部屋が散らかってしまう最大の原因は、モノの定位置が決まっていないからです。片づけはモノの定位置を決めることからスタートします。片づけの基本のステップとして、家の中のすべてのモノが「戻る場所」を明確に決めておくことはとても重要。一つひとつのモノの定位置=「住所」を決めることから、さっそく始めましょう。【解説】村越克子・笠原恭子
著者のプロフィール
村越克子(むらこし・かつこ)
編集会社勤務を経てフリーライターとして生活情報誌を中心に家計・家事・家族関係などをテーマに執筆活動を続ける。主著に『綱渡り生活から抜けられない人のための絶対! 貯める方法』『いつのまにかお金がなくなる人のための今度こそ貯金ができる方法』(永岡書店)。
笠原恭子(かさはら・きょうこ)
出版社勤務を経てフリーランスに。面倒くさがり屋でもできる工夫生活の楽しさに目覚め、片づけ・収納ほか、さまざまな家事のアイデアについての記事を執筆。著書に『リメイクッキング』(しょういん)。
本稿は『汚い部屋から今度こそ絶対抜け出す本』(永岡書店)から一部を抜粋して掲載しています。
モノに「住所」をつける
あなたの部屋のモノたちは、いつも迷子状態 !?
「どうしていつのまにか散らかっちゃうんだろう、ハァー……」。まるで他人事みたいな言い方ですが、これって、片づけ下手さんの本音です。
もしモノに足がついていて、人間が使うたび勝手に自分で元あった場所に帰ってくれたら、どんなにラクチンでしょう。でも、モノには足はありませんから、出しっぱなしにされたら、その場所にいつまでもじっとしているだけ。そして、最初は控え目に2個3個と片づけられずにいたモノたちが徐々に増え、ついには部屋の主の許容範囲を超えてまで増殖するのに、そう時間はかかりません。
ここまでくると、「なんでこんなに散らかるのよ!」とイライラ。でもモノたちにだって言い分はあります。「私たちを迷子にしたのは一体誰なのよ」と。
散らかっている部屋というのはつまり、モノがどこへ戻ったらいいかわからず、迷子になってしまっている部屋。モノをあっちこっちと動かしたのはいいけれど、最後にどうしても定位置に片づけられない。多くの片づけ下手さんの苦悩もそこにあります。
モノの「住所」を決めることから片づけスタート
でも、使ったモノを定位置に戻せないのは、あなたがズボラなせい(だけ)ではないはずです。だって、もしあなたが必死にモノを定位置に戻そうとしても、もともと定位置なんてないのですから。
私はちゃんと片づけているつもりなのに片づかない……という人も、とりあえず邪魔にならない場所にポンと移動させたり、手近な引き出しに放り込んだだけで、片づけた気になってはいませんか? もしこれを無意識にやっているとしたら、置きっぱなしより始末が悪いかも。
使うたびにモノの定位置が変わるので、次に使いたいとき「あれ? どこに置いたっけ」と毎度毎度の大騒ぎ。いろんな場所をひっくり返して大捜索が行われ、部屋がさらにグチャグチャに。この「置きっぱなし」と「とりあえず移動」には、「モノの定位置がない」という共通点があります。
そう、知らないうちに部屋が散らかってしまう最大の原因は、モノの定位置が決まっていないから、だったのです。片づけの最初のステップとして、家の中のすべてのモノが戻る場所を明確に決めておくことはとても重要。一つひとつのモノの定位置=「住所」を決めることから、さっそく始めましょう。
POINT
片づけはモノの「定位置=住所」を決めることからスタート!
モノの「住所」の決め方
使った場所の近くに「戻す場所」があればさっと戻せる
目的地から近い家と遠い家、あなたはどちらが便利だと思いますか?
家が近ければサッと出てサッと戻ってこられますが、あまりに遠いと、帰るのが面倒くさいし、途中で寄り道したり迷ったりすることも。
これはモノの「住所」を決めるときにも言えること。モノがラクに出たり戻ったりできるようにしたいなら、「モノはできるだけ使う場所の近くに置く」のが鉄則です。もちろん、人間にとっても、お目当てのモノを手に取ったり、片づけるために、あまり動いたり、考えたりしなくても済むのですから、とてもラクチンのはず。それなのに自分がラクできない場所に、うっかりモノの「住所」を決めてはいませんか?
