【ひざ痛を防ぐ生活習慣】階段昇り降りの「痛まないテクニック」を紹介 先に出す脚と着地がポイント

暮らし・生活・ペット

「痛みは急でも、原因は急ではないんですよ」私はよく、患者さんたちにこうお話しします。大多数のひざ痛は、「悪い生活習慣」によって関節や筋肉のトラブルを招き、結果的に痛みや動かしづらさを生んでいるのです。「いい生活習慣」は取り組んでみると、意外と簡単なことばかりです。書籍『ひざ痛は1分で消える!』(マキノ出版)の著者である高子大樹先生に、「つらいひざ痛を終わらせる方法」について解説していただきました。

解説者のプロフィール

高子大樹(たかこ・ひろき)

たかこ整骨院、くろまく整骨院総院長。柔道整復師。JATACアスレティックトレーナー。2006年、FIFAクラブワールドカップトレーナー。2007年、横浜市金沢区にたかこ整骨院を開院。2018年、横浜市磯子区に2院目となるくろまく整骨院を開院。痛みを根本から取り除く独自の「痛みの黒幕理論」を提唱。著書に『「黒幕」を知れば痛みは治る!』『足腰は1分で強くなる!』(どちらも自由国民社)がある。
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本稿は『ひざ痛は1分で消える!』(マキノ出版)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。

少しの工夫で「こんなに違うのか!」と実感できる

「痛みは急でも、原因は急ではないんですよ」

私はよく、患者さんたちにこうお話しします。ひざを支える筋肉を普段からしっかりケアしていれば、痛みは現れません。

ところが、ケアを何もせず、むしろ、ひざによくない動作や習慣を日常的にくり返してきた”借金”が積み重なったことで、ひざの痛みが現れた──。

つまり、大多数のひざ痛は、「悪い生活習慣」によって関節や筋肉のトラブルを招き、結果的に痛みや動かしづらさを生んでいるのです。

そこで、やっかいなひざ痛を根本から断ち切るには、ひざに悪影響を及ぼす生活習慣を見直す必要があります。

仮に痛みや動かしづらさが治まったとしても、ひざに負担をかける「悪い生活習慣」をくり返せば、再発は十分起こりうるでしょう。同じような症状に何度も苦しまないためには、やはり日常の生活習慣は軽視できないのです。

そして同時に、ひざにとって「いい生活習慣」を、できるだけ取り入れてほしいと思います。ひざトラブルの進行を止められるだけでなく、本書でご紹介するストレッチと体操の効果も、確実にアップするのです。

その結果、ひざ周りの各部位が本来あるべき位置に戻り、痛みや動かしづらさも解消・改善していくでしょう。

次の項からは、「いい生活習慣」の具体的な内容を解説していきます。いくつかの項目があり、読んだだけでは少し面倒に感じられるかもしれません。しかし、いざ取り組んでみると、意外と簡単なことばかりです。

試してみると、「ちょっと工夫するだけで、こんなに違うのか」と実感できるでしょう。今日から早速、お試しください。

階段の昇り降りは”かかと”を使おう

最初にお伝えしたいのは、階段対策です。実際に階段の昇り降りをしなければならない場面では、これからご紹介する「痛まないテクニック」を実践してみてください。

階段の昇り降りをするときは、皆さんの想像以上に大きな負荷がひざに襲いかかっています。

平地を普通に歩いているときでさえ、ひざには体重の約3倍もの重みがかかっています。体重50kgの人であれば、およそ150kgの負荷がかかることになります。さらに、階段の昇り降りをすると、ひざにはなんと7〜8倍の負荷=350〜400kgがかかるのです。

そこで、とにかく意識していただきたいのは、良質な衝撃吸収剤である「“かかとの脂肪”を最大限に使う」ことです。

実は、かかとからくるぶし周辺は、多くの脂肪に覆われ、保護されています。「かかとは脂肪組織の集まり」と覚えていただいてかまいません。

そこで、ひざへのダメージを軽減するために、階段昇降時には、常にかかとから着地するように心がけましょう。かかとをクッション代わりにするのです。

さらに、昇り降りの「脚の運び方」にも工夫をこらすと、ひざに優しい動きが実現できます。そのテクニックとは、次の通りです。

昇るときには、痛みが少ないほうの脚を先に出し、1段ずつ両脚を揃える
降りるときにも、痛みが少ないほうの脚を先に出し、1段ずつ両脚を揃える

このテクニックは、ひざが痛いのに、どうしても階段の昇り降りをしなければならない状況で威力を発揮します。もちろん、手すりも使っていただいてOKですが、手すりに重心を乗せ過ぎないよう注意してください。

