミンを多くとった群では、臓器そのものの老化が抑制されていたのです。

《ポリアミン摂取で老化が抑制された!》
同じ種類、同じ日に生まれたマウスを、ポリアミンを豊富に含むエサを与えるA群と、普通のエサを与えるB群に分けて飼育。88週齢(人間でいう70~80歳)に、老化度を比較。

画像: A群(ポリアミンを豊富に含むエサを与えた群) 毛並みや毛ヅヤがよく、動きも活発で、若々しさを維持している。

A群(ポリアミンを豊富に含むエサを与えた群)
毛並みや毛ヅヤがよく、動きも活発で、若々しさを維持している。

画像: B群(普通のエサを与えた群) 毛がボサボサで動きも鈍く、いかにもヨボヨボに年老いている。

B群(普通のエサを与えた群)
毛がボサボサで動きも鈍く、いかにもヨボヨボに年老いている。

諸悪の根源は遺伝子の「異常メチル化」

では、ポリアミンはどんなしくみで老化を抑制するのでしょうか。

ここで深く関係するのが、遺伝子の「異常メチル化」という現象です。なお、メチル化とは、「メチル基」というもの(部分構造)が結合することです。

遺伝子は、A・G・T・Cで表される四つの物質(アデニン・グアニン・チミン・シトシン)の配列で、情報を伝えるようになっています。その配列を転写・翻訳した情報に基づいてたんぱく質を作り、すべての生体活動を営むのです。

その際、遺伝子に「CGCGCG」という組み合わせ配列があると、「ここから先に重要な情報があるから読み取って」という合図です。

遺伝子を構成する4物質のうち、C(シトシン)だけには、メチル化が起こり得ます。Cにメチル化が起こると、「ここから先を読み取って」の合図が明確に働かなくなり、必要なたんぱく質ができにくくなります。

逆に、もともとメチル基がついている遺伝子から、メチル基が外れることもあります。これを「脱メチル化」といいます。

これらが不必要に起こるのが、遺伝子の「異常メチル化」です。これが起こると、代謝や生体活動に乱れや不足、過剰などが生じます。

最近では、このことが、老化やさまざまな生活習慣病、認知症などを招く大きな要因だと分かってきています。

生活習慣病は、違う臓器の病気でも、同時多発的に起こることが多いものです。それは、全身の細胞にある遺伝子の異常メチル化が引き金になっているからだ、ということも分かってきたのです。

ポリアミンの補給に納豆は最適

異常メチル化はいろいろな悪さをしますが、中でも注目されているのが、体内の「慢性炎症」との関わりです。

現在では、動脈硬化や多くの生活習慣病は、慢性炎症が深く関わって起こることが明らかになっています。

免疫細胞の表面には、慢性炎症を起こす「LFA-1」という物質があります。LFA-1は、加齢とともに増えることが分かっていますが、それにも、遺伝子の異常メチル化が深く関与しています。

したがって、老化や生活習慣病を抑制するには、異常メチル化を抑えてLFA-1を減らし、慢性炎症を防ぐことが重要です。

そのカギとなるのが、実はポリアミンなのです

私たちは、ポリアミンを作れないようにした細胞で、遺伝子の異常メチル化や、LFA-1の量を調べてみました。

すると、ポリアミンが作れなくなった細胞では異常メチル化が起こり、LFA-1も増えることが分かったのです。

逆に、ポリアミンを加えた細胞では、異常メチル化が抑制され、同時にLFA-1が減ることも分かりました。

細胞だけではありません。人間やマウスでも同じです。

人間やマウスでは、年を取ると体内でポリアミンを作る力が衰え、年齢とともにLFA-1が増えていきます。ところが、年齢に関係なく、ポリアミン濃度が高くなるほど、LFA-1が少なくなります。

実際に、ポリアミンの多い食品を1年間程度食べ続けたボランティアの方々の体内では、LFA-1が減りました。同様に、ポリアミンの多いエサを食べ続けたマウスもLFA-1が減り、寿命が延びることが分かったのです。

つまり、年を取っても、十分なポリアミンをとっていれば、アンチエイジングが実現できることが証明されたのです。

ポリアミンは、前述の通り、大豆、大豆製品、キノコ、野菜などに多く含まれます。中でも含有量が多く、安価で手軽に摂取できるのが、納豆です。

納豆は、代表的な高ポリアミン食であると同時に、食物繊維も豊富に含んでいます。実は、食物繊維をとると、腸内細菌が活性化されることを通じても、ポリアミンが増えると考えられています。ですから、納豆は、二重の意味でポリアミンを増やすといえます。

その点から考えると、納豆の食べ方として提案されている「キャベツ納豆」は、納豆にキャベツの食物繊維がさらに加わるので、ポリアミンを増やす目的ではお勧めの食べ方だと思います。

▼「キャベツ納豆」の作り方

ただし、血栓症の治療薬であるワーファリンを使っている人は、納豆を食べるのは避けてください。納豆に豊富なビタミンKが、薬剤の作用を弱くするからです。

全般的に、日本に伝わる和食をとるようにすると、大豆製品やキノコ、野菜が増えるので、ポリアミンの摂取が多くなります。

伝統を大切にしつつ、キャベツ納豆なども活用し、たっぷりポリアミンをとって、若さと健康を保ちましょう。

※この記事は『安心』2019年10月号に掲載されています。

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