【うつ病は家族もつらい】共倒れにならないために 接し方と相談窓口まとめ

美容・ヘルスケア

うつ病は、家族ともども、つらい病気です。うつ病の人は、家族を「理解がない」と思いがちだし、家族は「付き合い方がわからない」と、お互いにつらいのです。ここでは、家族に役立つ情報を集めてみました。

以前と今を比べられる家族だからこそ、うつ病を疑ってあげられる

うつ病は、よく「こころの風邪」と例えられますが、実は「こころ」と「からだ」のどちらにも、あるいは、どちらかに症状が出ることがわかっています。とくに初期は、からだの不調から始まる人は多いです。
頭痛、肩こり、腰痛としてあらわれたり、体を動かすのが億劫というところで、体調不良や更年期障害を疑って、からだの病院を受診します。

関連記事▶【家族がうつ病になったら】適切な接し方や受診のタイミングを専門医が解説

よく見られるからだの症状には、次のようなものがあります。
・睡眠障害
・疲労、倦怠感
・食欲不振
・頭重、頭痛
・悪心、嘔吐
・下痢、便秘
・胃痛
・めまい、かすみ目
・耳なり
・背痛
・胸痛
・腹痛
・関節痛
・手足のしびれ
・性欲減退
・月経異常
・のぼせ、寒気
参照)「躁うつ病の身体症状」更井啓介/医学書院『躁うつ病の臨床と理論』大熊輝雄編より

いろいろと検査をしても「異常なし」のため、かかりつけ医に、精神科や心療内科の受診を勧められ、うつ病だとわかるケースは少なくありません。

また、集中力や判断力が落ちるので、仕事や家事ができなくなることで、気づく場合もあります。やる気や能力の問題だと思われがちですが、それが最近の傾向なら、うつ病の可能性があります。ポイントは次です。

・以前はできていた

社会は、理解がないものです。
以前の本人を知らない人も多く、仕事のできない人間だと評価されてしまいがちですが、以前と今を比較できる家族なら、病気を疑ってあげられるのではないでしょうか。

うつ病の家族への対応

うつ病の家族への接し方がわからない中で、気を遣ってかけた言動が、本人の気に障り、場の空気が悪くなったり、関係がこじれたりして、家庭の中がギクシャクする話はよくあります。

うつ病の人に「がんばって」と励ましてはいけない、とわかっていても、「じゃあどう接すればいいの?」「こちらもストレスがたまる!」というのが家族の本音。

うつ病の人は、一見すると怠けているようにも見えるし、情緒不安定だったりイライラをぶつけられたり、家族は戸惑いばかりです。
ここでは、家族の対応のポイントをいくつかご紹介します。

◆抑うつに巻き込まれない
家族がうつ病でも、自分は自分。ストレスをためないよう、生活に、息抜きや楽しみを、適度に取り入れましょう。
うつ病の家族と同じような気分になることを、気分の「同調」といいます。
一緒に遊びに行けないとか、家の中では静かに過ごすとか、うつ病の家族に生活を合わせる部分があるのは仕方ありませんが、気分まで合わせる「同調」は避けましょう。

◆距離を取ってみる
うつ病の家族とは、ほどよい距離をとって、あえて少し放置するほうが、関係が安定するものです。
寄り添っているつもりでも、うつ病の家族にとっては、見られていると感じるかもしれません。アドバイスのつもりが、小言や批判に聞こえているかもしれません。
そんなとき、うつ病の家族は、実は「離れたい」と思っている可能性があります。

◆イライラを上手に受け止める
うつ病の人が、いらだちを募らせたとき、家族に感情をぶつけがちです。
ぶつけられた家族は、腹も立つし、悲しいし、複雑な気持ちになりますが、対応として、ちょっとした会話のテクニックを使ってみるといいでしょう。

理不尽なことをいわれて、「そんなことない!」と反論する代わりに……
・反復確認「アナタはそう思っているんだね」
・共感「それはつらいよね」
・主語をワタシで答える「ワタシはこう思うよ」
こうした会話を強いられるのは、家族にとっては、つらい極みだと思います。でも、家族のうつ病の回復を願うなら、ぐっとガマンのときです。

