脳卒中(脳血管障害)の一種で、脳の血管がつまる疾患を脳梗塞といいます。脳血管の末端の細い血管がつまる「ラクナ梗塞」、脳主要血管の内側にコレステロールの塊が生じ、血管がつまる「アテローム血栓性脳梗塞」、心臓内部に生じた大きな血栓が脳に飛んで脳血管をつまらせる「心原性脳塞栓症」の3つに分類されます。t-PAや血栓回収療法などが行われており、後者については適応が広がっています。

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

森本将史(もりもと・まさふみ)

医療法人社団明芳会横浜新都市脳神経外科病院院長。1993年、京都大学医学部卒業。2002年、同大大学院医学研究科修了。Leuven大学(ベルギー)留学後、国立循環器病センター脳神経外科などを経て、2010年より現職。医学博士、日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医日本脳神経血管内治療学会認定脳血管内治療専門医
▼専門分野と研究論文(CiNii)
▼横浜新都市脳神経外科病院(公式サイト)

一刻も早い受診が重要な脳梗塞

早期発見・治療のために必要なこと

脳卒中(脳血管障害)の一種で、脳の血管がつまる疾患を脳梗塞といいます。
脳血管の末端の細い血管がつまる「ラクナ梗塞」、脳主要血管の内側にコレステロールの塊が生じ、血管がつまる「アテローム血栓性脳梗塞」、心臓内部に生じた大きな血栓が脳に飛んで脳血管をつまらせる「心原性脳塞栓症」の3つに分類されます。心原性脳塞栓症を発症すると、大きな血栓が太い血管をつまらせることが多いです。

脳梗塞の発症リスクには、食生活の欧米化や運動不足などによる動脈硬化のほか、ストレスや不規則な生活習慣も挙げられます。現代社会のこうした背景も関係してか、30~40代で発症するケースも増えています。

初期症状や前兆は顔の麻痺、上肢の麻痺、言語障害

脳梗塞の特徴的な症状である顔の麻痺(Face)、上肢の麻痺(Arm)、言語障害(Speech)の3つと、発症時刻(Time)の頭文字を組み合わせた「FAST」というスローガンも提唱されています。症状が一つでも生じたら、救急車を呼びましょう。なお、こうした症状が一過性に出現してすぐに改善するTIA(一過性脳虚血発作)を放置しない方がよいです。脳梗塞の前触れであることも多いため、症状がおさまった後でも一度は専門科に受診しましょう。

画像: 初期症状や前兆は顔の麻痺、上肢の麻痺、言語障害

治療の主流は血栓回収療法

脳梗塞の予防に王道はありません。予防のためには基礎疾患のコントロールや、動脈硬化の予防が重要です。例えば、高血圧や高脂血症、糖尿病の予防・改善をはじめ、定期的な血液検査、バランスの良い食事、良質な睡眠といった規則正しい生活を意識すること。普段の自分の血圧を知っておくのもよいでしょう。また、過去に脳や脳血管に異常を指摘されたことのある人は、症状がなくても年1回は検査を受けることをおすすめします。

脳梗塞を発症すると、時間が経つほど脳組織がダメージを受けるため、速やかな救急搬送および専門の医療機関での治療が必要となります。治療の中心は、血栓を溶かす薬剤を点滴で注入する「t-PA」と、足の付け根の動脈からカテーテルを挿入して血栓を直接取り除く「血栓回収療法」です。従来、t-PAは4・5時間、血栓回収療法は8時間以内に行わなければならないとされていましたが、血栓回収療法については、適応範囲が拡大しています。症例によっては24時間以内でも有効という論文も発表されています。太い主要血管がつまった症例では今後、この血栓回収療法が主流になるでしょう。

画像: 治療の主流は血栓回収療法

医療機関選びのポイント

DPCデータから見る患者層

画像1: DPCデータから見る患者層

DPCデータ(※)に基づく各病院の治療件数については、必ずしもその数が質に直結しません。例えば、本データには治療後に院内のリハビリテーション病棟に移った症例が含まれないため、院内リハビリを要する症例を多く手がける病院の件数は、実情より少なくなっています。

(※)DPCデータとは、「診療群分類別包括払い(DPC)制度」に基づくデータのこと。DPC制度に参加した病院は、入院患者ごとに「診断名」「治療方法」「入院日数」などのデータを厚生労働省に提出する義務がある。同省では年に1回、DPC制度に基づく疾患分類別の症例数(退院患者数)を、参加病院別に公表している。

