【インフルエンザの予防と対策】マスクの正しい付け方は?うがいは効果なし?ウイルスの生存期間は?

美容・ヘルスケア

これまで手洗いと並んで感染症予防の基本とされてきたうがいですが、インフルエンザ予防に関してはその効果が疑問視され、厚労省の推奨項目から外されました。というのも、インフルエンザウイルスは、のどの粘膜や気管支の細胞に付着してから比較的早期に、細胞の中まで侵入するからです。そこで私は、緑茶のカテキンによるインフルエンザ予防効果に期待して、緑茶のペットボトルを常に傍らに置いておき、1人診察するごとに一口飲むようにしています。

解説者のプロフィール

大谷義夫(おおたに・よしお)

池袋大谷クリニック院長
1963年東京都出身。89年群馬大学医学部卒業。東京医科歯科大学医学部附属病院、九段坂病院、 米国ミシガン大学留学等を経て、2009年、東京医科歯科大学呼吸器内科兼任睡眠制御学講座准教授。同年池袋大谷クリニックを開院。医学博士。日本呼吸器学会専門医・指導医。日本アレルギー学会専門医・指導医。呼吸器内科のスペシャリストとして、テレビ、新聞、雑誌などへの出演や著書も多く、分かりやすい解説が好評。『「呼吸力」でマイナス5歳』(毎日新聞出版)、『医師が教える「1日3分音読」で若くなる! 』(さくら舎)など著書多数。
▼池袋大谷クリニック(公式サイト)
▼専門分野と研究論文(CiNii)

ウイルス性のカゼに抗菌薬は効かない

のどが痛くて、くしゃみやセキ、鼻水が出る。体も重だるいし、熱もありそうだ。こんな症状が出ていたら、99%以上の人が「カゼをひいたかな」と見当をつけるでしょう。
それくらい身近な病気ですが、あなたが「カゼが早く治るように、病院で薬を出してもらおう」と考えているなら大きな誤解をしています。

カゼはウイルスや細菌が鼻や口などから気道に入り、上気道、つまり鼻からのど(喉頭)までの範囲で炎症を起こす病気です。医学的には、急性上気道炎と呼ばれます。そして、カゼの原因となるのは9割がウイルスであり、細菌は1割です。

この「カゼの原因の9割はウイルスである」というのが重要なポイントです。
カゼの原因となるウイルスは、ライノウイルスやコロナウイルスなど、200種類以上が知られています。
しかし、カゼのウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬はないのです。ですから、私のクリニックでは、ウイルス性のカゼ(急性上気道炎)の患者さんには、「栄養をとって安静にしてください」とお話しして、処方薬なしでお帰りいただいています。

安易な抗菌薬の使用が耐性菌を生み出す

以前、病院でカゼに抗菌薬(抗生物質)を処方されたことがあるという人もいるかもしれません。しかし、大きさや構造が細菌と全く異なるウイルスには、抗菌薬は効きません。
昔はウイルス性のカゼに伴う細菌による二次感染で、気管支炎や肺炎が生じるのを防ぐために、抗菌薬が出されることがありました。しかし、現在では、抗菌薬では二次感染を防ぐ効果がないことがわかっています。

安易に抗菌薬を使うと、耐性菌(薬が効かない菌)が生まれ、本当に抗菌薬が必要な際に非常に危険です。
とはいえ、カゼの原因の10%を占める細菌性のカゼなら抗菌薬は有効です。細菌性の特徴は、鼻汁やタンが黄色や緑色になることです。抗菌薬の処方の際には、ウイルス性か細菌性かをしっかり検討する必要があります。

では、市販のカゼ薬はどうでしょう。こうした市販薬はセキ止めや鼻水止め、鎮痛解熱作用のある成分を含んでいますが、症状を無理に抑え込んでいるだけで、決して治しているわけではありません。
もっと言うなら、薬を飲まなくても数日で回復するのがカゼなのです。そもそもセキやくしゃみ、タンや鼻水、発熱といった症状は、ウイルスなどの異物と戦い、速やかに体外に排出しようとする体の防御反応です。無理に抑え込むことで、かえって長引かせたり、悪化させたりするリスクが高まります。

つまり、いつものカゼの症状であれば、病院に行くメリットは何もありません。待合室で他の病気をもらうリスクを取りながら過ごすより、ご自宅でゆっくり休むことをお勧めします。

一方、インフルエンザウイルスにはワクチンや抗インフルエンザ薬があります。
つらいインフルエンザの症状の出る期間を短縮し、肺炎合併など重症化のリスクを軽減しますので、ワクチン接種や抗インフルエンザ薬は有効です。
ただ、この抗インフルエンザ薬の半数以上が日本で消費されているのをご存知でしょうか。ちなみに世界の人口77億人に対し、日本の人口は1億2000万人と、約1.5%です。

新型インフルエンザは別として、持病のある高齢者など重症化するリスクの高い人以外は、薬を使わなくても、他のカゼと同様、水分補給と睡眠で問題なく数日で自然治癒します。
ということで、カゼやインフルエンザは、予防が最大の対策ということになります。

