近年、ストレスによる耳鳴りや難聴、めまいを起こす患者さんが増えています。耳鼻科か脳神経外科を受診したうえで、「原因不明」「ストレスによるもの」といった診断であれば、鍼灸治療を併用すると早期回復が望めます。さらに、治療の効果を上げるためには、ツボ押しなどのセルフケアが重要です。【解説】三宅さやか(はり治療院 睛聴院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

三宅さやか(みやけ・さやか)

大学卒業後、民間企業に勤めているときに東洋医学と出合う。10数年の会社員生活に終止符を打ち、鍼灸専門学校へ入学。国家資格取得後は、セタガヤ治療室の佐藤信雄院長に師事し、耳と目の症状を緩和する鍼治療を学ぶ。セタガヤ治療室の福岡移転に伴って独立し、現職。自身も耳鳴りやめまいを患った経験があるため、「相談しやすい」との声が多い。
▼はり治療院 睛聴(公式サイト)

ツボ療法の効果とは

ストレスが原因のケースが増えている

私の治療院には、耳鳴りや難聴、めまいの症状を訴える患者さんがたくさんいらっしゃいます。医療機関で診察・検査を受けても異常が見つからず、薬の効果も感じられずに苦しんだ末、当院にたどり着いたというかたも少なくありません。特に近年、働き盛りの40代50代で、ストレスによって耳鳴りや難聴、めまいを起こすケースが増えています。

実は私自身、鍼灸師という今の職業に就いたきっかけは、心身のストレスが引き起こした体調不良でした。企業に勤めていたころ、神経をすり減らすような業務、連日の残業、休日出勤で、いつもひどく疲れていました。そのうち、過呼吸やめまい、耳鳴り、過敏性腸症候群に見舞われるようになったのです。病院で処方された薬の副作用にも苦しんでいるときに出合ったのが、鍼灸でした。

幸いなことに、すばらしい手腕の先生による施術で、体調はすっかり回復。そのとき、自分と同じように苦しんでいる人の手助けをしたいと、鍼灸師への道を選んだのです。

西洋医学との併用で早期に回復

西洋医学だけでは改善が難しい耳鳴り・難聴・めまいも、東洋医学を併用すると治りが早くなるのはよくあることです。

もちろん、耳鳴りや難聴、めまいは、重篤な病気のサインである場合もあるので、まずは耳鼻科か脳神経外科を受診してください。そのうえで、「原因不明」「ストレスによるもの」といった診断であれば、鍼灸治療などのツボ療法を併用することで早期回復が望めます。

自宅でのツボ押しで効果アップ

私は主として鍼治療を行いますが、自分で行うツボ療法もお勧めしています。手の指でツボを押す簡単で安全なセルフケアなので、継続しやすく、実感も得やすいようです。

私が行う鍼灸治療は多くても週に1回程度なので、自宅でのケアが大事になります。ご自身で毎日ツボ押しをすることで、鍼の効きめが格段に上がりますし、「自分で自分の体を治す」という意識は非常に大切です。実際、私の患者さんのなかには、10回の鍼治療とセルフケアのツボ押しで、耳鳴りが消えた例があります。

今回ご紹介するツボは、耳鳴りや難聴、めまいといった症状の改善が期待できます。睡眠時間の確保や、ストレスの解消など、生活習慣の見直しをしながら、ツボ刺激を習慣にしてください。

ツボの探し方

まず、耳鳴りと難聴に効く3つのツボの位置を説明します。ただし、「このツボを正確に押さなければいけない」というわけではありません。その周辺を触ってみて、いちばん痛いところを刺激すればOKです。

耳鳴り・難聴に効くツボ①中渚 

中渚(ちゅうちょ)は左右の手の甲にあります。薬指と小指の間を、反対の手の指でたどっていき、指が止まるところです。

画像: 耳鳴り・難聴に効くツボ①中渚
画像: 手の甲の薬指と小指の間を触り、最も痛いところを押す。

手の甲の薬指と小指の間を触り、最も痛いところを押す。

耳鳴り・難聴に効くツボ②足臨泣

足臨泣(あしりんきゅう)は左右の足の甲にあります。薬指(第4趾)と小指(第5趾)の間を手の指でたどり、行き止まりが足臨泣です。

画像: 耳鳴り・難聴に効くツボ②足臨泣
画像: 薬指(第4趾)と小指(第5趾)の間を触り、最も痛いところを押す。

薬指(第4趾)と小指(第5趾)の間を触り、最も痛いところを押す。

耳鳴り・難聴に効くツボ③翳風

翳風(えいふう)は耳の近くにあるツボです。スマートフォンやパソコンの画面を長く見ていると、ここがこってかたくなります。翳風は、耳たぶの後ろ側にある骨の出っ張り(乳様突起)の下のくぼみにあります。押したとき、ズンと響くところを刺激します。