たとえば、ベッドに寝転がり、好きな音楽を聴きながら通販カタログを眺めるのが至福のとき、という人がいたとします。でも、カタログをしまう場所に決めたのは、ベッドから一番遠い入口近くのソファ横の本棚。カタログを読み終わるたびにわざわざ数歩歩いて本棚に立てる、なんて面倒なこと、続くわけがありません。
となると愛読書のカタログは行き場がなく、絶えずベッドの上か、床の上に置きっぱなしの状態に。もし、ベッドのすぐ横をカタログの「住所」に決め、マガジンラックを置いて置き場所を作れば、こんなことにはならないのに……。
ズボラを極めれば、理想的なモノの「住所」が見えてくる
基本的に保守的で面倒くさがり、というのが人間の習性。いったんモノの置き場所を決めてしまうと、なかなか見直す気にはなれません。でも、あまりよく考えず、適当に決めたモノの置き場所をキープするために、面倒な行動パターンや、不快な環境に甘んじなければならないとしたら、結局耐え切れず部屋がさらに散らかる……という流れは目に見えています。
片づけ下手な人ほど、「モノを動かす」という行為から、おっくうがって逃げてしまう傾向がありますが、何が便利かは、人それぞれに違うはず。固定観念にとらわれず、柔軟な発想とチャレンジ精神で本当にしっくりくるモノの「住所」を見つけましょう。
たとえば、キッチンで料理本を見ながらよく料理する人ならば、本は本棚にしまうべき、という常識はこの際無視して、キッチンの片隅に料理本スペースを作りましょう。わざわざ別の部屋の本棚まで行く手間が省けるし、キッチンで本が目に入るたび、何か新しいレシピに挑戦する気にもなれそうです。
ズボラを自称するあなたなら、「これがどこにあったら自分が一番ラクができるか」を、とことん追求しましょう。それこそが理想的なモノの「住所」を決める近道だからです。
ふだん感じている生活のなかの「不便」を思い出し、それを一つひとつ、つぶしていく。そう考えると、楽しいですよ。
POINT
モノの「住所」はよく使う場所の近くに設けるのが鉄則。どこに置けば一番ラクができるかを考えよう。
よく使うモノには「一等地」を用意
使う頻度でランクづけして置き場所を決める
使う場所の近くに置く、というのはモノの「住所」を決めるときの鉄則ですが、本当に使いやすく、片づけやすい場所=「一等地」には限りがあります。
でも、あなたの部屋をよく見渡してみてください。ふだんあまり出番のないモノを、すぐ目について手も届きやすい「一等地」に置いていませんか?
たとえばマイルームで一番目につきやすく、使いやすい場所を占領している大きな本棚。そこにしまわれている本のほとんどは「もう読み終わったけど捨てられない」という冬眠本ばかり。ふだんはあまり出し入れもなく、棚板にはほこりがうっすらとつもっていたりもします。その一方で、ふだんの生活で大活躍しているモノたちが出し入れしにくい不便な場所に押しやられているとしたら、あまりにももったいなさすぎます。
棚や引き出しなら、目線を上限、手を下ろしたときの指先を下限にした範囲が、一番モノを出し入れするのがラクな「一等地」。毎日ひんぱんに使われているモノの「住所」には、ぜひこの場所を確保したいものです。
手を伸ばしたり、かがんだりしないと出し入れできない場所は「二等地」で、踏み台がないと、手を伸ばしても届かない高い場所は、「三等地」。奥行きがある場合は、奥より手前の方が上等なエリアになるのは、言うまでもありません。出番は少ないけれど、捨てるにはしのびない、というモノは押し入れの天袋、などといった「番外地」に。たまにしか使わないモノは、その頻度によって、どこに「住所」を構えるかを考えましょう。
本やCDなど、同じグループのモノがたくさんある場合も、全部を同じエリアにしまう必要はありません。よく使うモノだけをひいきして、「一等地」に移せばいいのです。
同じ本でも、お気に入りは「一等地」、冬眠本は「番外地」へ
さきほどの本棚をこの観点から見直してみると、本はお気に入りの数冊だけ、マイルームの「一等地」に残す。読まないけど処分できない冬眠本は押し入れの奥などの「番外地」に移ってもらい、空いた「一等地」はほかの使用頻度の高いモノに譲る、というのが合理的です。
収納スペースごとにも見ていく必要があります。本棚なら一番よく読む本が、クロゼットなら一番よく着る服が、食器棚なら毎日使う食器が、それぞれ一番取り出しやすくしまいやすい「一等地」にあるか。一つひとつ考えながら見直してみましょう。
部屋の「一等地」に置くモノを厳選する、これだけでも、暮らしの快適さは格段にアップします。
POINT
ふだんよく使うモノには一等地を用意、ふだん使わないモノは押し入れ奥などの番外地に。
「いらないかも箱」は片づけの救世主!
