お酒と料理の相性を楽しむ「ペアリング」。ここでは、書籍『いつものお酒を100倍おいしくする 最強おつまみ事典』の著者で発酵料理家の真野遥さん、同監修者で工学博士の數岡孝幸さんに、料理を合わせる「ビール」について、そもそもどんな飲み物なのか、ビールの造り方や分類、ラベルの読み方を教えていただきました。あなたにぴったりのビールがわかる「色別ビールタイプ診断」もどうぞ!
解説者のプロフィール
真野遥 (まの・はるか)
発酵料理家。1990年生まれ。法政大学人間環境学部卒業後、商社勤務を経て、飲食店のキッチンや料理研究家アシスタントの経験を積み、料理家として独立。現在は東京、京都を中心にレシピ開発やメディア出演、日本酒ペアリングが学べる料理教室の主宰など幅広く活動中。著書に、『手軽においしく 発酵食のレシピ』(成美堂出版)がある。好きなお酒はビールと日本酒。旬の食材を使ったおつまみを合わせるのが好き。
本稿は『いつものお酒を100倍おいしくする 最強おつまみ事典』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
イラスト/スケラッコ
監修/數岡孝幸(東京農業大学応用生物科学部醸造科学科准教授)
ビールができるまで
原材料
ビールのおもな原材料は、麦芽、ホップ、水。そのほか、米、コーン、スターチ、糖類を添加したものもある。
製法
STEP 1 製麦
麦に水分をふくませ、適度に発芽させたあと、熱風で焙乾し、モルト(麦芽)を作る。
STEP 2 仕込み
モルトを細かく砕き、湯に浸した麦汁を適度な温度で保ちながら糖化させる。ろ過してホップを加え、煮る。
STEP 3 発酵
発酵タンクに、冷却した麦汁、ビール酵母を入れ、発酵させる。
STEP 4 貯蔵・熟成
貯蔵タンクに移し、低温で2週間程度貯蔵。熟成させる。
STEP 5 ろ過
熟成が終わったらろ過し、酵母などを除去する。加熱処理をする場合もある。
FINISHED 容器詰め
樽やボトル、缶などに詰める。
ビールの分類
ビールは発酵方法で分類できます。さらに細かく分けた種類が「ビアスタイル」です。
ラガー
下面発酵(発酵が進むとタンクの底に酵母が沈む醸造法)で造られるビール。
特徴:ホップの苦味、爽快な喉越し、マイルドな味わい
ビアスタイル:ピルスナー、シュバルツ、ボックなど
エール
上面発酵(発酵が進むと酵母が麦汁の表面に浮いてくる醸造法)で造られるビール。
特徴:フルーティーな香り、濃厚でコクのある味わい
ビアスタイル:ペールエール、IPA、スタウト、ヴァイツェン、ベルジャンホワイトなど
自然発酵ビール
空気中や土の中、植物などに存在している野生酵母を使って造られるビール。
特徴:独特の香り、酸味
ビアスタイル:ランビック、クヴァス、ケルシュなど
ハイブリッド
材料や醸造法を混ぜ合わせて造られるビール。上面発酵と下面発酵を混合させるのが主流となっています。
特徴:フルーティーな香り、スッキリした飲み心地
ビアスタイル:カリフォルニアコモンなど
パッケージの表示はココを見よう
パッケージの表示を見て、ビール選びに役立てましょう。チェックすべきは2つです。
麦芽の使用割合などがわかる「種別」
ラベルを見て、ビールか、発泡酒か、第3のビールかを確認しましょう。
・ビール
麦芽の使用割合が50%以上のもの。
・発泡酒
麦芽の使用割合が50%未満のもの。
・第3のビール
2種類あり、麦・麦芽以外を原料にしたものと、発泡酒にスピリッツなどを添加したもの。「その他の醸造酒(発泡性)」、または「リキュール(発泡性)」と表示される。
ビールの味が想像できる「特定用語」
おもにビール名や、下図の(5)に表示される任意の表示事項。用語から、ビールの味を想像できます。
・生またはドラフト
熱処理をしていないビール。ガツンとした苦味が特徴。
・スタウト
濃い色をしていて、香りが強い。
・IPA
ペールエールの一種。ホップの香りと強い苦味がある。
❶原材料名 ❷アルコール分 ❸内容量 ❹製造者 ❺製造者からのコメント
あなたにぴったりのビールはどれ?色別ビールタイプ診断
いつもなんとなく飲んでいるビールも、いろいろな味わいがあります。以下の診断テストにYes、Noで答えると、あなた好みのビールが見つかるかも。
あなたにぴったりのビールタイプは…
A 黄金系
すっきりとした喉越し、シャープなキレが特徴的。クリアな味わいで爽快。いわゆるラガー系。
●ビアスタイル:ピルスナー、デュンケル、メルツェン、ボックなど
●香り:レモン、ハーブ、パン
●合う食材:肉類全般、じゃがいも、油各種、香辛料など
B 琥珀系
風味豊かで、深いコクがある。苦味が強く感じられるのでビール上級者にぴったり。いわゆるエール系。
●ビアスタイル:ペールエール、IPA、アンバーエールなど
●香り:ホップ、フローラル系
●合う食材:甘辛いたれ、ビーフジャーキー、パン類など
C 黒系
香ばしさやコクが魅力。味わいは幅広く、ほんのり甘いものから、辛口のものまでさまざま。
●ビアスタイル:スタウト、ポーター、シュバルツ、デュンケルなど
●香り:カカオ、コーヒー
●合う食材:ナッツ、チョコレート、ソーセージなど
D 白系
飲み心地がライトで、フルーティーな味わい。やさしい酸味と甘みが特徴的。ビールが苦手な人にもおすすめです。
●ビアスタイル:ヴァイツェン、ベルジャンホワイトなど
●香り:フルーティー、さわやか
●合う食材:柑橘類、シーフード、野菜全般、酢、ハーブなど
E ランビック
ベルギーで造られる自然発酵ビール。微炭酸で、野生酵母やバクテリア由来の酸味、フルーテイーな味わいが楽しめる。とにかく個性的。
●ビアスタイル:ランビック
●香り:チーズ、野性的な香り
●合う食材:フルーツ、ブルーチーズ、サーモン、塩味の料理など
「クラフトビール」ってなに?
昨今巷で聞かれるようになった「クラフトビール」。このクラフトビールには定義はなく、一般的には、「小さなブルワリー(醸造所)でこだわって造られるビール」を指して使われている言葉です。
今や、日本のみならず、世界中でさまざまなクラフトビールが造られており、それぞれ個性やバリエーションも豊かで、ビールラバーを楽しませています。
ちなみに、「地ビール」と混同しがちですが、地ビールは、日本酒の「地酒」同様、「その地域で造られたビール」といった意味があるようです。
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本稿は『いつものお酒を100倍おいしくする 最強おつまみ事典』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。本書では、ビール、チューハイ、日本酒、ワイン、ウイスキー、焼酎、梅酒、ジン、ラム、ウオッカ、テキーラまで、それぞれのお酒にぴたりと合う最強おつまみレシピが満載。飲みたいお酒からおつまみを引けて簡単にペアリングできる、超おすすめの良書です。とことん家呑みに寄り添った幅広いお酒のペアリングをご紹介していますので、飲みたいお酒に合う料理がきっと見つかります。詳しくは下記のリンクからご覧ください。
※お酒と食材の相性が良い組み合わせ 「ペアリングのコツ」を紹介の記事もご覧ください。