「トレンド」や「コストパフォーマンス」などの新しいカタカナ語。ただでさえややこしいところに、新型コロナの影響で耳慣れない横文字が急増しました。ちんぷんかんぷんな言葉ばかり……と、諦めるのはまだ早い!今、知っておくべき30のカタカナ語を解説します!【安心編集部 編】
政治家やタレントがこぞって使う意味不明のカタカナ語が新型コロナで急増したワケは?
新型コロナ関連のカタカナ語が急増
「新たなクラスターが発生」「ソーシャルディスタンスを守って行動してください」──。
新型コロナウイルス肺炎の影響が広がる中、このような「カタカナ語」を聞く場面が増えました。次々と登場する新しい言葉に、混乱している方も多いのではないでしょうか。
このカタカナ語の氾濫は、河野太郎防衛相も苦言を示している様子。3月22日には自身のツイッターで 「クラスター=集団感染 オーバーシュート=感染爆発 ロックダウン=都市封鎖ではダメなのか。なんでカタカナ?」と投稿していました。
このつぶやきは、7万人以上が拡散。共感する意味を示す「いいね」は24万件以上を記録するなど、話題を呼びました(2020年6月18日時点)。
日本語で正確に表すのが難しい
では、なぜ「カタカナ語だらけで分かりにくい」という意見が多いのにも関わらず、カタカナ語での報道が続いているのでしょうか。これには、次のような理由が挙げられます。
(1)正確な日本語訳がない
専門性の高い分野では、カタカナ語をはじめとする特殊な言葉が多く使われています。それを従来から使われている日本語に言い換えようとすると、細かな説明が必要になってきます。
例えば、「クラスター」。「集団感染」と訳されることが多い言葉ですが、厳密には「5人以上の集団で、共通の感染源を持つこと」と、とても限定された意味を持っています。
この複雑な言葉を簡潔に伝えるために、あえて専門用語をそのまま使っているのです。
(2)表現を柔らかくするため
「都市封鎖」や「感染爆発」など、漢字で訳した言葉に恐怖心をあおられる人は少なくありません。その不安や恐怖を和らげるために、あえてカタカナ語で表現を柔らかくしている、という見方もあります。
一方、あえて聞き慣れないカタカナ語を使い、注意喚起を行いやすくしたともいわれています。これはつまり、初めて聞く言葉を使うことで、メディアや国民が注目し、話題を集めやすくしたという考え方です。
身近なところでもカタカナ語が増えている
カタカナ語が増えているのは、新型コロナウイルス肺炎関連の言葉だけではありません。近年では、IT業界やビジネス用語でも、カタカナ語が使われる機会が多くなっています。
その影響か、テレビなどのメディアでもカタカナ語を聞く機会が増えました。例えば、バラエティー番組やワイドショーで、「インフルエンサー」という言葉を耳にしたことはありませんか?
これは、「世間に大きな影響を与える人」のことを言い、最近ではインターネットを介して有名人になった人を指します(詳しくは後述)。
また、病院でも「エビデンス」や「ガイドライン」などの、耳慣れない言葉を聞く機会が増えました。そこで、今回の特集では、
(1)【病院でよく聞くあの言葉】
(2)【新型コロナでよく聞くあの言葉】
(3)【最近よく聞くあの言葉】
の3項目のカタカナ語をご紹介します。また、番外編として、テレビや雑誌でよく見聞きする、カタカナを使った流行語も少しだけ取り上げています。
ニュースや病院で分からない言葉が出てきたとき、子どもや孫の話についていきたいときなどに、ぜひお役立てください!