これはじゃま!と思った瞬間に入れておく
自分の行動パターンから、どこに何があると便利なのか、一つひとつのモノの理想的な「住所」がわかってきたとします。さっそくその場所に引っ越したいのはやまやまですが、すでにその住所にどっかり居座っているモノがあり、とても後から入るスペースはない、なんてことはよくあります。
先にあったモノたちが本当にその場所でひんぱんに使われ、自然とベストな置き場所として定まってしまっている場合は、両者が共存できるように工夫する必要があります。
でも、どうしてコレがここにあるんだろう? と首をかしげたくなったり、実は置いてあるだけで、全然使ってなかった、なんていうケースも少なくありません。
モノの住所を決める過程で、先住のモノを見直した際に「コレじゃま!」と思ったら、その瞬間がチャンス。「いらないかも箱」と名づけた段ボール箱を用意して、じゃまなモノをどんどんそこへ追い出してしまいましょう。
なかに入っているものを見直して処分する
ずっと処分できなかったモノも、本来そこにあるべきモノが現れれば、場所を譲るためにどかさなきゃ、と思えるはず。モノの正しい住所を決めながら、不用品もスムーズに片づき、一石二鳥です。
「いらないかも箱」は押し入れの奥などにしばらく入れておき、ときどき見直して処分することを忘れないように。箱に入れるときは残すべきか捨てるべきかと悩んだモノなのに、不思議といったんこの箱に入れてしまえば、見直すときにはほとんどが迷いなく捨てられます。これもこの箱の効果の1つです。
POINT
じゃまなモノを一時的に入れておく「いらないかも箱」を用意。定期的に見直して本当にいらないモノは捨てよう。
「入れ物」と「入れ方」
ゆったりタイプの「入れ物」ならストレスなし
モノが戻るべき「住所」が決まったら、次はさらに具体的に「どんな入れ物」に「どうやって片づけるか」を考え、実践していく必要があります。
これこそがいわゆる「収納」という作業です。
でも、「収納」=細かくコツコツがんばらなきゃいけないイメージ、ありますよね。部屋にある全部のモノをきっちり分類し、細かく仕切って収納しなくちゃだめなんだ、とあまりの面倒くささに絶望的な気分になってしまう人もいるかもしれません。
でも大丈夫。ここでいう「収納」とは、きっちり仕切った間取りにお行儀よくモノを並べましょう、という提案ではありません。仕切りや収納場所をたくさん作っても片づけが複雑になるだけ。一見機能的でもずっとキープするのにものすごいエネルギーが必要で、ズボラさんには向きません。
片づけ下手さんにとって一番いいのは、「シンプル&ラクチン」だということ。出たり入ったりがとにかくラクチンで、ちょっとぐらいお行儀が悪くても外からは目立たない、そんなリラックスできる「入れ物」を用意してあげましょう。これなら、ズボラさんが管理するのもラク。ストレスのない収納が一番! です。
モノを出し入れするときの動作の数は1〜2がベスト
なかに入ったり出たりするのに、引き戸やら開き戸やらを何度も開けたり閉めたりしなきゃいけない家なんて、イヤですよね。
収納も同じこと。できるだけ少ない手間でモノを出し入れできた方がラクに決まっています。「入れ物」を探すときには必ず、「出し入れがしやすいか」を最優先にチェックしましょう。
たとえば、爪切りを使いたいとき、(1)リビングボードの開き戸を開けて、(2)そのなかに入っている小物入れを外に出し、(3)ふたを開けて、(4)取り出す、なんていう収納だったらどうでしょう。毎回4回の動作を経ないと、取り出せないし、しまえない。となると、ついつい出し入れがおっくうになり、結局そこらへんに出しっぱなしの運命まっしぐらです。
でも、爪切りの入れ物をリビングボードのなかの小物入れではなく、その横の飾り台の上のカゴに変えたら、しまうときはポンと放り込むだけだし、取り出すときもササッとさぐるだけ、それぞれ1アクションで済むからラクチンです。引き出しに入れたとしても、(1)引き出しを引く、(2)なかから出す、という2アクションでOK。これならズボラさんでも、片づけるのが苦になりません。
家中すべての収納はムリとしても、日常的によく使うモノにはやはり1〜2アクションで済む収納がベスト。モノを出し入れするときに「不便だな」と感じたその瞬間が、ベストの「入れ物」と「入れ方」を見つける最大のチャンス。「どこに置いたら便利か」「少ないアクションで取り出すにはどうしたらいいか」を考えてベストポジションを見つけましょう。
POINT
1〜2アクションの動作でモノが取り出せる「入れ物」と「入れ方」を考えよう。
収納には「カゴ」が必須
なんでも放り込めるカゴはズボラ収納に最適!
