今回は、レーズンを使って行う「食べる瞑想(レーズンメディテーション)」をご紹介します。忙しい日々のなかでは、「食事」がおざなりになりがちです。テレビやスマホを見ながら食べたり、短い時間にかき込んだり、時間だからといって機械的に口に運んだり……。今回ご紹介するメソッドは、「食べる」という行為を、五感を使ってじっくり再確認していくものです。心が落ち着き、暴飲暴食の抑制や消化不良の改善にもつながります。ぜひ一度取り組んでみてください。
「食べる」という行為を大切にしよう
ストレスが脳を暴食に走らせる
皆さんは、空腹ではないのにたくさん食べてしまったり、駄目だとわかっていても食べだすと止まらなくなったり、ということはありませんか?もしくは、食べることで罪悪感を覚えたり、食べることがストレスになったり……。このように、食事を適切にとれない状況は、心と体のバランスが崩れているサインです。
忙しい毎日を送っていると、私たちは多くのストレスを抱えることになり、それが自律神経やホルモンバランスの乱れを誘発します。そうすると、脳はストレスを解消しようとして、おなかも空いていないのに食べ物を欲しがります。
かといって、食べた後にストレスが消えるかというと、そうでもないでしょう。暴食の後に残るのは、「ああ、食べてしまった」という後悔だったり、食べ過ぎによる胸やけだったり、もしくは、「ちゃんとした食事をしなければ」というプレッシャーだったりしませんか。
食べる瞑想=五感を使って食べる
そんな時に実践してほしいのが、今回ご紹介する「食べる瞑想(レーズンメディテーション)」です。
「瞑想は座禅を組んで静かに行うもの」という認識の方にとっては、「食べる瞑想」という言葉には違和感があるかもしれません。でも実は、「今、その瞬間に集中している」状態であれば、どんな姿勢でも、何をしていても、「瞑想」と定義することができるのです。
「食べる瞑想」では、五感を最大限に活用して、「食べる」という行為をゆっくりと意識的に行うことで、「食べる」ことを再認知していきます。
準備するものは、レーズンだけです。高級なものである必要はありません。お近くのスーパーやコンビニで購入できるもので十分です。メーカーや粒の色なども、お好きなもので構いません。
「食べる瞑想」で期待できる効果
食べる瞑想を実践すると、様々な気づきと効果があります。以下、簡単にまとめました。
・自分の食事中の癖やパターンに気づく。
・量や素材ではなく、食事の質に注目することで、満足感が増す。
・気持ちを落ち着かせることができる。
・暴飲暴食を止めるきっかけになる。
・食べすぎや消化不良を改善する。
食べる瞑想は、忙しい現代人が見落としている小さな幸せに気づき、日常生活での問題を解決するきっかけになります。概要が分かったこところで、早速実践に入っていきましょう!
食べる瞑想の基本は5ステップ
ステップ1:「視覚」を使ってレーズンを観察する
まずは、袋の中から2~3個のレーズンを取り出して、手のひらに乗せて観察しましょう。ここでは、レーズンの外観に注目します。普段はじっと見ることがないレーズン。どのように目に映りますか?
例: 表面がしわになっている。透明感がある。黒い。サイズがバラバラ。色も異なる。
ステップ2:「触覚」を使ってレーズンを感じる
次に、それらのレーズンを軽く手のひらの上で転がしてみましょう。どのような発見がありますか?正解・不正解はないので、自由に感じ取っていきましょう。
例: 少しべたつきがある。表面のしわの凹凸を感じる。硬い。レーズンによって転がり方が違う。
動きを止め、2~3個のレーズンの中から、あなたのお気に入りの1粒をピックアップしてください。それを反対の人差し指と親指でつまみ上げ、観察を深めていきます。なぜその1粒を選びましたか?何か理由があるはずです。
例: キラキラと輝いていたから。大きかったから。小さかったから。丸々と太っていたから。手の真ん中にあったから。おいしそうだったから。
その1粒を選んだ理由が明確になったら、それをつまんだ指で押してみましょう。どのような感覚がありますか?その感覚は、手のひらに乗せていた時のものと同じですか?それとも異なりますか?
例: ねっとりしている。力を加えると少し凹む。弾力がある。思ったより柔らかい。
ステップ3:「聴覚」を使ってレーズンを聞く
あなたの選んだ1粒のレーズンを耳元へと近づけ、レーズンを軽く押してみましょう。聞こえてくる音に集中します。どのような音が聞こえますか?
例: 小さくキューという音が聞こえる。ニチャッという音がする。何も聞こえない。
ステップ4:「嗅覚」を使ってレーズンを嗅ぐ
鼻の近くにレーズンを移動させ、匂いを観察しましょう。集中しやすいように目を閉じても構いません。どんな匂いがしますか?
例: 甘い匂い。乾物の匂い。懐かしい匂い。
ステップ5:味覚を使ってレーズンを味わう
それでは、指でつまんでいるレーズンを口の中へ運びます。まずは、舌先や口の中でレーズンを感じましょう。手よりも口の中の方が感覚が鋭いので、新しい発見があるかもしれません。手のひらで感じたことを、再度感じる形でも問題ありません。どんな感じがしますか?
例: 外側の皮が硬い。噛まなくても味がする。香りが鼻に抜ける。だんだん柔らかくなってくる。
舌ざわりを十分に味わったら、ゆっくり噛んでください。咀嚼しながら、レーズンから感じることがあるでしょう。どんなことに気づきますか?
例:歯にくっつく。甘い。ジューシー。香りが口の中に広がる。
最後に、手のひらに乗せている残りのレーズンも、口の中に入れてゆっくりと味わいましょう。1粒だけを食べた時と比べて、何か違いはありますか?また、どのような気持ちになりましたか?
例: 香りや甘みをより強く感じる。満足度が高まる。
まとめ
「食べる」という行為はとても原始的です。それゆえに、私たちの心と体に深くかかわっています。食事をないがしろにしていると、私たちが本来持っている五感(視覚・触覚・聴覚・嗅覚・味覚)というすばらしい能力が使われず、さびついてしまいます。ぜひ、レーズンという身近な食べ物を使って、五感を研ぎ澄ましてみてください。食事がよりおいしく感じられ、適正な量で満足できるようになり、体の求める食材がわかるようになるでしょう。