【変わるワタミ】から揚げの天才や「愛の不時着」韓国フライドチキンが好調 いまこそ伸びるFC事業

暮らし・生活・ペット

コロナ禍で、居酒屋事業の業績が大きく悪化したワタミでは、現在事業再構築が盛んに行われている。以前、焼肉事業が好調であることを述べたことに続いて、今回はワタミのFC(フランチャイズ)事業の展開スピードが著しくなっているという話題だ。2018年11月スタートした「から揚げの天才」が、今年の7月に100店舗を突破。そして、2016年より手掛けている韓国本部のフライドチキンチェーン「bb.qオリーブチキンカフェ」が直営店展開での実績を積み、この5月に9号店としてFC店がオープン。この二つの業態をFC展開で支えているのは、ワタミで社員として経験を積んだ人たちだという。

「から揚げの天才」が業界最速で100店舗突破

前回、現在ワタミが事業再構築を行っていて、新規に取り組んでいる焼肉事業が好調であることを述べた。今回もワタミの話題になるが、同社のFC(フランチャイズ)事業の動向について述べたい。

FC事業は、直営で立ち上げた業態が繁盛店となり、オペレーションを分かりやすく組み立てることが重要となる。これによって出店のペースは速くなり、本部の収益が安定する。今日の飲食業では、このようなFC事業展開にシフトするところが増えていて、ワタミはこれらのモデルケースとして注目されている。

タレントのテリー伊藤氏をキャラクターに

ワタミのFC事業は「から揚げの天才」が第1弾だ。KFC(ケンタッキー・フライド・チキン)のカーネル・サンダース氏になぞらえて、放送作家でタレントのテリー伊藤氏をキャラクターにして、2018年11月、東京都大田区の梅屋敷に1号店をオープンした。

から揚げは1個60ℊで価格は106円(税込)、値ごろ感と見た目のボリューム感をアピールしている。テリー伊藤氏の実家が東京・築地の玉子焼き店であることから、その専門性のイメージから玉子焼きを重要なサイドメニューとして位置付けた。

ワタミが2018年11月初めて参入したFC事業「から揚げの天才」は2年7カ月で100店舗を突破した。

この「から揚げの天才」は、7月8日100店舗を突破した。1号店オープンから2年7カ月で100店舗突破は、FCチェーンの歴史の中で最速とのこと(同社調べ)。ちなみに、100店舗中の60店舗はコロナ禍で影響を受けた居酒屋事業者で、コロナ禍にあって飲食業界に大きく貢献している。

韓国本部のフライドチキンチェーンを推進

次に、ワタミが推進しているFC事業は「bb.qオリーブチキンカフェ」。これは1995年に韓国で創業した業態で、冠の「bb.q」とは「Best of the Best Quality」つまり「最高品質の中の、最高」を意味している。展開するGenesisグループは「世界No.1のFC企業」を志向し、同ブランドは1999年に国内1000店舗達成、2003年より海外での展開を開始し、2017年にアメリカ、ニューヨーク・マンハッタンに世界旗艦店をオープンした。現在は、世界25カ国で2500店舗を展開している。

今年5月にイオンモール川口(埼玉県川口市)の1階にオープンした「bb.qオリーブチキンカフェ」。

商品の特徴は、チキンを揚げるオイルにエキストラバージンオリーブオイルと、コレステロールがゼロのソイオイルを配合したものを使用していること。これによって、フライドチキンがカリッと上がり、サクッとした食感でさっぱりとした食後感が人気だ。

ワタミ出身の多田匡市氏が運営

ワタミでは、2016年に同ブランドを展開するGenesisグループとマスターフランチャイズ契約を締結。カフェタイプの業態を東京・大鳥居(東京都大田区)にオープン。以来、路面店、商業施設、フードコート、ロードサイトと直営店を8店舗展開。2021年5月28日に初のFC店舗をイオンモール川口(埼玉県川口市)の中に出店した。ワタミでは、2022年3月期にFC80店舗の展開を想定している。

「bb.qオリーブチキンカフェ」商品のイメージカット。オリーブオイルで揚げていてカリッと揚がりサクッとした食感が特徴。

「bb.qオリーブチキンカフェ」(以下、bb.q)イオンモール川口店は、同ブランド初のFC店である。2016年にワタミの本社がある東京・大鳥居に直営1号店をオープンして以来、さまざまな立地で直営店を展開し、9店舗目としてFC1号店をオープンした。

bb.qイオンモール川口店を運営するのは、ハッピーメーカー株式会社(本社/東京都荒川区、代表/多田匡市)。同社代表の多田氏は、1978年5月生まれで大阪府出身。2002年2月ワタミに入社し、2009年4月「わたみん家(ち)」大宮西口店(現・三代目「鳥メロ」大宮西口店)で独立を果たした。以来、15店舗を展開し、埼玉・大宮エリアに4店舗を構えるなど、地場を築いている。

