決して暗いものではなく、逆に将来に対する不安がスッキリし、以前より人生を楽しく過ごせるようになったという声が多くあります。相続・遺言書、葬儀のほか、意思疎通ができない場合の介護や延命治療についても意思表示をしておくと、家族の負担を軽減でき、本人の希望もかなえられやすくなります。
本稿は『老後とお金の不安が軽くなる 終活の便利帖』(マキノ出版)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
自分が亡くなった後に家族が困らないように意思表示をしておく
入院や介護が必要となる終末期や、亡くなったあとにやってくる葬儀、相続…。終末期や死後になると、自分の意思を伝えたくても伝えられなくなってしまいます。さらに、残された家族も手続きや判断に困ったり、家族、親族間でのトラブルに発展したりしかねません。
自分の死後、家族に余計な手間や迷惑をかけないためにも、元気なうちにそれぞれで意思表示や財産などの整理をしておきましょう。
最初に考えておきたいのが、家族、親族間でトラブルになりやすい相続についてです。
自分の財産を相続させるにあたって、誰がどれだけ相続できるのかや、遺贈、生前贈与といった制度の確認、遺言と遺留分の関係や遺言書の書き方などについての知識をしっかりと学んでおきましょう。そのうえで、しっかりとした遺言書を書いておくことが有効です。
自分の死後、限られた時間で多くのことを決めなければならない葬儀やお墓などについても考えておきたいところです。
葬儀の参列者名簿を作ったり、生前見積もりをしておけば、葬儀にかかる費用も把握できます。また、遺影に使ってもらえるように素敵な表情の写真を準備しておくことも終活のひとつです。
お墓も先祖代々のお墓だけではなく、永代供養墓、共同墓、樹木葬(下記)などさまざまな種類があり、お墓以外にも散骨や手元供養といった供養の方法もあるので、希望がある場合は家族に伝えたり、エンディングノートに書いておきましょう。
【永代供養墓】継承者を立てる必要のないお墓で、家族のかわりに霊園管理者が供養してくれる。
【共同墓】複数人が一緒に納骨するお墓。あるいは同じ地域に住む人が使える村落単位でのお墓。
【樹木葬】永代供養の一種で、墓石の代わりに樹木をシンボルとするお墓。
また、大きな病気や認知症になってしまったときのために、どのような医療を受けたいかや延命治療を望むかなどについてもあらかじめ意思表示をしておくと、家族などが判断するときの心の負担を軽減でき、本人の希望もかなえられやすくなります。
これらの準備は決して暗いものではなく、逆に将来に対する不安がスッキリし、以前より人生を楽しく過ごせるようになったという声が多くあります。自分や家族のために、準備してみましょう。
相続のポイント
本人が亡くなると、持っていた財産(すべての権利や義務)を、相続してもらうことになります。
相続手続きは円満かつ円滑に進めたいものですが、事前の相続対策が不十分な場合は、残された親族内でトラブルや裁判沙汰になってしまうことも。
相続対象となる財産の把握や生前贈与の検討、遺留分を加味した遺言書の作成など、相続の種類や方法などの知識をつけておきましょう。
●誰がどれだけ相続できるのかを確認しておく
●生前贈与で子や孫に財産を譲る
●遺産相続をスムーズにするため遺言を残す
葬儀のポイント
葬儀は事前にスケジュールを組むことができません。さらに、いざ葬儀をするとなると限られた時間で多くのことを決定しなければならず、残された家族にとって大きな負担になります。
その負担を少しでも軽くするため、参列者名簿を作ったり、葬儀費用を生活費と別枠で残しておいたりなど、自身で準備できることや、葬儀をする際の規模など、家族と話し合っておけることはしておきましょう。
●参列者名簿を作っておく
●葬儀費用を用意しておき、生前見積もりしておく
●棺に入れるものを検討し、遺影を決めておく
死後のポイント
本人が亡くなった後、大変なのはお葬式の準備だけではありません。死後の事務処理、特に役所への手続きには期限が決められているものが多く、きちんと申請しないとその後の生活に支障が出てくることもあります。
また、納骨するお墓も先祖代々のお墓だけではなく、永代供養墓、共同墓など、さまざまな種類があります。死後の事務処理をどうするかやお墓についても決めておきましょう。
●お墓(実家の墓、永代供養墓など)を決めておく
●死亡届や保険関係の手続きなどをする人を決める
●死後事務委任契約で遺族の負担を減らす
介護のポイント
年齢を重ねれば、認知症や重度の脳の障害により意思の疎通が図れなくなるかもしれません。そうなると、介護や看病の意思決定は家族に委ねられます。
そのときに備えて、誰に介護してほしいか、どんな施設が希望かといったことや、延命治療、臓器提供などの終末期医療とその後に関しても意思を残しつつ、介護や看病をお願いする家族の思いも聞いておきましょう。
●かかりつけの病院・病名・常用薬などをまとめておく
●介護施設の資料請求をしたり、見学に行ったりする
●延命治療についての意思を残しておく
●本記事で紹介している情報は、2022年7月15日現在のものです。これ以降の法・制度改正等には対応しておりませんので、あらかじめご了承下さい。
●本記事で紹介している情報をもとに行動したうえで発生したトラブル・損害につきましては、一切の補償をいたしかねます。自己責任の範囲内で検討・実践してください。
■監修/小泉 寿洋(終活カウンセラー1級・ファイナンシャルプランナー(AFP))
■イラスト/宮坂希
※この記事は『老後とお金の不安が軽くなる 終活の便利帖』(マキノ出版)に掲載されています。