ドアノブは指で触らず手首で押し下げる

これまでインフルエンザの感染経路は、飛沫感染と接触感染だと考えられてきました。ところが、2018年に米国の研究グループが、インフルエンザが空気感染する可能性があるというデータを発表しました。
つまり、インフルエンザ感染者がセキやくしゃみをせず、普通に呼吸しているだけでもウイルスが吐き出され、同じ室内の人に感染を広げる可能性があるということです。

●飛沫感染を防ぐマスクの使い方

一方、飛沫感染とは、ウイルスの保菌者がくしゃみやセキをした際に飛ばしたウイルスを含む飛沫を、近くの人が吸い込んで、感染することです。
飛沫感染を防ぐには、マスクが有益です。ところが、残念ながら、7割以上の人が正しくマスクを使いこなせていないという調査結果があるのです。

もっともやりがちなのが、使用後、ウイルスが付着したフィルター部分を手で押さえてしまうことです。ゴムひも部分だけ持って外しましょう。
また、同じマスクをくり返し使用するのも避けましょう。きれいに見えても、ウイルスが付着している場合があります。

調査によれば、平均して同じマスクを8回以上脱着している人が多いそうですが、ウイルスが付着した面を手で触って周囲を汚染しては 本末転倒です。 私は診療日には1日20枚以上、休日も外出するごとに4枚以上は交換しています。

マスクの間違った使い方と正しいつけ方。

●接触感染を防ぐ手洗いと消毒

もう一つが、接触感染です。
ウイルスの保菌者がセキを手で押さえたり、鼻汁をかんだりしたときにウイルスが手につきます。このウイルスがついた手で触ったドアノブなどに健康な人が接触することで、ウイルスが健康な人の手に移ります。

その手で自分の鼻や口、目に触れてウイルスが侵入するのが接触感染です。接触感染を防ぐには、なんといっても手洗いとアルコール消毒が有効です。
インフルエンザウイルスは、衣服や紙などについた場合は2~8時間程度生存します。金属やプラスチックのような表面がツルツルした物質上では、24~48時間も生存しています。
つまり、ドアノブや手すり、硬貨、スイッチなど、多数の人の手が触れる場所は、非常に感染リスクが高いのです。

私はドアノブはできるだけ指では触らず、手首で押してドアを開けます。やむを得ず触った場合は速やかに手を洗うまでは、口や鼻に手を近づけないようにしています。
ちなみに、飛沫感染予防に有効なマスクは、鼻と口を覆われて、ウイルスに汚染された手が物理的に近づかないため、接触感染予防にもなります。

ドアノブに付いたウイルスは24時間以上生存。

うがいよりも歯磨きでインフル発症率が1/10

さて、これまで手洗いと並んで感染症予防の基本とされてきたうがいですが、インフルエンザ予防に関してはその効果が疑問視され、厚労省の推奨項目から外されました。
というのも、インフルエンザウイルスは、のどの粘膜や気管支の細胞に付着してから比較的早期に、細胞の中まで侵入するからです。30~60分おきにうがいをするのは、現実的ではないですね。

そこで、私は、緑茶のカテキンによるインフルエンザ予防効果に期待して、緑茶のペットボトルを常に傍らに置いておき、1人診察するごとに一口飲むようにしています。
量ではなく、頻繁に飲むことで、10分に1回はのどを洗い流すとともに、湿度を与えてのどの粘膜の線毛を働きやすくしておくことができます。

なお、カゼ予防に関しては水うがいは有効です。
うがいよりも効果的なのが、歯磨きです。口腔内細菌が出すプロテアーゼやノイラミニダーゼという酵素はインフルエンザウイルスが粘膜に侵入・増殖するのを助け、重篤化を促す働きがあります。
あるデイケアに通う高齢者に適切な口腔ケアを行ったところ、対照群と比べてインフルエンザの発症率が10分の1になったという研究もあります。1日4回の歯磨きにフロスも加えるのがお勧めです。

予防に努めていても、カゼをひいてしまうことはあります。
私はカゼのひき始めには、20分のウオーキングか、5分だけプールで泳ぐことにしています。軽度な運動は免疫力を高めてくれるからです。
ただし、過度の運動はかえって免疫力を下げますから、ほどほどが肝心です。

セキがつらいときにはハチミツ入りコーヒーを飲むとよい。

セキが続くときには、ハチミツ入りコーヒーを試してみてはいかがでしょうか。
ハチミツは、抗炎症作用があり、デキストロメトルファン(製品名メジコン)というよく処方される鎮咳薬よりも効果があったとする海外の論文が出ています。
コーヒーのカフェインは、気管支拡張剤として用いられるテオフィリンとよく似た構造を持ち、呼吸をらくにするのに役立つでしょう。

なお、本稿は2020年2月19日時点の情報であり、2020年2月29日発売の『新型コロナウイルス肺炎、インフルから身を守れ!』(マキノ出版)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。

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