とはいえ治療件数は、一定の治療レベルを推し量る目安にはなります。迅速な対応が必須だけに、病院到着から60分以内に治療を開始できているか、梗塞の場所が同じでも患者により病状が異なるだけに、正確な診断ができているかといった点が治療成績に関わります。

また、自宅復帰率、退院後の自立度など、厚生労働省の定める基準を満たした脳卒中専用の集中治療室「SCU(脳卒中ケアユニット)」を備えていれば、急性期医療におけるチーム医療体制が整っている可能性が高いといっていいでしょう。

画像2: DPCデータから見る患者層

日本脳神経血管内治療学会が認定する脳血管内治療専門医の在籍数も、血栓回収療法を行う体制の質を評価する目安となります。今後は、脳血管内治療専門医の3人以上の在籍や、24時間治療が可能な体制など、一定の基準を満たした施設が中心となって脳血管内治療を担っていくことを目指す制度もできる予定です。各病院のホームページなども参考にしつつ、信頼できる医師に相談するとよいでしょう。

DPCデータに基づく
脳梗塞 医療機関
地域別ランキング

北海道・東北

地域
順位
医療機関名全国
TOP50
所在地患者総数脳血管内治療脳血管内治療
専門医
SCU
(脳卒中ケアユニット)
1旭川赤十字病院6北海道旭川市605301
2札幌白石記念病院7北海道札幌市白石区600494
3広南病院12宮城県仙台市太白区556545

北陸・甲信越

地域
順位
医療機関名全国
TOP50
所在地患者総数脳血管内治療脳血管内治療
専門医
SCU
(脳卒中ケアユニット)
1一之瀬脳神経外科病院長野県松本市400160
2桑名病院新潟県新潟市東区389172
3新潟脳外科病院新潟県新潟市西区350-2

関東

地域
順位
医療機関名全国
TOP50
所在地患者総数脳血管内治療脳血管内治療
専門医
SCU
(脳卒中ケアユニット)
1千葉脳神経外科病院2千葉県千葉市稲毛区809402
2千葉西総合病院15千葉県松戸市522464
3聖麗メモリアル病院17茨城県日立市511351

東海

地域
順位
医療機関名全国
TOP50
所在地患者総数脳血管内治療脳血管内治療
専門医
SCU
(脳卒中ケアユニット)
1伊勢赤十字病院18三重県伊勢市506563
2名古屋第二赤十字病院21愛知県名古屋市昭和区484201
3名古屋医療センター29愛知県名古屋市中区454532

近畿

地域
順位
医療機関名全国
TOP50
所在地患者総数脳血管内治療脳血管内治療
専門医
SCU
(脳卒中ケアユニット)
1順心病院1兵庫県加古川市921211
2国立循環器病研究センター3大阪府吹田市7145411
3大西脳神経外科病院8兵庫県明石市595354

中国・四国

地域
順位
医療機関名全国
TOP50
所在地患者総数脳血管内治療脳血管内治療
専門医
SCU
(脳卒中ケアユニット)
1脳神経センター大田記念病院4広島県福山市671582
2倉敷中央病院11岡山県倉敷市572583
3岡山旭東病院25岡山県岡山市中区462-1

九州・沖縄

地域
順位
医療機関名全国
TOP50
所在地患者総数脳血管内治療脳血管内治療
専門医
SCU
(脳卒中ケアユニット)
1済生会熊本病院5熊本県熊本市南区666502
2熊本赤十字病院10熊本県熊本市東区575822
3聖マリア病院16福岡県久留米市514321

この原稿は『最新治療データで探す 名医のいる病院2020』(発行元・医療新聞社/発売元・永岡書店)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。最新のDPCデータ(※)に基づく全26疾患・治療別、全国8661病院の最新治療実績ランキングを一挙紹介。詳細は下記のリンクよりご覧ください。

(※)DPCデータとは、「診療群分類別包括払い(DPC)制度」に基づくデータのこと。DPC制度に参加した病院は、入院患者ごとに「診断名」「治療方法」「入院日数」などのデータを厚生労働省に提出する義務がある。同省では年に1回、DPC制度に基づく疾患分類別の症例数(退院患者数)を、参加病院別に公表している。

画像: 【脳梗塞の種類と治療法】初期症状や前兆は?DPCデータに基づく地域別(北海道~沖縄)全国病院ランキング
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▼全国の医療機関を手術実績の多い順番で都道府県別にランキング形式で紹介。▼2020年度版では、19年度版より8疾患を追加して、全26疾患のデータを掲載しました。▼さらに、独自調査の名医リストも増ページした充実の1冊となっています。

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