画像: 耳たぶの後ろ側にある骨の出っ張り(乳様突起)の下のくぼみを、左右の手の親指で同時に押す。

耳たぶの後ろ側にある骨の出っ張り(乳様突起)の下のくぼみを、左右の手の親指で同時に押す。

めまいに効くツボ・百会

百会のツボは、左右の耳の穴を結んだ線と、眉間の中心から頭のてっぺんに向けた線が、頭上で交わるところにあります。頭のてっぺん周辺を触って、いちばん痛いところを押します。

画像: 頭のてっぺん周辺を触り、最も痛いところを押す。

頭のてっぺん周辺を触り、最も痛いところを押す。

ツボの押し方

ゆっくり押してゆっくり力を抜く

ツボの押し方は、どこも同じです。指の腹をツボの位置に当て、「痛いけれど気持ちいい」と感じる程度の強さで、「い〜ち、に〜い、さ〜〜ん」というゆっくりとしたテンポで押します。そして、ゆっくりと力を抜きます。1つのツボに対して、3回くり返し、これを1セットとして、1日1〜3回行いましょう。

回数を増やすより毎日続けるのが大事

ツボ押しは、時間を決めて行ってもよいですし、電車やエレベーターを待っている間や、テレビを見ながらなど、手の空いているときに行ってもかまいません。大事なのは、回数を多く行うことよりも、毎日続けることです。

また、ツボを刺激すると、耳鳴りの音色が変わったり、音が大きくなったりすることがあります。これは、ツボ押しによって体が反応しているという現れなので、心配はいりません。ツボ押しを続けてください。

なぜツボ刺激が耳鳴り・めまいに効くのか

「気」と「血」の滞りが解消し不調が改善

東洋医学では、生命エネルギーである「気」の流れが滞ることで、さまざまな症状や病気が生じると考えます。気の通り道が、経絡(けいらく)です。そして、経絡上に点在するポイントを経穴(けいけつ)といいます。この経穴が、一般的にツボと呼ばれているものです。

体に不調があると、関連するツボに、気と血(血液を含む体液)の滞りが起こります。そうしたときにツボを押すと、痛みを感じたり、ほかの場所よりもかたく感じたりするでしょう。
ツボに適切な刺激を与えると、気と血が流れだし、痛みやかたさが和らぎます。それに伴って、ツボに関連する不調が改善に向かうのです。

気持ちが安定して発作予防に

耳鳴りやめまいに悩む患者さんは、「いつまた発作が起こるか」という不安を抱いています。そのストレスが耳鳴りやめまいの引き金になる、という悪循環に陥りがちです。
ツボ押しは、めまいや耳鳴りの頻度や症状を緩和するだけでなく、「これがあれば大丈夫」という安心感を与えてくれます。気持ちが楽になることで、発作の予防にもつながります。

また、ツボ押しは、毎日行うことで体調チェックにもなります。自分では気づかなくても、ツボを押していつもより痛いときは、体が弱っています。念入りにツボ押しをするとともに、こまめに休憩したり、早めに就寝したりするなど、できるだけ体を休める工夫をしてください。

ツボ押しで耳鳴り・めまいが緩和した症例

40代女性Aさんの例をご紹介しましょう。
Aさんは、めまいが頻繁に起こるため耳鼻科を受診。処方された薬を飲むと症状は治まるものの、副作用でのどが渇き、困っていました。インターネットで私の治療院を見つけて来院。7〜8回の鍼治療でめまいはほぼ消え、薬をやめることができました。

Aさんにも、セルフケアとしてツボ押しを習慣にしてもらいました。今も、睡眠不足や疲れがたまるとめまいが起こりますが、ツボ押しをすると治まるそうです。「自分で対処できる方法を持っていると、めまいに対する不安が消えて気持ちが楽」といっています。

また、Aさんはキーンという高音の耳鳴りが一日中あり、疲れると音が大きくなっていました。コンサートに行くのが趣味なのですが、病院で「騒音性耳鳴り」と診断され、「コンサートに行かないか、行く回数を減らして耳栓をすること」といわれ、がっかりしていたのです。

でも今は、コンサートの前後にツボ押しすることで、耳鳴りは悪化しないとのこと。「ひどくなったらツボを押せばいい」という安心感もあり、以前にも増してコンサートを楽しんでいるそうです。

*この記事は『耳鳴り・難聴・めまいを治す最強極意』(マキノ出版)に掲載されたものを一部抜粋・加筆して掲載しています。詳細は下記のリンクよりご覧ください。

画像: www.amazon.co.jp
www.amazon.co.jp

This article is a sponsored article by
''.