なぜ塩分の摂りすぎはダメなの?
塩分の摂りすぎは、健康によくない。そんなイメージを持っている人は多いと思います。塩分は体にどのように働きかけるのでしょうか。まずは、そのメカニズムに迫ってみましょう。成人の場合、体重の約60%は水分です。塩分の主成分であるナトリウムは体内の水分バランスや血中濃度を調節する働きがあるため、摂りすぎると体にさまざまな影響を及ぼします。

塩分の摂りすぎが体にどう影響するのか(筆者作成)
例えば、塩辛い食べ物をたくさん食べると、血液などの体液が濃くなり、体内の水分を増やして濃さを一定に保とうとして喉が渇き、水やビールをたくさん飲みます。その結果、体内の水分量が増えてむくみやすくなり、尿の量が増えて腎臓の負担が増し、血液量も増えて血管にかかる抵抗が強くなり、血圧が上がりやすくなります。そのため、塩分の過剰摂取が慢性化すると、高血圧や腎臓病といった生活習慣病のリスクを高めることにつながると考えられています。
塩分の適量はどれくらい?
では、どれくらいの塩分を食事から摂れば適量といえるのでしょう。基準となるのが、国(厚生労働省)の「日本人の食事摂取基準」で、5年ごとに改定されています。最新の2020年版では、生活習慣病の発症予防のため、成人の食塩摂取の目標量を「男性1日7.5g未満・女性1日6.5g未満」としています。この数値は前回の2015年版よりも男女共に0.5g引き下げられました。
また、日本高血圧学会では、高血圧の治療における減塩目標として、男女とも1日6g未満を推奨しています。なお、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では塩分不足については「通常の食生活では不足や欠乏の可能性はほとんどない」としています。
※これらの基準は目安なので、持病がある人はかかりつけ医の指示に従ってください。

写真左から、食塩6.0g(高血圧の人の目標量)、6.5g(成人女性の目標量)、7.5g(成人男性の目標量)。1日たったこれだけ!? と思ってしまう人も多いのではないでしょうか。
「減塩」は想像以上に難しい
とはいえ、「塩分は1日7.5g未満(女性は6.5g未満)」という基準が分かっても、どれくらいの食事量を目安にすればいいのか、イメージしづらいですよね。
いったい、私たちは普段1日で何gの塩分を摂取しているのでしょう。
ある日の私の1日(3食)の食事を一例に、塩分(食塩相当量)を計算しました。栄養指導の食事調査でも用いられる「秤量法」という方法で、実際に食べた食材や調味料の重量を計量し、国(文部科学省)が公表している「日本食品標準成分表」の食塩相当量の数値から換算しました(※)。
食いしん坊のため、毎食いろいろ欲張って食べてしまっていますが、お許しください。家族に高齢者がいることもあり、塩分の摂りすぎには注意していたつもりですが、結果はいかに!?
※食品の重さを調理前に計り、日本食品標準成分表に記載の食品名ごとに記載されている100gあたりの食塩相当量の数値から、実測重量あたりの食塩相当量を換算。小数点第一位以下を四捨五入した推定値となります。
◆朝食(パン食)
1人分の合計塩分1.4g

レーズントースト+有塩バター、キウイフルーツ、ピーナッツ、ミルクコーヒー
最も塩分が多かったのはレーズンパンで、2枚(約120g)あたり1.2gの塩分でした。レーズンパンに限らず、実はパンには意外に塩分が含まれています。ちなみに、白ごはんは塩分0gです。
パンに含まれる塩分の目安(100gあたり)
食品名 | 塩分 (食塩相当量) |
---|---|
角形食パン | 1.2g |
ロールパン | 1.2g |
フランスパン | 1.6g |
ぶどうパン | 1.0g |
ベーグル | 1.2g |
◆昼食(めん類)
1人分の塩分合計4.2g

ひやむぎ+めんつゆ、トッピングいろいろ(錦糸玉子・トマト・きゅうり・鶏むね肉)、薬味(大葉・葉ネギ・しょうが・ごま)、鯛のカルパッチョ(オリーブオイル&レモンソース)、長芋とオクラとモロヘイヤのお浸し
最も塩分が多かったのは、めんつゆ。写真の量(45ml)で1.5gありました。めんつゆを継ぎ足せば、さらに塩分過多になります。また、ひやむぎ(ゆで260g)にも0.8gの塩分が含まれていました。昼食をひやむぎ+めんつゆだけで済ませても2.3gの塩分です。特に小麦を使う麺類(中華麺、そうめん、ひやむぎ、スパゲティなど)は製麺工程で食塩を使うため、ゆでこぼした後も塩分が残ります。
めん類に含まれる塩分の目安(100gあたり)
食品名 | 塩分 (食塩相当量) |
---|---|
うどん(ゆでた後) | 0.3g |
そうめん・ひやむぎ (ゆでた後) | 0.2g |
中華めん(ゆでた後) | 0.2g |
マカロニ・スパゲティ (1.5%食塩水でゆでた後) | 1.2g |
そば(ゆでた後) | 0g |
◆夕食(和洋折衷)
1人分の塩分合計3.8g

ごはん、煮込みハンバーグ(いんげん・きのこの付け合わせ)、納豆のせ冷奴、シラス干しとワカメの酢の物、自家製ぬか漬け(パプリカ・人参・きゅうり・ミニトマト)
塩分が多かったのは、煮込みハンバーグのソース。野菜ジュース(50ml)+ウスターソース(大さじ1/2)+トマトケチャップ(大さじ1/2)で手作りしたところ、1.2gの塩分に。食塩以外の調味料の多くに塩分は含まれているのです。また、シラス干しとワカメの酢の物の塩分が0.9gで、ぬか漬けの塩分0.7gよりも数値が高くなりました。シラス干し、ワカメに限らず水産加工品を使ったおかずは塩分が多くなりがちです。
調味料に含まれる塩分の目安(小さじ1杯あたり)
食品名 | 塩分 (食塩相当量) |
---|---|
食塩 | 6.0g |
濃い口しょうゆ | 0.9g |
うす口しょうゆ | 1.0g |
減塩しょうゆ | 0.5g |
米みそ・淡色辛みそ (信州みそなど) | 0.7g |
米みそ・甘みそ (西京みそ) | 0.4g |
ウスターソース | 0.5g |
トマトケチャップ | 0.2g |
オイスターソース | 0.7g |
ナンプラー | 1.4g |
穀物酢,米酢 | 0g |
マヨネーズ(卵黄型) | 0.1g |
水産加工品の塩分の目安
食品名 | 塩分 (食塩相当量) |
---|---|
塩ザケ・甘塩 (1切・80g) | 2.2g |
アジ・みりん干し (5枚・100g) | 1.7g |
シラス干し (大さじ1半・10g) | 0.4g |
サバ・水煮(50g) | 0.4g |
タラコ (1/2腹・50g) | 2.3g |
焼きちくわ (中1本・30g) | 0.6g |
カニ風味かまぼこ (1本・15g) | 0.3g |
味付けのり (小5枚・3.5g) | 0.2g |
真昆布 (10cm・3g) | 0.2g |
カツオ・削り節 (5g) | 0.1g |
というわけで、ある日の私の3食・朝昼夕のトータル塩分は、9.4g。恥ずかしながら目標量オーバーです(涙)。健康を考えて栄養バランスのいい食事を心がけているつもりでも、塩分を思っている以上に摂りすぎていることが改めて身にしみて分かりました。