「壁ペタ伸ばし」と「足指グーッと伸ばし」で、体の軸を作っている多裂筋と足指の伸筋群に刺激を与えましょう。1~2週間続ければきっと、体がよみがえるのを実感できるはずです。特に腰痛、ひざの痛みにお悩みのかたにお勧めです。【解説】佐藤義人(アスレチックトレーナー・鍼灸師)
解説者のプロフィール
佐藤義人(さとう・よしひと)
日本体育協会公認アスレチックトレーナー。鍼灸師。世界で活躍するトップアスリートから、スポーツや格闘技に励む子供たち、そして、各部位の痛みに悩むシニアまで、トレーニングや施術、リハビリを受けたいという依頼が殺到している。2015年、ラグビーワールドカップでは、日本代表スタッフとしてチームを支え「神の手」と称された。著書に『1分間だけ伸ばせばいい』(アスコム)などがある。
体の軸を作っている二つの筋肉に着目
私はかつて、2015年のラグビーワールドカップにおいて、日本代表チームのトレーナーを務めました。その際、メンバーから一人の離脱者を出すこともなく、歴史的な3勝を上げることに貢献できたと自負しています。
彼らのようなトップアスリートが最高のパフォーマンスを発揮できるのは、筋肉の使い方のバランスが整っているからです。しかし、姿勢が悪くなると、そのバランスがくずれていきます。
その結果、使わない筋肉はどんどん本来の動き方を忘れ、使い方が悪い筋肉はどんどんかたくなっていくのです。そして、悪い姿勢のままで筋肉がこりかたまってしまい、痛みを生じさせる原因となるのです。
私が特に着目しているのは、「多裂筋」と「足指の伸筋群」です。
多裂筋は、背骨に沿って張りついている筋肉で、背骨を正しい位置で維持するために機能しています。また、足指の伸筋群は、足の甲からすねまでつながっており、足指を反らすことが役割です。
体の軸を作っているこの二つの筋肉が動かなくなっているために、コリや関節の痛みだけでなく、疲労や冷え症まで引き起こされるのです。
そこで、多裂筋を動かす「壁ペタ伸ばし」と、伸筋群を動かす「足指グーッと伸ばし」をお勧めします。
そもそも、動かなくなっている筋肉というのは、縮まなくなったか、緩まなくなったかのどちらかです。今回ご紹介する二つのストレッチを行って、多裂筋と足指の伸筋群に刺激を与えましょう。
この二つのストレッチで、筋肉を1分間ほど伸ばせばいいのです。これを1~2週間続ければ、きっと、体がよみがえるのを実感できるはずです。
特に、壁ペタ伸ばしは腰痛にお悩みのかたにお勧めのストレッチです。また、足指グーッと伸ばしはひざの痛みを解消するのに役立つでしょう。
いずれのストレッチも、無理のない範囲で行い、痛みがある場合などは中止してください。
私は、動かなくなっている筋肉を動けるようにすることを、「筋肉をしつける」と表現しています。まずは1分間、筋肉を正しくしつけて、きれいな姿勢を取り戻し、痛みを解消してください。
壁ペタ伸ばしのやり方
❶壁を向いて足を肩幅に開いて立つ。両腕を真上に伸ばして、手のひらを壁につける
❷手のひらと胸が壁から離れないようにして、息を吐きながらゆっくりと腰を落としていく。限界まで下げたら、ゆっくり(1)の姿勢に戻る。
※これを10回くり返す。
足指グーッと伸ばしのやり方
❶マットやバスタオル、座布団などの上に、足指を曲げた状態で右足を立てる。
❷ゆっくりとひざを伸ばしながら、床に向かって足指を軽く押し込むように10秒キープしたら(1)の状態に戻す。左足も同様に行う。
※左右それぞれ3回ずつ行う。
※この記事は『壮快』2020年4月号に掲載されています。