病院でよく聞くあの言葉
【エビデンス】
その薬や治療法がよいと言える、科学的な根拠。
薬や治療法の多くは、たくさんの患者に試してどのくらい効き目があったか、という調査研究がされている。その結果によって、どんな治療法がいいかを決める証拠のこと。
(使い方)
(1)「エビデンスに基づいた治療を行う」
(2)「エビデンスがない薬は使用できない」
【ガイドライン】
最新の研究や治療の実績などを基に作られた診療目安。
ガイドラインには、最もお勧めできる一般的な治療法が書かれている。医療者向けだけでなく、事前にその病気や治療法について知るための、患者向けのものもある。症状によっては、インターネットや書店で入手することが可能。
ガイドラインにはA・B・C・Dの4段階の「推奨グレード」がある。最上位であるAの治療法は、行うよう強く勧められる。B以降は推奨レベルが落ちていき、最下位のDになると、行わないよう推奨される。
(使い方)
「ガイドラインを参考に、治療法を決定する」
【QOL(キューオーエル)】
生活の質。
治療を受ける患者が、精神的・肉体的・社会的など全てにおいて、納得して生活すること。活力があるか、生きがいを感じているかなどが、主な判断基準となる。
(使い方)
(1)「患者のQOLを重視した治療を行う」
(2)「副作用の多い薬は、QOLの低下につながる」
【ジェネリック医薬品】
新薬と同じ効き目があると認められた医薬品。
ジェネリック医薬品は、新薬と同じ有効成分で作られるが、開発費が抑えられるため、低価格で手に入る。新薬と同じ品質・安全性があると、厚生労働省が認めてから製造・販売される。
ただし、ジェネリック医薬品の中には新薬より効果が乏しいものがあるなどの理由で、推奨しない医師も多い。変更を希望する際は、医師とよく相談を。
(使い方)
「今使っている薬を、ジェネリック医薬品に変えたい」
【セカンドオピニオン】
主治医とは別の医師に意見を聞くこと。
セカンドオピニオンは、主治医以外の医師の意見を聞くことで、自分が納得できる治療を選択できるようにするというもの。
あくまで「第二の意見」を聞くのが目的のため、セカンドオピニオン=転院・転医ではない。
(使い方)
(1)「他のお医者さんの意見も聞きたいので、セカンドオピニオンを受けたい」
(2)「セカンドオピニオン先の医師も、主治医と同じ治療を勧めた」
【トリアージ】
多数の傷病者が発生した際に、治療の優先度を決めること。
災害や大きな事件・事故などでけが人・病人が多数発生した場合、けがや病気の程度で治療の優先順位を決める。
優先度を示す色は万国共通で、赤(今すぐ治療が必要)、黄(数時間は余裕がある)、緑(命の危険はない)、黒(すでに亡くなっているか、治療の見込みがない)の順で処置を行う。
(使い方)
(1)「被害状況の深刻さから、現場ではトリアージが行われた」
(2)「感染拡大を防ぐため、院内トリアージを行う」
新型コロナでよく聞くあの言葉
【アウトブレイク】
ある集団内で、感染症が一気に広がること。感染爆発。
アウトブレイクは、限定された地域で感染症が広がることを指す。感染範囲が特定の地域以外にも広がると「エピデミック」となり、世界的に流行すると「パンデミック」と呼ばれる。
(使い方)
(1)「院内感染によるアウトブレイクが発生した」
(2)「アウトブレイクを防ぐための措置をとる」
【エアロゾル】
空気中に漂う細かい粒子。
ほこりや花粉、煙などもエアロゾルに分類される。「エアロゾル感染」は、飛沫よりも小さな粒子を吸い込んで感染すること。
(使い方)
「エアロゾル感染対策に、換気を行う」
【オーバーシュート】
爆発的に患者数が増えること。
それまでの感染者数が2~3日で2倍になる状態が続くと、「オーバーシュート」と呼ばれる。なお、英語圏では「行き過ぎる・外す」という意味で使われており、「感染爆発」という意味はない。
(使い方)
(1)「オーバーシュートが起こる可能性がある」
(2)「大都市はオーバーシュートが起こりやすい」
【オンライン●●】
インターネットに接続して、ウェブサービスを受けること。
「オンラインにする」は、インターネットに接続することを指す。「●●オンライン」や「オンライン●●」と言う場合は、インターネットに接続した上で、何かしらのサービスを受けるという意味になる。
離れた友人と画面上で飲み会をする「オンライン飲み会」や、ビデオ通話で診療を行う「オンライン診療」などが代表例。
(使い方)
(1)「数十年会っていなかった友人と、オンライン飲み会で再会した」
(2) 「オンライン診療の導入で、感染リスクを減らす」
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【クラスター】
小規模な集団での感染。