通販カタログにはそれこそ何十種類もの収納家具が載っていますが、どんなに便利でおしゃれな収納家具でも、「シンプル&ラクチン」でなければ、片づけ下手さんには使いこなせません。
でも、そんな片づけ下手さんの強い味方になってくれる、しかも高価な家具を買わずに今持っている収納家具を活用できる収納グッズがあります。それは籐や竹など、自然素材でできた「カゴ」です。
どこでも違和感なく置ける、しかもじか置きOK!
「カゴ」の一番の魅力は、仕切りがなくゆったりしているので、とにかく何でもポンポン放り込めること。もともと形がちょっとゆがんでいたりするので、きっちりではなく、ざっくりモノを入れるのに最適。たった1アクションで収納が完了するからラクチンです。
しかも存在そのものがナチュラルでいい味を出しているから、何を入れても絵になり、家中どこに置いても違和感がありません。フタのついていないカゴで中身が見えるのが気になるのなら、カゴに合いそうなおしゃれな布をかぶせればいいでしょう。
しかも、カゴならモノが多少増減しても融通がききます。たとえばキッチンに2つの大きめのカゴをじか置きし、冷蔵不要の野菜、乾物類や保存食とざっくりグループ分けしてカゴに入れれば、しまうのも探すのもラクチン。雑然としがちなモノをとりあえずまとめてしまうのにもってこいです。
カゴやトレイを引き出しにすれば、奥のモノもラクに取り出せる
カゴはじか置きするほか、棚に並べて使えば、奥行きを有効活用できる引き出しとして大活躍します。今ある棚の収納スペースがカゴのおかげでぐんと増えるからうれしい限り。食器棚など、食器の大きさと棚の奥行きに合うカゴを用意し、ここに食器を入れれば、奥のモノもラクに取り出せます。このカゴには平皿、など1つのカゴには1アイテムだけをぽんぽん放り込むルールにすれば、すっきり片づくシステムに。カゴのほか、ボックスやトレイも引き出す収納にはぴったりです。
色や形、大きさ、デザインのバリエーションが豊富なので、入れるモノと場所に合わせて、自由な発想で使い分けましょう。
目的や使うタイミング別にカゴや箱にまとめるのもおすすめ
カゴに放り込むといっても、脈絡なくなんでもかんでも放り込んでいたら、使うとき探すのにひと苦労。「用途や使うタイミングが同じものをざっくり分類して入れる」ようにすれば片づけるのも見つけるのもラクです。
目的別にパッキングされているものといえば、救急箱、裁縫箱、緊急避難用袋が思い浮かびますが、この発想をそのほかのモノにも生かせばいいのです。
お菓子作りが趣味なら、型や粉ふるいなどはもちろん、お菓子専用のラッピング袋まで、こまごまとした道具をすべてひとまとめにしてカゴに入れておけば、あっちこっちの引き出しや棚からいちいち必要なモノを探してくる手間が省けます。
さらにいいのは、ひとまとめにしておけば、それを手に自由に場所を選び移動できることです。たとえば、メイクボックスや、資格勉強ボックスなど。その日の気分によって、リビング、寝室など、いろんな場所で、さっと広げてパッと片づける。やってみるとかなりラクチン&快適です。
POINT
ポイポイ放り込めるカゴを使えば、ラクチンで見た目スッキリな収納ができる。
なお、本稿は『汚い部屋から今度こそ絶対抜け出す本』(永岡書店)から一部を抜粋して掲載しています。詳しくは下記のリンクからご覧ください。
※(4)「捨てられない人から脱却」はこちら