◆サインを伝える
うつ病の人は、病気が悪化したり自殺念慮(自殺したくなる気持ち)が強まっても、自分では気づかなかったり、気づいても対応せず、そのままの生活を続け、深みにはまりがちです。
家族が、次のようなサインの表出に気づいたら、冷静に指摘し、本人に代わって、対応策を提案することが大切です。

・怒りやすくなった
・不眠、入眠困難
・動きがにぶくなった
・ぼーっとしがち
・食欲がない、またはありすぎる
・人を避けるようになった

もちろん、家族の警告を素直に聞かないかもしれませんが、怒ったり批判したりせず、「一緒に病院へ行こう」とか「ちょっと仕事を休んだら?」と、根気よく対応策を伝えましょう。

◆見守りしながら自殺防止
うつ病の人の多くは、死ぬことを考えます。実際に、自殺を試みる人も少なくありません。
自殺の兆候には、次のようなものがあります。

・酒量が増える
・治療を中断する
・ささいなことでトラブルを起こす
・連絡なく失踪する

自殺の兆候が見られたら、目を離さず、でも付きっきりではなく、少し離れたところから見守りましょう。さりげない自殺予防のポイントは、次のような配慮があります。

・薬を1回ずつ手渡しする
・上階のベランダは常にカギをかける
・刃物を目のつかないところにしまう
・ひもやロープはすぐに取り出せないところへしまう

家族のつらさを相談しよう

うつ病のつらさは、ご本人だけでなく、家族までもつらいこと。
病院は、ご本人の病気へのアプローチが専門ですから、家族のつらさまで、なかなかじっくりとは耳を傾けてもらえません。

かといって、家庭の問題でもあるし、身近に相談できる人も、見つけにくいものです。
でも、とにかく抱え込まないことが大事。電話で相談できる無料相談窓口を利用したり、専門のサイトや、経験者のブログを通じて、とにかく誰かに相談すること。きっと、家族のうつ病を乗り越える「足がかり」を得られるでしょう。

・こころの耳
http://kokoro.mhlw.go.jp/
厚生労働省によるサイトで、さまざまな情報が掲載されているので、一読をお勧めします。

・いのちと暮らしの相談ナビ
http://lifelink-db.org/common/
条件検索で、自分に合った相談窓口を調べることができます。

・よりそいホットライン(0120-279-338)
http://279338.jp/yorisoi/index.html
24時間通話料無料です。

・こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)

各自治体の相談窓口に繋がるので、電話相談の延長で、実際にセンターの窓口へ出向くこともできます。

家族が読みたいおすすめの本

家族の立場からうつ病を理解したり、対応のヒントを得たりと、心が助けられる本をいくつかご紹介します。

・うつ病の人の気持ちがわかる本/こころライブラリーイラスト版(講談社)
・あなたの大切な人が「うつ」になったら/小野一之著(すばる舎)
・ツレがうつになりまして/細川貂々(幻冬舎)
・あなたの家族が「うつ」になったら/光本英代(草思社)
・うつ病の人に言っていいこと・いけないこと/健康ライブラリーイラスト版(講談社)
・入門 うつ病のことがよくわかる本/健康ライブラリーイラスト版(講談社)
・非定型うつ病のことがよくわかる本/健康ライブラリーイラスト版(講談社)

ご本人の気持ちを絵でわかりやすく知れる、こちらのサイトもお勧めです。
http://sow-ay.tumblr.com/

参照)
「うつ病の人の気持ちがわかる本」

◆大田ひとみ(精神保健福祉士)
精神科専門のソーシャルワーカー・精神保健福祉士。フリーランスで医療相談や生活支援、家族相談、ときに講師、と幅広い仕事に従事。専門は認知症。たとえ認知症であっても地域で穏やかに過ごし続けられる、シニア生活の環境改善をライフワークとする。近年は特に在宅医療の支援に注力している。

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大田ひとみ(精神保健福祉士)

精神科専門のソーシャルワーカー・精神保健福祉士。フリーランスの講師として、医療相談や生活支援相談、家族相談を行っている。専門は認知症。近年はシニア生活の環境改善、特に在宅医療の支援に注力している。

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