「から揚げの天才」FC1号店で実績をつくる

ハッピーメーカーが「bb.q」をオープンすることになったきっかけは、ワタミが2018年より「から揚げの天才」を展開したことに始まる。

「当社のパートナーたちが家族を持つようになり、夜の業態だけでなく昼の業態を営業したいと思っていたタイミングだった」(多田氏)ということで、早速、加盟店となることを申し出て「から揚げの天才」のFC1号店として2020年2月東京・十条にオープンした。

同店は、たちまちにして100mの行列ができるほどの人気を博した。以来、川口(埼玉県川口市)、平和島(東京都大田区)、大山(東京都板橋区)と計4店舗展開。コロナ禍で夜の業態は売上を減じることになったが、この強い昼の業態によって会社の基盤を維持してきた。

月商400万円から月商1000万円レベルへ

多田氏は、bb.qがワタミの本社近くで営業していることから、同店の動向に注目をしていた。それは「オリーブオイルで揚げたフライドチキン」という商品の特長がはっきりとしていること。そして、それを経験した顧客がリピーターとなって広がっていく、ということだ。この店は、18坪でスタート時は月商400万円あたりであったが、4年が経過した2020年には、月商1000万円レベルに成長していた。

多田氏は、かねてワタミにbb.qを加盟店として展開したいことを申し出ていたところ、昨年の秋口に現在のイオンモール川口の物件を紹介された。bb.qは、既に商業施設内の店舗(ポンテポルタ千住店/東京都足立区)を運営していて、ここでの業績が安定していることから、多田氏はイオンモール川口に出店することを決断した。

多田氏は、bb.qの魅力についてこう語る。

「世界に2500店舗あるのですから商品力については言うまでもありません。私は揚げ物を好んで食べますが、bb.qのフライドチキンは胃もたれがしないのです。これが女性客に人気で、また小さな子供たちも『おいしい』といって好んで食べます。小さな子供が『bb.qが食べたい』といって親を促すシーンがイメージできます」

韓国ドラマの『愛の不時着』の舞台

メニューにはチキンバーガーもあるが、フライドチキンをセットで購入するのが一般的。

スタンダードな商品は「オリーブチキン」(1ピース290円/税込、以下同)、「ヤンニョムチキン」(1ピース330円)、「オリーブチキンフィンガー」(3本340円、10本970円)であるが、「チキンフィンガーコンボ」880円、「ヤンニョムチキンコンボ」990円、「bb.qツインスターボックス」1990円、「オリーブファミリーボックス」2990円という具合に、1人用のセットメニューや、ファミリー向けのテイクアウト商品が用意されている。これらで、イオンモール川口店ではテイクアウト比率が8割となっている。まとめ買いが多いことから、客単価(会計単価)は1400円となっている。

既存店の客単価(会計単価)は1350円だが、まとめ買いでのテイクアウト比率が8割を占めていることから同店では1400円となっている。

ドリンク出数が多いので原価率が抑えられる

bb.q日本オリジナルの商品の「生搾りレモネードウォーター」「生搾りレモネードスパークリング」(単品290円、セット価格+190円)は、「フライドチキンに合うドリンク」として開発されたものだ。こちらも人気商品となっている。同店では、客席数が65席と多いことから、ドリンクの出数が多くなり、bb.qの通常店舗の原価率が38%となっているところ、同店の場合はそれよりも低くなることが想定されている。

同店店は客席数が65席と広くイートインが多くなり、ドリンクの出数が多くなることから既存店の原価率38%より低くなることが想定されている。

ドリンクの看板商品であるレモネードは毎日店内でレモンを絞ってつくっている。

また、bb.qは、韓国ドラマの『愛の不時着』の舞台となっていることから、この番組のファンである若い女性客からこのブランドそのものがよく知られている。これらを背景に、同店の顧客は8割が20~40代の女性となっている。また、アルバイト募集に際して、相場時給よりも低い950円に設定したにも関わらず、女性の大学生やフリーターが140人応募したという。その中から現在の26人を採用した。

「家賃が高くても、業態力がしっかりと備わっていれば、時給を抑えても良い人材が集まってきます。これによって経営バランスを優位に図ることができます」

多田氏はこのように語り、bb.qのポテンシャルの高さを確信している。

業態再構築の最前線となっている焼肉事業が好調に推移しているワタミが、FC事業でも地場を固めてきている背景には、多田氏のようにワタミで逞しく育った飲食事業者たちの奮闘も存在している。

執筆者のプロフィール

文◆千葉哲幸(フードサービスジャーナリスト)
柴田書店『月刊食堂』、商業界(当時)『飲食店経営』とライバル誌それぞれの編集長を歴任。外食記者歴三十数年。フードサービス業の取材・執筆・講演、書籍編集などを行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社、2017年)などがある。
▼千葉哲幸 フードサービスの動向(Yahoo!ニュース個人)

PR

【ドライブ中に純正ナビでテレビ視聴!】データシステム・テレビキットシリーズから最新車種対応のカー用品『TTV443』が登場!
長時間のドライブで同乗者に快適な時間を過ごしてもらうには、車内でテレビや動画を視聴できるエンタメ機能が欠かせない。しかし、純正のカーナビは、走行中にテレビの視聴やナビ操作ができないように機能制限がかけられているのがデフォルト……。そんな純正...

PRガジェット