同じ時間や場所など、共通の感染源を持つ5人以上の集団のこと。これが50人以上になると、「メガクラスター」と呼ばれる。
換気の悪い密閉空間・人が密集している・密接な距離で会話をしている、の三つを満たす場所は、クラスターを生みやすい。
(使い方)
(1)「クラスターの連鎖は、大規模な流行を起こす」
(2)「クラスターの発生源を特定する」
【ソーシャルディスタンス】
人との間に十分な距離を保つこと。
会話でつばが飛んだり、人と接触したりすることを避け、ウイルスの感染拡大を防ぐ戦略。どのくらいの距離を置くかは国によって異なり、日本の場合は2mとされている。
「ソーシャルディスタンス」は、社会的な分断を連想させるため、最近では「フィジカルディスタンス(身体的距離)」と言うよう推奨されている。
(使い方)
「ソーシャルディスタンスを守って列に並ぶ」
【テレワーク】
時間や場所にとらわれない働き方。
「tele(=離れたところ)」と、「work(=働く)」を合わせた造語。大きく分けて、次の3種類がある。
(1)在宅勤務……自宅で働く。
(2)モバイルワーク……取引先やカフェ、電車内などで仕事を行う。
(3)サードプレイスオフィス勤務……自社で用意した、勤務先以外の専用オフィスで働く。
「リモートワーク」との違い──
テレワークとリモートワークには、明確な違いはない。用途の違いとしては、行政機関や地方自治体などの公的な機関は「テレワーク」を、IT系の企業は「リモートワーク」を使うなど、業界によって使い分けられる傾向にある。
(使い方)
(1)「テレワークの導入で感染を防ぐ」
(2)「緊急事態宣言後も、テレワークを推奨する」
【フェーズ】
感染症の感染レベル。段階。
WHO(世界保健機関)では、感染症の流行の度合いを、6段階に分けて設定している。最終段階が「フェーズ6」で、これが宣言されると、世界的に流行していると見なされる。
なお、「次のフェーズに入った」という場合は、新たな局面や時期に入ったことを表す。
(使い方)
(1)「感染拡大のフェーズが上がった」
(2)「WHOがフェーズ6を宣言した」
【ロックダウン】
対象エリアの住民の活動を制限すること。都市封鎖。
暴動や感染症が発生した際に、対象地域の住民の活動を制限して安全を確保する。外出禁止がその代表例。ただし、日本では憲法上、人権を侵害する強力なロックダウンはできない。
なお、ロックダウンは都市を封鎖する「手段」だが、緊急事態宣言はロックダウンを可能にするための「法的な根拠」なので、意味が異なる。
(使い方)
「欧米諸国がロックダウンを行った」
最近よく聞くあの言葉
【イノベーション】
新しいこと・ものを作り出し、社会に価値を生み出すこと。技術革新。
主にビジネス用語として使われる。これまでにない発想や技術を取り入れて、社会によい変化をもたらすことを指す。
似た言葉として「リノベーション」があるが、こちらは元からあるものに手を加えて、修復したり価値を高めたりするという意味。最近では、建築用語として使われる。
イノベーションが「新しいものを生み出す」、リノベーションが「もともとあるものの価値を高める」と考えると分かりやすい。
(使い方)
(1)「イノベーションをもたらす商品を開発した」
(2)「大谷翔平の二刀流は野球界にイノベーションをもたらした」
【インフルエンサー】
世間に大きな影響を与える人。
人々の購買活動に強い影響を与える人を指す。これまでは雑誌やテレビなどで活躍する有名人がインフルエンサーだったが、最近ではインターネット上で人気が高い一般人がインフルエンサーになるケースが多い。「インスタグラマー」や「ユーチューバー」が代表的。
(使い方)
「インフルエンサーが勧める商品はすぐに完売する」
【AI(エーアイ)】
人工知能。
一般的には、人間の脳が行っている学習や思考、記憶などをコンピューターが行うことを言う。身近なものでは、自動車の自動ブレーキや、「Siri」というiphoneの音声認識機能などに使われている。
AIは開発中の技術ということもあり、専門家の間でも定義がまだ定まっていない。
(使い方)
(1)「この家電にはAIが搭載されている」
(2)「AIが魚の種類を判定する」
【コストパフォーマンス】
費用対効果。
商品やサービスの価格に対し、どれだけ満足度が高かったかを示す。料金よりお得に感じるときは「コストパフォーマンスがよい/高い」と言い、その逆を「コストパフォーマンスが悪い/低い」と言う。略し方は「コスパ」「CP」。
(使い方)
(1)「コストパフォーマンスが高い店を見つけた」
(2)「使い捨てはコストパフォーマンスが悪い」
【コンプライアンス】
法や社会的ルールを守ること。
企業が法令や社会的な規範を守ることを指す。ルールだけでなく、倫理や道徳などのモラルを守ることも重要とされる。略語は「コンプラ」。