立ち上がるときの痛みを回避するカギは”股関節”にあり

階段の昇り降りや歩くとき以外にも、ひざ痛持ちの人がよく苦労する場面といえば、「イスから立ち上がるとき」でしょう。

実際に立ち上がるときの動きに沿って、負担を軽減するテクニックをご説明しましょう。

まず、座った状態で上半身を傾ける際は、背中を丸めるのではなく、股関節を曲げて、骨盤を軽く前傾させながら立ち上がってください。こうすると、お尻や太もも裏側の筋肉がしっかり働き、スムーズに立ち上がれます。

次に、骨盤を前傾させながら足裏に力を入れていき、その足裏で床をつかむような意識を持ちながら、立ち上がってください。

股関節を曲け゛て、骨盤を軽く前傾させなか゛ら立ち上か゛る
※左右の脚の付け根に両手のひらを当てておくと、脚の曲か゛りを意識て゛きる

骨盤を前傾させなか゛ら足裏に力を入れていき、床をつかむような意識を持ちなか゛ら立ち上か゛る

このような一連の流れで立ち上がると、お尻や太もも裏側の筋肉である”アクセル筋”の力に加えて、上方向への地面反力もきちんと作用するので、これまでよりずっと楽に立ち上がれるでしょう。

この立ち上がり方を習慣づけるためには、立ち上がる際、左右の脚の付け根(股関節)に両手のひらを当てておくといいでしょう。そして、「その手の位置から脚が曲がっていること」を確認しながら動き出すのです。このとき“両手が股関節で挟まれる”ことを確認するといいでしょう。

そこからは、スクワットを行うときのように、股関節を伸ばして、ゆっくりと真上に立ち上がります。目線は下ではなく正面を向くと、姿勢も崩れません。

こうした立ち上がり方を実践することで、ひざに過剰な負担がかからないうえ、お尻や太もも裏側の筋肉の”プチ筋トレ”にもなります。短期的にも長期的にもお勧めの習慣術といえるでしょう。

おわりに

私は患者さんに、「ひざ痛をなぜ治したいのですか?」「治ったら何をしたいですか?」と、よくうかがいます。

なぜなら、ご本人の中で「目的」や「目標」を明確にしていただきたいからです。

「海外旅行にもう一度行くため」「寝たきりになりたくないため」「孫をちゃんと抱いてみたい」など、どんな目的・目標でもかまいません。

それさえあれば、治すモチベーションが高まり、セルフケアも継続できるでしょう。私の役割は「あなたの背中を押すこと」であり、最終的にあなたのひざ痛を治すのは「あなた自身」なのです。

そもそも、あなたの体に最後まで責任を持てるのは、世界中であなたしかいません。ですから、自分にとっての目的や目標を携えて人生を進むことは、とても大切なことなのです。

[本書Q&Aコーナーより抜粋]

「どうすればひざの痛みを取ることができるか?」

これは、私が20年以上、現場で働くうえで、常に課題として向き合っているテーマの一つです。

これまでの経験を通じて学んだことは「常識を疑う」「疑問を持ち続ける」ことでした。常識を疑い続けて、何度も失敗をくり返した結果、ようやくたどり着いた方法を、本書にまとめました。

本書を通じて伝えたいこと。それは……

「痛みには、必ず黒幕がいます!」

ひざの痛みでいえば「関節の位置の異常」と「筋肉の弱化」が、これに当たります。ひざ痛は、正しく整えて鍛えれば、必ず光は見えてきます。

私からのお願いは、「まずは3カ月、継続してください」ということです。

継続は、必ずあなたの人生を変える、大きな結果をもたらします。もちろん、成果には個人差がどうしても出てしまいます。

それでも症状がよくなる人は、結局、素直に継続できる人なのです。

痛みは悪い側面も多いのですが、捉え方を変えれば、あなたの生活習慣の間違いを気づかせてくれるものです。しっかり痛みと向き合って乗り越えることで、自信を回復するきっかけになればと願っています。

本書を通じて、前向きな人や笑顔になる人が増えれば、こんなにうれしいことはありません。

■図版/田栗克己
■イラスト/福場さおり(I and d company)、石玉サコ


本稿は『ひざ痛は1分で消える!』(マキノ出版)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。書籍内では、ひざ痛の”黒幕”である真の原因から、ひざ痛を解消するためのストレッチと体操を、順を追ってわかりやすく解説しています。詳しくは下記のリンクからご覧ください。

ひざ痛は1分で消える!
¥1,430
2021-10-28 16:31

前記事:「ひざ関節がプレッシャーから解放されるストレッチ2種」 もご覧ください。

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