医療現場でも「服薬コンプライアンス」という言葉が使われるが、これは「患者が医師の指示に従った行動をとる」という意味。処方された薬を飲まないなど、医師の指示に従わない患者の行動は、「ノンコンプライアンス」と言われる。
(使い方)
「コンプライアンス的には問題ない」
【サステナブル】
人間・社会・地球環境に負荷が少ない、持続可能な発展。
サステナブルとは、英語で「持続可能な」という意味。近年では、地球環境を維持しながら、未来に向けて生活や経済を発展させていくという意味合いで使われている。
身近な例で言うと、レジ袋の有料化や、プラスチックストローの廃止などが挙げられる。
サステナブルを含む略語としては、「SDGs(エスディージーズ)」がある。これは、持続可能な開発目標という意味で、「海や陸の資源を守る」「貧困・飢餓をなくす」など、17の目標が定められている。
(使い方)
(1)「サステナブルな素材で作った衣料品」
(2)「ゴミを増やさないサステナブルな生活」
【サブスクリプション】
利用期間が決まっているサービスに対し、定額料金を支払うこと。
簡単に言うと、「定期購読」や「年間購読」のこと。月額料金を支払えば音楽が聴き放題になったり、映画やドラマが見放題になったりするといった「定額サービス」に対して使われることが多い。よく「サブスク」と略される。
(使い方)
「音楽のサブスクリプションはこれがお勧めだ」
【ダイバーシティ】
国籍、性別、年齢など、人間の多様性。
主に経営分野で使われる言葉。多様な人材を受け入れて、企業の競争力を高めることを指す。
元々はアメリカで広がった考え方で、女性や多様な人種が公平に採用され、差別のない処遇を受けることを目指す取り組みだった。
日本では人権を守る他に、少子高齢化で労働人口が減るのを防ぐなどの目的がある。
(使い方)
(1)「ダイバーシティ化が進み、多様化社会を迎えている」
(2)「ダイバーシティ社会の実現に取り組む」
【タブレット】
画面を触って操作できる端末。
元々は「小さな板状のもの」という意味。平らな板のような形で、パソコンに近い機能を持っている。
液晶画面をペンや指で触って操作ができる上、ノートパソコンより軽いので、持ち運びに適している。同じく画面を指で操作する端末に「スマートフォン(以下スマホ)」がある。
大きな違いは画面のサイズ。タブレットはスマホに比べて画面が大きいため、見やすく、細かい操作もしやすい。また、タブレットの場合、電話回線を利用した通話ができないものが多い。
(使い方)
(1)「タブレットを使って授業を行う」
(2)「動画をタブレットで見る」
【トレンド】
流行。
主にファッション業界で使われており、その時流行している服装のことを言う。似た言葉に「ブーム」があるが、トレンドは流行が長く続くのに対し、ブームはその期間が短い。
近年では、ツイッターなどのSNS(インターネット上で人との交流を楽しむ会員制サービス)で話題の事柄も指す。この場合は、投稿回数が急激に増えた言葉を意味する。
(使い方)
(1)「今年はパステルカラーがトレンドだ」
(2)「好きな歌手の曲名がトレンド入りした」
【フォトジェニック】
写真映えする。
写真を撮ったとき、おしゃれに見えたり、魅力的に感じたりするもののこと。SNSの普及により、この言葉が注目されるようになった。
なお、日本では料理・風景・建物など多くの物事に対して「フォトジェニック」と言うが、海外では人の顔立ちやスタイルに対してのみ使われる。
(使い方)
「色とりどりの花が咲き誇る、フォトジェニックな庭」
番外編:巷でよく聞くあの言葉
【インスタグラマー】
「インスタグラム」で強い影響力を持つ人。
「インスタグラム」とは、写真や動画を共有できるSNS(インターネット上で人との交流を楽しむ会員制サービス)のこと。フォロワー(その人の投稿を見られるように登録している人)の人数が多い人を、このように呼ぶ。
(使い方)
「インスタグラマーお勧めの化粧品」
【エモい】
言葉にできない感動。
英語の「エモーショナル(情緒的なさま)」が由来の若者言葉。懐かしさ・興奮・切なさなど、言いようがない気持ちを表すときに使われる。
(使い方)
(1)「この映画はエモかった」
(2)「エモいと評判の小説」
【バズる】
インターネット上で大きく話題になる事。
主に、SNS上で注目を浴びた文章や写真、動画などに使われる。この口コミ効果を利用して商品やサービスの知名度を上げることを、「バズマーケティング」と言う。
(使い方)
「ネコの動画がバズった」
【ユーチューバー】
「YouTube」で自作の動画を投稿する人。
「YouTube」とは、自由に動画を投稿・閲覧できるサイトのこと。ここに自分で作った動画を投稿して、広告収入を得る人を、一般的に「ユーチューバー」と呼ぶ。
(使い方)
「今人気のユーチューバー」
■この記事は『安心』2020年8月号に掲載されています。